これからのマーケティングを「原理原則」視点で考える。(前回はこちら)
続いて、リアルのマーケティングです。
リアルのマーケティングも、ネットのマーケティングと同様にデータマーケティングに近づいていきます。これまでは大企業しかできなかったデータの取得・集計・分析が、中小企業でもできるようになっています。定性的な判断ではなく、定量的な判断ができる仕組みが整うでしょう。そのステップのひとつが「オムニチャネル」だと思います。
オムニチャネルの本質は「顧客データの統合」です。リアルのマーケティングに、ネットのマーケティングを融合させることによって、お客様を統一した1つのIDで管理することを実現します。ネットのサービス利用は、基本的に顧客IDを持っていることが原則になりますから。
ネットショップでは、商品を購入し名前や住所・連絡先などの個人情報を入力すると顧客IDが発行されます。また同じネットショップを利用すると、その顧客IDに対して購入履歴(利用データ)が積み重なっていきます。サービスサイトにログインした状態でWebサイトを回遊すれば、購入履歴の他に行動履歴のデータを取得することができます。行動履歴データは、「Webサイトをどう動き、どんなコンテンツを見たか」というデータです。インターネットを介することで、顧客データ・利用データ・行動履歴データが取得できるわけです。
これまでのリアルでは、ほとんどのビジネスで利用データしか取得することができませんでした。レンタルビデオ店のような、会員カードをつくる特定のビジネス以外、顧客データは取得できませんでしたし、行動履歴データについてはもっての外、という感じです。しかし、CCCのTカードや鉄道会社のICカードの普及により、リアルの世界でも顧客データ・利用データが取得できるようになりました。鉄道会社のICカードにおいては、どの駅間を動いているかという行動履歴データすら取得することができます。(CCCが可能性を見出したのは、まさにココですよね)
中小の事業者においても、リアルの世界での会員カードの発行と継続的な利用が難しくても、インターネットを介する仕組みをつくることで顧客IDを発行することが可能になります。「リアル→リアル」では、会員カードがない限り顧客データの取得はできませんが、お客様に「リアル→ネット」「ネット→リアル」の動きをしてもらうことで、顧客データと行動履歴データの取得を可能にするわけです。「ネット→ネット」で様々なデータが取得できるように。
もうひとつ、リアルのマーケティングにおいて見逃せないのが、潜在顧客へのリーチです。前回のテキストで書いたとおり、ネットのマーケティングは「一本釣り」のマーケティングに偏ります。どうしても「たまたま見つけちゃった!」という、顧客にリーチすることが難しくなります。そもそも「自分が認知しているもの」しか、インターネット上で検索をかけることはないのです。自然に情報が入ってきて、興味を持ってもらう、という場がほぼありません。
この「潜在顧客にリーチする」という点においては、ネットのマーケティングよりもリアルのマーケティングの方が長けています。物理的に「そこにある」のですから、自然な情報として人に認識される可能性が高いわけです。Eコマース事業者が実店舗をつくったり、催事に出店したりするのも、サービスサイト事業者がテレビCMを打つのも、理由は同じです。詰まるところネットの「一本釣り」マーケティングでは潜在顧客にリーチできないからです。逆にいえば、いまリアルでビジネスを行っている事業者は、大きなチャンスがあります。リアルで勝てるなら、ネットで勝てる可能性があります。
つづく。