東京メトロの売店が、ローソンになる。
昨日のニュースです。ローソンと、地下鉄を運営する東京メトロの子会社がフランチャイズチェーン契約を結び、駅構内にある売店「メトロス」を9月ごろから「ローソン」に順次転換していく。メトロスは140店舗あり、まず3年間で約50店舗をローソンに切り替え、残りの約90店舗の転換も今後検討していく。とのこと(時事通信社より)
先月のSGホールディングスとの業務提携の話題に続き、セブンアンドアイやファミリーマートに比べてオムニチャネル関連のニュースが少なかったローソンが、ずんずんと動いてきた感じがあります。
昨年、初夏のニュースなので、覚えている方も少ないかもしれません。西日本旅客鉄道(JR西日本)とセブンアンドアイグループが提携し、JR西日本の駅ナカのコンビニエンスストア500店舗がセブンイレブンになるというニュースがありました。
JR西日本の駅ナカのコンビニエンスストアというと「キヨスク」や「ハートイン」といったブランドがあります。これを5年間をかけてセブンイレブンにリニューアルしていくというのです。2014年夏の発表ですから、実現するのが2019年。今回のローソンと東京メトロの提携は、2018年の実現を目指しています。
セブンイレブンはJR西日本と提携し、ローソンは東京メトロと提携をした。これは、単に「駅ナカのコンビニがセブンイレブンになるね。ローソンになるね」ということではありません。セブンイレブンもローソンも、駅ナカにコンビニを出店することでの売上増を求めているわけではありません。ここに、両社のオムニチャネル戦略の大きなポイントが見え隠れしています。
オムニチャネルの本丸は「顧客データの統合」です。販売のオムニチャネル、物流のオムニチャネル、それに伴う在庫管理の一元化、商品データの一元化等が先行して話題になっていますが、オムニチャネル戦略とは、リアルとネットの「顧客情報」を一元化させることが最重要のポイントです。つまり、リアルとネットから情報(データ)を収集して、「この人は、こういう趣味嗜好を持っていて、この時間はこういう動きをするから、こういう提案をしよう」というようにマーケティングを最適化していくことが、最終到達点なのです。
販売のオムニチャネル、物流のオムニチャネル、在庫管理の一元化、商品データの一元化も当然重要ですが、これを実現するために必要なのは「顧客データ」です。インターネットのサービスを利用するときは、会員登録(アカウントの作成)をすることが基本ですが、リアルのサービス利用では「顧客データ」を作成する機会がありません。ですから、「何を利用したか」はわかっても、「誰が何を利用したか」がこれまでわかりませんでした。ここで登場するのが、ポイントカード、ですよね。
これを最も有効に活用したのが、レンタルビデオ店「TSUTAYA」を営業するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)ですよね。レンタルビデオの会員登録の仕組みを上手く使って、レンタルビデオの会員カードを「顧客データ」に進化させたのです。そして、現在、Tカードと並び、もっとも利用されている「顧客データ」が、鉄道会社のICカードということになります。これが、リアルとネットを繋ぐ「顧客データ」の軸になるというわけです。
セブンアンドアイグループがJR西日本と提携し、ローソンが東京メトロと提携する理由の本丸は、おそらくここです。となると、最も「顧客データ」を保有していると思われるJR東日本がこれからどういった提携を見せるのか。既存のコンビニエンスストアチェーンと提携するのか、それとも自社で物販まで行おうと考えているのか。オムニチャネル時代の、一番の注目になるのではないでしょうか。
おわり。