著者:石田 麻琴

極度の緊張に陥らないために、自分をコントロールすること【no.0715】

 プレゼンテーションや重要な打ち合わせ、自分の考えや意見を発信したり、実践・実行を決断したりするときに、「失敗してしまったらどうしよう」と不安になるのは、大小の程度はあるとはいえ、人間なら誰しもというところだと思います。

 私の場合、セミナーや講演でお話させていただく機会も多く、基本的にはそのたびに「失敗してしまったらどうしよう」という気持ちになります。もちろん、弊社毎月恒例のECMJセミナーも23回目になりましたので、いくぶん緊張は少なくなりましたが、正直いうと20回目くらいまでは毎回極度の緊張に陥っておりました。いまでも、緊張をしないわけではありませんが、以前よりはマシになった程度だと思っています。

 このような緊張状態に陥ったとき、自分を落ち着かせるために考えることがふたつあります。

 ひとつは、「いくら緊張したって、いくら頑張ったって、自分の持ち駒以上のものは出ない」と考えるのです。そしてもうひとつは、「もしもここで失敗をしてしまったとしても、人生が終わったわけではない。チャンスはいくらでもやってくる」と考えます。

 私の場合は、このふたつの言葉で自分を落ち着かせることができます。「おまじない」のようなものなのかもしれません。

 まずは前者の「いくら緊張したって、いくら頑張ったって、自分の持ち駒以上のものは出ない」という考え方です。緊張して、不安になって、でも上手くいくように頑張ったとしても、自分の能力以上のものはやっぱり出ません。プレゼンテーションやセミナー、打ち合わせの直前で緊張することによって、何かを解決させ、その結果を良くすることができれば良いのですが、すべての結果はこれまでの自分の長い準備の集計として起こるものです。どんなにプレッシャーを感じたとしても、実力以上のものは出ません。そう考えると、自分の中の緊張が「ふっ」抜け出ていきます。

 さらにいえば、プレゼンテーションやセミナー、重要な打ち合わせを前にして、過度のプレッシャーを感じている自分自身こそが、いまの自分のレベル・立ち位置なわけですから、「重圧を感じて、緊張して、不安を感じている」自分こそ、本当に受け入れなければいけない自分だということになります。「重圧を感じて、緊張して、不安を感じている」自分はいつもの自分ではないかもしれませんが、本当の自分でないことはないわけです。これも自分の「実力のうち」だと思って向き合えば、緊張が抜けてきます。

 そして後者、「もしもここで失敗をしてしまったとしても、人生が終わったわけではない。チャンスはいくらでもやってくる」という考え方です。厳密にいえば、「チャンスはいくらでもやってくる」ではなく、「チャンスはいくらでもつくることができる」の方が正しいかもしれません。「仮にここで失敗したとしても、すべてが終わるわけじゃないよ」ということです。

 世の中には「これがダメだったらすべて終了」というプレゼンテーションがあるのかもしれませんが、私自身、いまのところそのような場に出くわしたことがありません。大体は、「これがダメだったら終わり」と思っているのは自分だけであり、大多数の人にとっては「他にたくさんあるプレゼンテーションのひとつ」だったりします。なぜ他の人は気にしていないのにも関わらず、この「これがダメだったら終わり」という思考におちいるかといえば、それは「選択肢の欠如」が原因なのだと思います。

 人は選択肢が限られると、限られた選択肢に依存するようになります。言い換えれば、「心中」です。「これがダメだったら終わり」という思考は、一種の依存から生まれます。「これがダメだったら終わり」という気持ちで目先のプレゼンテーションに集中することも大事ですが、本来大切なのは「選択肢の幅を広げておく」ということです。自分が目指している「目的」に対して、「手段」の道がひと通りだけ、ということはありえません。万が一、「ひと通り」だけなら、それは利権です。利権は自分にとって「アウトオブコントロール」のものなので、それこそ緊張を感じる意味はありません。

 自分が納得できる準備をし、プレゼンテーションやセミナー、打ち合わせに臨めたならば、「過度の緊張」は必要ないものだと思います。自分なりの「セルフコントロール」の方法があると、より良いと思います。

 おわり。