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猪井氏事務所のコンサルティングは、現場は大変、でも経営者は嬉しい【no.0567】

ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「ネットショップを運営しながら、HTMLの編集や商品画像の加工も覚えていきましょうね」

麻間(あさま)さんはそういうと、パソコンの画面から視線を七海さんの方に戻して、またニコッと軽く笑いました。七海さんには、その麻間さんの笑顔が、笑顔には見られなくなりました。

(この人・・私にどんどんやらせる気だ・・。てっきり、ネットショップのページを作ったりする仕事は、麻間さんがやってくれるものと思っていた・・)

七海さんは、麻間さんの笑顔の裏側を、そう察知しました。そして、ネットショップ運営の責任者を引き受けたことを少しだけ後悔しました。その麻間さんと七海さんの様子を外側から見て、「頼もしい」とニコニコしていた人がいました。鬼切社長です。

(これが3年をかけて、コンサルティングしてもらうことの意味か。まだどうなるかわからないが、本当に七海さんがネットショップの仕事が何でもできる「スーパーウーマン」に育ってしまうぞ)

鬼切社長は直観的にそう感じました。自然と笑みがこぼれました。

麻間さん、鬼切社長、七海さんは新しいおにぎり水産ネットショップのデザインについて、あれこれと話しました。

鬼切社長と七海さんが特に意見をしたのは、ネットショップの外観における「おにぎり水産らしさ」でした。この仙台にある「おにぎり水産」という会社を、どんな雰囲気のものとしてお客様に伝えたいかです。麻間さんはおにぎり水産の人間ではありません。「おにぎり水産が大切にしていること、どんどん教えてください」と言い、鬼切社長と七海さんがあれこれ伝えたことをホワイトボードにメモしていきました。

ひと通り、鬼切社長と七海さんの意見を書き終え、鬼切社長と七海さんの意見が止まった様子も確認すると、麻間さんはホワイトボードマーカーペンを黒から赤に持ち替えて言いました。

「いろいろ聞かせてもらって、新しいネットショップのデザインを調整するイメージがつきました。このあたりの意見を参考にして、ネットショップのロゴや基調となるカラーやフォント、初期段階で使う写真などを最適化していこうと思います」

ホワイトボードに黒の文字で書かれたブレスト項目の中で、特に重要だと思われる部分に麻間さんは赤字でチェックを入れていきました。そして、チェックと補足の書き込みが終わると、麻間さんは自分の鞄の中からスマートフォンを取り出しました。そして、おにぎり水産会議室のホワイトボードを写真に撮り、スマートフォンを少しいじると、「写真、いまお送りしましたので。議事録として保管・印刷をされておいてください」と言いました。

鬼切社長と七海さんは、ホワイトボードに書かれた内容をそのまま写真に撮るという手法が頭になかったので驚きました。そして、麻間さんの手慣れた一連の行動の手際の良さに目を奪われました。特に七海さんは、自分が今回ミーティング議事録を書かなければいけないと思っていたので、内心喜びました。

「麻間さん、いつもこうやっているんですか?この方法いいですね」

鬼切社長がいいました。おにぎり水産では、すべてのミーティングについて参加者からひとり議事録担当をつけることになっています。しかし、細かい会話までメモをするのが大変ですし、ミーティング後に議事録を読んでいる人が少ないという問題点もあり、スタッフの不満のひとつになっていました。

「鬼切社長、この方が楽ですよ。写真を各自コピーして、タスク管理・TODO管理に使うこともできます。どんどん取り入れられてください」

麻間さんは書類を鞄に入れながらそういうと、「すいません。先行きます」と、会議室から出ていきました。颯爽と、出ていきました。

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