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二子社長が鬼切社長に紹介した人物は‥。【no.0246】

 ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら

「鬼切社長、これからもネットショップは続けられますか?

 二子社長が優しく話かけました。鬼切社長は、ゆっくりと頷きました。

「でも、本当に、これ以上どうしていいのかわからないんです」

「わかりました。私がおこたえしても良いのですが、もっと良い方がいるので、ご紹介します。私も、その方からインターネットでのビジネスを学びました。まだまだ修行中ですが」

 そう言うと、二子社長は携帯電話を取り出し、その場で電話をかけ始めました。

「あー、いつもお世話になっております。にこにこ水産の二子でございます。猪井氏(いいし)先生、いま、お時間大丈夫ですか。同じ水産加工業者で、地元でも有名な笹かまぼこを作っておられる、おにぎり水産さんという会社さんがあるんです。そちらの鬼切社長さんがインターネットビジネスについて悩んでおられて・・そうそう、ネットショップでお困りなんです。それで、私が鬼切社長の悩みについておこたえするよりも、猪井氏(いいし)先生とお話しされた方がより解決するんじゃないかなと思いまして。お時間をいただけないかと・・。そうですね、そうですね、わかりました。いま、鬼切社長が隣にいらっしゃるんで、替わります」

 二子社長は、鬼切社長に携帯電話を手渡しました。「こんにちは、初めまして。おにぎり水産の鬼切と申します」。携帯電話を受け取るなり、鬼切社長がそういうと、受話器の向こうから、思いのほか優しい声が飛び込んできました。

「鬼切社長さん、初めまして。猪井氏(いいし)と申します。ネットショップでお困りなんですね。二子社長のご紹介ですし、私でよろしければ何でもお聞きしますよ。それで、日時なんですけどね。普段、私は東京にいるんですが、来週、ちょうどにこにこ水産さんにお邪魔する予定があります。にこにこ水産さんとのミーティングの後に、おにぎり水産さんにお邪魔する感じでどうでしょう。時間は15時くらいになると思います。帰りの新幹線を遅めにとっておくので、2時間くらいはお話しできると思います」

「ホント、すいません。ご迷惑おかけして申し訳ありません。お待ちしています。本当にありがとうございます」

「いえいえ、二子社長のご紹介ですから、きっと真面目な方なんだと思っています。では来週お会いしましょう」

 電話を切って、二子社長の顔を見ると、二子社長はニッコリと笑いながら、頷きました。

「鬼切社長、猪井氏(いいし)先生は優しいけど、厳しい方です。そして、愛情を持って接してくれる方です。猪井氏(いいし)先生についていって、損はないと思いますよ」

 鬼切社長は二子社長に向かって、深々と頭を下げました。

 そして、翌週になりました。猪井氏(いいし)先生がやってくる日です。粗相がないようにと、鬼切社長は朝から落ち着きませんでした。15時きっかりに、事務所のベルが鳴りました。「鬼切社長とお約束させていただいている猪井氏と申します」。事務所の外から、電話で聞いたあの声が聞こえます。ネットショップの担当をしていた静子さんが、猪井氏(いいし)先生を会議室に通しました。

 鬼切社長が会議室に入ると、そこには白髪で初老の小さなお爺さんが座っていました

 鬼切社長がどこか呆気にとられていると、猪井氏(いいし)先生らしきそのお爺さんが名刺を差し出してきました。

「改めまして。二子社長の紹介で参りました。猪井氏(いいし)と申します」

「は、はぁ・・こちらこそ今日はわざわざありがとうございました。鬼切と申します」

 スーツをビシッときめた、敏腕ビジネスマンをイメージしていた鬼切社長は、あまりの違いに茫然としました。猪井氏(いいし)先生がズズズとお茶をすする姿は、正に縁側に座ったお爺ちゃんそのものでした。

 「この人に相談して大丈夫か‥!?」鬼切社長の頭に不安がよぎりました。

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