著者:石田 麻琴

鬼切社長が最後にたどり着いた結論とは。【no.0233】

 ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら

 期待と不安の両方の気持ちを抱えながら、鬼切社長は土曜の11時を迎えました。まず、鬼切社長のメールボックスにおにぎり水産ネットショップのメールマガジンが受信されました。緊急ミーティングを開いてスタッフみんなで考えたメールマガジンです。しっかり11時に配信されているようです。

 しかし、しばらく続く無風状態

 鬼切社長の不安が高まりました。1時間2時間しても、笹かまぼこの注文受付メールは受信されません。メールマガジンを読んでから、お客様はすぐに商品を買ってくれるわけではない。そもそも、メールマガジンの配信後1時間や2時間でメールマガジンを読んでくれるお客様がそんなに多くはない。そんなことを頭の中では十分理解している鬼切社長でしたが、気持ちはこれ以上待てません。しかし、ここは待つ以外はありません。鬼切社長はメールマガジンの配信を確認し3時間が経過してから、パソコンの電源を落とし、自宅へ帰っていきました。

 そして、月曜の朝です。期待と不安、いや不安の気持ちばかりの中で鬼切社長がメールの受信ボックスを空けると・・残念ながら、やっぱり注文受付メールは来ていませんでした。しかも、前回の5通よりも少ない、たった1通の注文確認メール。日曜日の14時に1件の注文があったようです。

 鬼切社長は激しく落胆しました。落胆すると同時に、怒りがこみ上げてきました。怒りの対象は、ショッピングモールです。ショッピングモールの担当者です。インターネット広告を提案したあの担当者です。もう我慢できない、最近連絡もくれないし、どうしたんだ。ひと言文句を言ってやろうと、鬼切社長は携帯電話を取り出し、担当者の電話番号を探しました。そして、発信のボタンを押そうとしたとき、鬼切社長はふと我に返りました。

「ここであの担当者に電話したとして、いったい私は何を言えばいいんだ。3,000人にメールマガジンを流して、1人しか買ってくれなかったことか。でも、1人にしか買ってもらえなかったのは、自分達のせいなんじゃないか。ネットショップの運営講座に行って、学び、メールマガジンを配信することができた。もしかしたら自分達がダメなんじゃないのか・・。でも、どうすればいいんだ。もう、どうすればいいかわからない」

 気づくと、鬼切社長は携帯電話をデスクの上に置いていました。そして、自身も社長室の大きなソファの上にへたり込んでしまいました。その日、鬼切社長は毎日欠かさず参加しているおにぎり水産の朝礼に出ることができませんでした。

 メールマガジンの効果がなかったことについて、静子さんは謝ってきましたが、もはや静子さんの責任ではないのは明らかでした。静子さんはできる限りのことを頑張っていましたから、責められるべきではありません。むしろ、成果を出させてあげられなかったのが申し訳ないくらいです。

 ネットショップ、これからどうしようか。鬼切社長は悩みました。まだショッピングモールとの契約は半年以上残っています。最初の4ヶ月はインターネット広告を中心に戦略を組み立てていました。次の2ヶ月はメールマガジンを中心に戦略を組み立てていました。たまに、例の担当者から「また大型の広告があるんですがやりませんか?」「ネットショップの運営講座、基礎編に来られませんか」という誘いの電話がかかってきているようですが、総務の奈々さんに頼んで、取り次がないようにしてもらっています。

 鬼切社長は考えました。このままネットショップを辞めてしまうのか。残りの半年間は放置して、自然消滅させるのか。しかし、今のおにぎり水産の状況を考えれば、インターネットを使っての直販化は避けて通れない。これからはインターネットの時代だ。我々なんかよりも、お客様がそれを良くわかっている。我々がついていかなければ。でも、どうすれば・・。

 考えに考えた末、鬼切社長はひとつの結論にたどり着きました。

「やはり、インターネットの活用は避けては通れない。もう恥も外聞も無くそう」

 鬼切社長は、笹かまぼこ生産の競合であり、同じショッピングモールにも出店している「にこにこ水産」の二子社長に教えを乞うことにしました。

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