いつも疑問に思うことなんですが、なんでインターネット広告にはポンポン予算を割くのに、人財育成にはポンポン予算を割かないのでしょうか。短期的に売上を掴みたければ、インターネット広告に投資して、中長期的に売上を伸ばしたければ、人財育成に投資するということで、本質的に役割は違うことはわかりますが、それにしても、インターネット広告に(成果を読めていないのに)投資しすぎなケースが多々あります。きちんと成果が測れているならばインターネット広告に投資するのも良いけど、そろそろネットビジネスも人財に投資しておいた方がいいよ、という話を書きたいと思います。
まずひとつ目。人財は成長していきます。確かに、最初は覚えが悪かったり、理解が不足していたりして、投資に見合った成果を出せないかもしれません。ただ、人財は自ら考えます。自分の覚えが悪いのも、理解が不足しているのも自分で知っており、それを自ら改善できるように、頭を働かせます。人財育成として、何かを指導することによる直接的な効果だけではなく、人財自身の自己の中での消化や葛藤による成長という、間接的な効果も得られるわけです。それに対して、インターネット広告は、自ら成長することはありません。PPC広告であれば、ユーザーにクリックされても、サービスの利用に至らず、そのままサイトを離れてしまったら、それっきりです。インターネット広告は先には繋がりません。繋がるのは、人財育成ですよね。
ふたつ目。人財には随時フォローを加えることができます。人財育成の指導に対して意欲的でなかったり、混乱していたり、迷っていたり、あるべき道をはずれたり立ちどまったときには、随時サポートをすることができます。それにより、一歩前に踏み出してもらうことや、加速的に前進してもらうことができます。相手が人ですから、感情的なもつれが起こることもありますが、きちんと対話をしていくことで、着実に人財のレベルはステップアップしていきます。インターネット広告は、随時フォローができるものばかりでなく、広告入稿後の修正が効かないものさえあります。できることの幅が決まっていますし、想像以上の成長の加速を見せることもありません。もしあったとしても、ラッキーパンチが当たっただけで、再現性があるものではないでしょう。
みっつ目。これが最後であり、もっとも重要なポイントです。環境は変化します。市場の変化はもちろん、競合のサービスも変化を重ねていきます。人財は、きちんと育てていればその変化に対応することができます。たとえ、GoogleがPPC広告を停止し、検索アルゴリズムを全く別の方向に動かしたとしても、人財が育っていれば、PPC広告に変わる集客手段を探し、検索結果の最適化を自らの力で探し出します。インターネット広告だけに投資をしていると、投資を続けているインターネット広告のノウハウには詳しくなりますが、いざ環境が変化したとして、その対応が遅れてしまうのではないでしょうか。ノウハウに頼ったネットビジネスは、環境の変化で危機に陥りやすく、「環境の変化にはっきり気づくまで」これまでのノウハウを惰性的に続けることになります。(ちょうど、2010年頃のイーコマース市場はそうでしたね)
人財に指導するのは「ノウハウ」ではなく、「原理原則」です。「セオリー」や「本質」という表現でも同じだと思います。人財が「原理原則」を自分のベースとして持ち合わせている上で、市場から「ノウハウ」を探していくのが理想的です。「原理原則」を知らず、「ノウハウ」から入ってしまうと、環境の変化にはついていけません。イーコマースやWebサービスなどネットビジネスも「ノウハウ」で勝てる時代から、「原理原則」を持たなければいけない時代に変わってきています。そして、ネットビジネスの「原理原則」を持った人財を、社内に何人育てられるかが、5年後10年後のインターネット事業の強さに関わるんじゃないかな。経営者、事業責任者以外に、何人育てられるかが。
おわり。