(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)
【前回までのあらすじ】
アイドル芸能事務所「マイドル」を立ち上げた石田さんは、「メガネ歴女」の人気投票オーディションサイト「マイドル」を立ち上げた。第2のサイトとして「メガネ納言」の立ち上げを決意。サイトを管理者のF次郎くんとのミーティングで、「やりきってもらう」までが仕事だと決意する。それからF次郎くんと石田さんは毎朝のミーティングを始めたが、次第に開催が曖昧になりF次郎くんが怒る。仕組みを変えてまたスタートしたが、時間が経つごとにまた曖昧に。同じことを何度も繰り替えし、時間が過ぎていった・・
*「市場環境の変化」はすべてをひっくり返す
山あり谷あり、仕事も人生もいいこと、悪いことの繰り返し。でも、螺旋階段をのぼるように、少しでも成長しているのならいいのかもしれない。石田さんはそう思っていたのだが、とんでもない現実が控えていたのでした。それは「市場環境の変化」。石田さんとF次郎くんが「メガネ歴女」「メガネ納言」のサイトを成長するための意見交換でモゴモゴしている間に、アイドル市場の環境がガラリと変わり始めていたのだった。
「メガネ歴女」をスタートさせたときは、まったく新しい切り口で、アイドル候補生もたくさん集まってきていた。「メガ歴好き!」という競合ができても、まだアイドルの供給より需要の方が大きかったので、「メガネ納言」のサイトに手をつけることもできた。
しかし、もはや時代はアイドル戦国時代、野球が好きなアイドルを集めた「野球っ娘」も、「巨人っ娘」「虎っ娘」「鷹っ娘」というように、プロ12球団+「メジャっ娘」「ヤンキー娘」「熱闘っ娘」という15サイトにセグメントして、なんとかユーザーを掴んでいるような状態だ。事実「メガネ歴女」や「メガ歴好き!」も、織田信長好きが集まる「NO1.princess」、浅井長政好きが集まる「御一」、豊臣秀吉好きが集まる「you do♪」などにかなりのユーザーを取られていた。
しかも、この市場環境の変化によって取られたのはユーザーだけではない。「メガネ歴女」のサイトに掲載されているアイドル候補生500人の中からも、競合サイトに移籍する者がいた。1億円という金額でB美さんにも「NO1.princess」への移籍話が上がっていたらしい。「F次郎のことで悩んでいた時代は幸せだったな。なんでこんなことに気がつかなかったのだろう。俺が数字から兆候を読めなかったからか。フッ」。石田さんは、ひとり新宿二丁目のバーで、ハイボールを飲みながらつぶやいた。
*いままでの市場環境が良すぎただけだった
F次郎くんが運営する「メガネ納言」の面倒はもう見きれない。F次郎くんが成長するまで待っているわけにはいかない。なにより「メガネ歴女」のサイトが危ないのだ。会社のリソースを「メガネ歴女」に手中させるしかないだろう。石田さんは、「メガネ納言」のサービスをストップさせることにしました。サイトはあるけど、動いていない。つまり、放置。「メガネ納言」のトップであったD菜さんも「メガネ歴女」兼任ということで、元に戻されました。当然、F次郎くんのモチベーションは下がります。「僕が、毎日23時まで仕事をしていたのはなんだったんですか・・教えてください!!」。
しかし、市場環境はどんどん悪化していきます。いや違います。いままでの市場環境が良すぎたのです。ユーザーが成熟し新規参入も増えて、これからが本格的なアイドルサイト戦争になるということなのです。石田さんにとって、F次郎くんのモチベーションなど、どうでもいいことでした。もう、とにかくF次郎くんには自分の手足として動いてもらう。ミーティングでは一応F次郎くんの意見を聞いて、なんとなくアイデアを出させている風を気取っていますが、実際はすべて石田さんがあらかじめ決めていたことをやってもらうだけでした。
そんな、石田さんのアイドル芸能事務所「マイドル」は、果たしてどうなったのか。次回、最終回。
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