著者:石田 麻琴

七海さんと友花里さんは、麻間さんの宿題について鬼切社長に相談することにしました【no.0700】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「ちょっと~、友花里、聞いてよ~。さっき、麻間(あさま)さんに新しい宿題をもらったんだけど、それがさ~」

 ちょうどお昼休みに入っていた実店舗の「笹かまオニギリ」担当の友花里さんをつかまえて、七海さんは宿題の相談をしました。

「ポスターもチラシもやったじゃない。それでネットショップのアクセス数が1日30人くらいになってるのね。それはそれでいいんだけども、『他にやったいいこと教えてください』ってお願いしたら、『まずはポスターとチラシだけで、1日60人のアクセスを集めてください』って言われちゃったのよ。どういう意味なのか、少し不親切だなと思って、ちょっと困っちゃって・・」

 七海さんは友花里さんに今日のミーティングの経緯を説明しました。

「だって、ポスターとチラシはもうやってるわけじゃない。だから、例えば、実店舗で購入してくれたお客様にネットショップで使えるクーポン券を発行するとかさ、実店舗とネットショップの『笹かまオニギリ』共通のポイントカードを発行するとかさ、いろいろ方法はありそうなもんじゃない。でも、麻間さん、ポスターとチラシだけで、数字を上げてみなさい、って・・ちょっとこれっておかしくない??だってさ、おにぎり水産は、猪井氏(いいし)事務所と契約しているわけだから、アイデアをくれないといけない立場なんじゃないの??友花里、そう思わない・・!?」

 話しているうちに七海さんの気持ちは不安や疑問から、なぜか怒りやイライラに変わっていきました。別に麻間さんのことが嫌いなわけでも、信用していないわけでもないのに、その怒りやイライラを猪井氏先生と麻間さんのせいにしている自分がいました。

「いやいや、七海、冷静になってよ。そうやって、自分の思い込みだけで猪井氏先生と麻間さんを悪く思うのは良くないよ。私はなんとなく麻間さんがいっていること、わかるけどなぁ。もし、七海の中で整理がつかないなら、社長のところにでもいってみない?さっきちょうど、実店舗の前を通りかかって、一緒にお昼を食べてくれる人を探してたみたい・・」

 七海さんと友花里さんは早速鬼切社長のところに向かいました。正式にネットショップの担当になってから、基本的には鬼切社長とは毎週1回、1時間ほどの進捗報告をおこなっているだけでした。猪井氏事務所とのやりとりやネットショップのデータを共有するのが主な内容です。特に、実践しようとしている施策や、悩みについて話していたわけではありませんでした。

 おにぎり水産の社長室に入ると、鬼切社長はデスクの前のテーブルでひとりお弁当を食べていました。社長室のドアは空いており、七海さんと友花里さんが近づくと鬼切社長はふたりに気がつきました。

「お、どしたの。一緒にお昼を食べにきてくれたとか?」

 鬼切社長はごはんを口に運びながらいいました。「社長、少し相談したいことがありまして。食べながらでいいので、聞いてもらえませんか」。そう七海さんはいいました。

 七海さんは今日の打ち合わせで麻間さんからもらった指示について詳しく話しました。実店舗で「笹かまオニギリ」を知ったお客様にネットショップにアクセスしてもらうため、ポスターとチラシを作ったこと、それにより数字が動き出したこと、麻間さんがポスターとチラシだけを使って、さらに数字を倍にしてみなさいと提案したこと。鬼切社長は七海さんの話に耳を傾けながら、お弁当を食べていました。

 七海さんが話を終えると、ほぼ同じタイミングで鬼切社長はお弁当を食べ終えました。そして、お弁当のふたを閉じながら、鬼切社長はいいました。

「七海さん、いいじゃないですか。折角ですから、15分くらい、一緒に考えてみましょうよ」

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