ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。
(前回はこちら)
「七海さん、いまの1日30人のアクセスを、同じようにポスターとチラシを活用して1日60人に増やしてください」
麻間(あさま)さんの言葉に、七海さんは耳を疑いました。七海さんは「ポスターを貼る。チラシを配る」以外の方法・アイデアを麻間さんに求めたのです。しかし、麻間さんの返答は「同じことをやって、ネットショップへの成果(=アクセス人数)を倍にしてください」ということでした。
七海さんは少し驚いて、麻間さんに言いました。
「えっ、ちょ、麻間さん?それってどういうことですか。私はポスターもチラシもやりましたし、それをやったら、1日10人のアクセスが1日30人になったんです。もっと他に、なんか、お会計のときにクーポン券を出すとか、ネットショップのヒミツの暗号を教えるとか、そういうの他のネットショップだとやってるじゃないですか。そういうのを教えて欲しいんですけども!」
話しているあいだ、七海さんの語気は少しずつ強くなっていきました。最後は、麻間さんを怒っているような言葉になっていました。七海さんは自分自身でそれに気がつき、麻間さんに謝りました。
「・・麻間さん、すいません。ちょっと怒ったような感じになってしまって。でも、ポスターもチラシもやってるんだから、もっと他の方法を教えてくれたっていいじゃないですか~」
また怒ったような言葉づかいになりそうになるのを自分で感じ、七海さんは語尾を意図的に伸ばして話しました。
「七海さん、いまクーポン券を出しても、ネットショップのヒミツの暗号を出しても、あまり意味がないですよ。もし、クーポン券を出したとして、ネットショップのヒミツの暗号をお客様に伝えたとして、そうしたら、七海さん、次はどうするつもりですか?」
麻間さんはいたって冷静に、七海さんに質問を返しました。
「えっと。クーポン券とヒミツの暗号をやったら、次は・・。またアイデアを考えて・・ポイントカードとか、そういうのもあると思いますし・・」
七海さんは言葉につまりました。
「ポスターを貼って、チラシを配って、クーポン券を出して、ヒミツの暗号を教えて、ポイントカードを発行して・・どんどん数を増やしていくのは構わないですけども、お客様はそれで嬉しいですかね?」
麻間さんはまた冷静に七海さんに質問をしました。七海さんは麻間さんが伝えようとしていることを、なんとなく感じたようでした。
「お客様、そんなにサービス、いらないと思います・・」
七海さんの言葉に、麻間さんはやさしく返します。
「そうなんですよ。そんなに次々のサービス、お客様にとっては、実は面倒なことなんですよ。ポスターも、チラシも、クーポン券も、ヒミツの暗号も、ポイントカード発行も、施策としては否定しません。もちろん、効果もあると思います。でも、単に、サービスを重ねるだけではお客様は振り向いてくれませんよ。大切なのは、『掘り下げる』ことです」
「掘り下げる?」
七海さんは思わず質問を返しました。
「そう。『掘り下げる』ことです。これは、おそらく自分で体験してみないとわからないものだと思います。とにかく、まずは私を信じてもらって、ポスターとチラシだけを活用して、ネットショップのアクセス数を1日60人にするため、試行錯誤してみませんか?」
七海さんは少し不安になりましたが、まずはやってみようと思い、麻間さんに頷きました。
麻間さんがおにぎり水産から帰ると、七海さんは実店舗に向かいました。実店舗の担当の友花里さんに、「ポスターとチラシだけで1日60人のアクセス数にするため」の相談をしようと思ったのです。
つづきはこちら。