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片手間に取り組んでも、Eコマース事業は勝てません【no.0390】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「例えば、通常の事務とネットショップの仕事を兼務している事務の静子さんの給料が月額30万円だったとします。保険料など含めて月に40万円くらいかかっている計算にしましょうか。ネットショップの仕事にかけている時間が、毎日1時間から2時間だった場合。月40万円のうちの5分の1から4分の1の金額が、ネットショップ運営にかかる人件費になりますね。5分の1なら、月8万円。4分の1なら、月10万円になりますね」

 二子(にこ)社長が例えとして出した金額や時間が、実際のものとあまり相違がなかったので、鬼切社長は少しビックリしました。

「だいたい二子社長が言われているとおりです。静子さんがネットショップにどれくらいの時間をかけているかを計算していなかったので、具体的なコストを出せていなかったのですが、月10万円くらいかなぁと思っていました。月10万円だと、年間で120万円のコストになりますね。年商1億円に対する1.2%ですね」

「そうなりますね。ここは実際に1.2%ほどで良いのか悪いのか、そこはわかりません。あくまで、これまでのおにぎり水産のネットショップ運営では、1日1時間や2時間の時間で仕事が終わらせられていたということであって、年商1億円、年間10万セットの発送というボリュームが実現したときには、確実に1日1時間や2時間で仕事は終わらないですよね」

 鬼切社長は「なるほど」と思いました。一瞬、「人件費は年間120万円で1.2%か。意外と少ないなぁ」と思っていたのですが、それはあくまでこれまでのネットショップ運営を元にした数字です。

「確かに・・そうですね。年商1億円ということは、月商800万円強ということですから、それを実現したときに、どれくらいの人件費がかかっているのか、想像もできません。しかも、思うんですが、売上に比例して人件費を増やしていくことはできないですよね。まずは人がいて、それから売上がついてくると思うんですが」

 鬼切社長の鋭い意見に、二子社長は一瞬たじろぎました。鬼切社長は、時たま核心をついたような質問を切り返してくるときがあります。やはり、これまでおにぎり水産を続けてきた経営者の勘のようなものなのだろうと二子社長は感じていました。

「鬼切社長のおっしゃる通りです。これからインターネットの市場に本格的に打って出るわけですが、すでにネットショップの競合はたくさんあります。市場で勝っていくため、新しいお客様に選んでもらうためには、試行錯誤を続けられる人財が必要だと思います。1日1時間や2時間だけネットショップの仕事をやってもらったとしても、それだけでは市場を理解し、違いを生み出すのは難しいと思いますよ。ここからは猪井氏(いいし)先生との打ち合わせで決めていかれると思うのですが、人財育成をしていく、人財に試行錯誤をしてもらう時間を含め、人に投資することをおすすめしますよ」

 鬼切社長は大きく頷きました。社内のどのスタッフにネットショップの仕事をお願いするのか、もしくはネットショップの担当を新しく採用すればいいのか、そのあたりは検討がつきませんでしたが、とにかくこれまでのネットショップの運営スタイルでは大きく成長することは難しいだろうと考えました。猪井氏先生や二子社長との一連の打ち合わせを通して、ネットショップは片手間にできる仕事ではないと感じていたからです。そこは、経営者としての直感でした。

「二子社長、ありがとうございます。そこは、猪井氏先生とよく話し合って決めたいと思います。ただ、インターネットのマーケティングは、片手間で成功できるようなものではないというのは重々感じています。できるだけ、人財に投資をしたいと思います」

「鬼切社長、その通りと思いますよ。だって、今日もどこかで、インターネットで事業を作ろうとしている人が頑張っているわけです。インターネット専業で頑張っている方もいます。そんな人たちに、片手間じゃ勝てませんよ。ましてやネットショップとしては後発なのですから」

 鬼切社長は、自分の心に火がつくのを感じました。

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