ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「そこに『狙い』のある広告をかけていないことが『悪』なんです」
二子(にこ)社長が発した、この哲学的な言葉が、鬼切社長の頭の中に何度もこだましました。「そこに『狙い』のある広告をかけていないことが『悪』なんです・・『狙い』のある広告をかけていないことが『悪』・・『狙い』のないことが『悪』・・」というように。
鬼切社長が「それって、どういうことですか」と聞こうとすると、二子社長は「ちょっと話が戦略っぽく逸れましたね。このあたりは、今後、猪井氏(いいし)先生と何度も議論されるでしょうから・・」と言って、話を遮ってしまいました。二子社長は、この「ここは猪井氏先生に教わるでしょうから」を口癖のように発します。それを、鬼切社長は少しだけ気にしていました。
「ともかく、ネットショップの運営として、広告費をどれくらい使うのか、ですね。戦略上、売上の数倍の広告費をかける事業者もいれば、全く広告費を使わない事業者もいます。例えば、売上がゼロでも、月額1,000万円ほどの広告費をかける事業者もいます。月商が1,000万円でも2,000万円の広告をかける事業者もいます。月商1,000万円に対して、月に200万円300万円というのもザラです。ある程度、ネットショップの運営が軌道にのってくると、月商に対して3%~10%ほどの広告費をかける方が多いみたいですね」
鬼切社長は、先ほどの二子社長の対応がまだ気になっていましたが、何かしらの理由があるのだろうと思い、ひとまず気にせずメモを取ることにしました。「広告費、3%~10%」とメモ帳に記入しました。「ただし、各社のマーケティング戦略による」という注釈をつけて。
「鬼切社長、お疲れ様でした。これで、『売上年商1億円。利益2,000万円』が本当か、というところの勉強会は終了です。猪井氏先生が私に求めていたものとは少々違っていたかもしれませんが、こんな感じで教わったということを伝えておいてください。説明がバラバラとしていて、メモも取りづらかったと思いますので、鬼切社長の方で改めてまとめてみてくださいね」
「まだまだ、これから、スタートしたばかりですから」。二子社長はそう言いながら荷物をまとめ、おにぎり水産の会議室を退出していきました。鬼切社長は二子社長を駐車場まで見送り、そしてまたおにぎり水産の会議室に戻ってきました。
「いやー、これは大変だ。二子社長もやんわり指摘していたけれども、『売上年商1億円。利益2,000万円』が簡単じゃないことがわかったぞ。というか、そもそも、二子社長に教わった項目を計算すると、利益どころかトントンにしかならないかもしれない」
鬼切社長はそう考えて、ホワイトボードに改めて1億円の一本線を書きだしました。
「目標である年商1億円を100%として、目標の利益2,000万円が20%になると。そして、商品原価を35%とって、物流費を39%とって、システム利用料を9%。人件費は、1人担当をつけるとして、年300万円と考えたら3%。広告費は3%~10%というふうに言っていたから、7%くらいでひとまず想定しておくか。合計すると、35%+39%+9%+3%+7%=93%。20%+93%=113%。うわ~、13%も超えている。逆に7%の利益ならば、現状の運営体制でも見込むことができるのか・・。まあ、あくまで年商1億円分、おにぎり水産の笹かまぼこが売れた場合だけれども」
鬼切社長は二子社長にならったことを、忠実に復習していました。「ここから先は、猪井氏先生に相談だな」。鬼切社長はそう呟いて、ホワイトボードに書いた内容を元に資料をつくり始めました。新しいおにぎり水産ネットショップのスタートを感じながら。
猪井氏先生がおにぎり水産にやってくるのは、明後日です。
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