ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。
(前回はこちら)
鞄の中からペンと紙を取り出した二子(にこ)社長は、「失礼します」とつぶやいて、テーブルに載っているビールやおつまみを軽く端に寄せました。そして、ジョッキから落ちた水滴を、自分のシャツの袖で丁寧にふき取ると、A4ほどの白い紙をテーブルに広げました。まず、二子社長はテーブルの上に、一本の長い線を書きました。
二子社長は一本の長い線に「1億」という文字を書いた
「鬼切社長、説明がわかりづらかったら申し訳ありません。いま書いたこの一本の線が、売上だと思ってください。『売上年商1億円、利益2,000万円』の場合であれば、この線の長さが年商1億円ということですね」
そういうと、一本の長い線の横に、「1億」という文字を書きました。
「そして、利益が2,000万円ということは、1億円の20%。5分の1が利益ということですよね」
二子社長は、一本の長い線の、右端から5分の1くらいのところに、縦に交わる短い線を書き、そこに「20%=利益」という風に書き込みました。「ここまで、大丈夫ですよね」。鬼切社長の様子を伺うように、そしてできるだけ鬼切社長に恥をかかせないように、二子社長は反応を待たずに話を進めていきます。「で、ここからです」。
笹かまぼこの原価率を35%に設定する
「まず、我々が取り扱っている商材、『笹かまぼこ』の原価が入ります。鬼切社長のおにぎり水産では原価率をどのくらいに設定しているかわからないですし、笹かまぼこを扱っている会社でもそれぞれだと思いますが、私のにこにこ水産ですと、原材料の相場によっても変わるんですが、だいたい35%に設定しています。まあ、あくまで目安です。実際は、上振れしたり、下振れしたりします」
「えっ、二子社長、そんな!具体的な数字とか出さんでください!」
自社の経営数値をさらっと口に出した二子社長に、鬼切社長は驚きを隠せません。「いやいや、いいんですよ。そうじゃないとリアリティがないでしょう」と、二子社長は鬼切社長の言葉を制して続けます。
「まあ、まずは原価率が35%ということで、こう、ですよね」
二子社長は、今度は長い一本線の左側から、真ん中よりも左寄りのところに、短い縦線を引きました。一本線の長さが100とすると35を表しているんだろうなぁ、というところです。一本線の左端と、短い縦線で区切ったエリアに、「35%=原価率」と書き足しました。
「さて、左端から残したい利益率20%と、右端から笹かまぼこを販売したときに必ずかかる原価率35%を紙に書きました、と。全体の100%から利益率の20%と原価率の35%を引いて、残り45%で経費が収まれば、鬼切社長の理想のネットショップ運営ができる、というわけですよね」
鬼切社長はコクリと頷きました。
「1億」の線の中に最初に入れてるのは物流費
「ここからは順不同で、この線の中に入れていきたいと思うんですが、最初に入れたいのが、物流費ですかね。ネットショップとして販売方法として、送料を販売価格に含めて送料無料の形式をとるか、別途お客様から送料をいただくのか、方法は考え方によって様々だと思うんですが、この鬼切社長が出されている年商1億円の中には、送料も含まれているとして考えます」
二子社長はひと息ついて、ビールをひと口含み、ゴクリと喉を通らせました。テーブルに置こうとするジョッキから、一粒の水滴が紙の上にこぼれました。「おっと、失礼」。二子社長はまた、シャツの袖を使って水滴をふき取りました。
「物流費として考えられるものです。大きなところで言うと、物流の会社さんに荷物を持っていってもらうときの配送料金ですね。まずこれが大きい金額です。配送する地域によっても金額が異なりますよね。あとは、商品をピッキングしたり梱包したりする、パートさん、アルバイトさんの人件費。これも物流費として換算します。そして、資材費ですね。梱包に使う緩衝材であったり、ダンボールであったりですね。細かいところで言うと、納品書を印刷する紙、そしてプリンターのインク代。おにぎり水産さんもにこにこ水産も、あまり気にしないところですが、商品を保管しておく倉庫の費用なんかも、物流費ですね」
・・
プュシューーーーーーーーー!!!
・・・ドタ・・・
「えっ!どうしました!鬼切社長!大丈夫ですか!?」
鬼切社長の頭は、突然パンクしてしまいました。
つづきはこちら。
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