ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
ネットショップのシステム、物流、スマートフォンへの対応などの意見交換をひと通りした上で、鬼切社長と麻間(あさま)さんは、おにぎり水産の新しいネットショップの構想について話を進めました。
麻間さんの質問に従いながら、鬼切社長はネットショップのイメージを固めていきます。時折、麻間さんが「鬼切社長、そこはこう考えた方が、イメージがクリアになりやすいですよ」と合いの手を入れてくれました。なので、おにぎり水産の新しいネットショップのひと通りの要件は、1時間足らずで出し終わりました。
「普通は、こんなスラスラいくものなんですか?」
あまりにスムーズにネットショップの要件が決まっていくため、「もっと議論した方がいいのではないか?」と鬼切社長は不安になりました。議論をしていないのに物事が決まると不安になってしまうパターンです。
「そうですねぇ。おにぎり水産のネットショップの場合は、取り扱う商品も少ないですし、見せ方や売り方もそうバリエーションを組むわけではありませんからね。おそらく、ネットショップのカートシステム、受注システム、物流システムについては、どのシステムを選んだとしても、大差がないと思いますよ」
それでも、やっぱり鬼切社長は議論を重ねていないのが不安です。
「しかし、今後、売り方を変える可能性があるじゃないですか。もしかしたら、取り扱う商品が激増するかもしれませんし。あらゆる可能性を考えて、ネットショップのデザインやレイアウト、バックヤードのシステムを選んだ方がいいと思うのですが・・」
ウンウン。麻間さんは、鬼切社長の話に軽く頷いて、ゆっくりと口を開きました。
「鬼切社長のおっしゃっていることはよくわかりますよ。しかし、いまネットショップの運営をスタートしていない段階での想像は、あくまで想像でしかありません。ネットショップの運営をスタートしていない段階で、次の成長のことを考えたら、足元が固まってしまいますよ。大切なのは、市場環境の変化によって『変えられる』準備をしておくことであって、すべてを用意することではありません。すべてを用意しようと思ったらお金もかかかりますしね」
麻間さんは少し強い語気で話し出しましたが、だんだんと優しい物腰になり、最後にはニッコリ笑ってそう言いました。それでも鬼切社長はまだ不安なようで、「しかしぃ」と小さく呟きました。
「鬼切社長、もし、戦略の方向性が変わったり、取り扱う商品数が激増したりしても、ちょっとやそっとなら対応できるWEBサイトやシステムを用意するから心配ないですよ。鬼切社長が思っているよりも、ずっとテクノロジーは進んでいますから!」
そう言うと、麻間さんはまたニッコリと笑いました。鬼切社長も、そう言われて少し安心をしたようでした。
「鬼切社長。数年先の話になるかもしれませんが、もしおにぎり水産が全く新しい笹かまぼこの売り方を見出した場合、それこそ今までになかったシステムを独自で作らなくてはいけなくなります。当然、スクラッチでシステムを構築するのには費用がかかります。まずは、既存のシステムを活用しながら、売上を立てていくことが大切です。システムは重要ですが、収益の方が重要です。過剰な設備投資をしないように」
麻間さんにそう言われ、鬼切社長は納得しました。麻間さんの方を見ながら、鬼切社長は言いました。
「猪井氏(いいし)先生といい、麻間さんといい、信用ができる方にお会いできて本当に良かったです。インターネットのことなんて、わからない人が多いでしょうから、『最初に出会った方』が事業の成功を大きく左右しそうですよね」
鬼切社長がたまに放つ、鋭いひと言でした。
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