ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「『客単価』は、実店舗やってたから知ってるわな?」
猪井氏(いいし)先生の質問に、七海さんは自信を持って頷きました。ネットショップでいう「アクセス人数」や「転換率」は聞き慣れない言葉でしたが、「売上」「受注件数」「客単価」の3つは、実店舗の担当をしているときも気にしていた数字項目でした。
「『客単価』は、『商品を購入いただいたお客様が、ひとりあたりどのくらいお金を使ってくれたか』という数字ですよね」
七海さんがそう答えると、猪井氏先生はすかさず「ええがな。『客単価』の計算方法はどうやって出す?」と重ねて質問をしました。
「『客単価』の計算方法は、『売上÷受注件数』ではないでしょうか。そうすると、お客様がひとり当たりどれくらいの金額、商品を購入してくれたかがわかると思います」
猪井氏先生は「ええがな!」と大きな声で言いました。「七海さん、流石やな。マーケティングのセンスがあるでぇ」。猪井氏先生が手放しで褒めたので、七海さんは少し照れくさくなりました。
「ちょっと質問なんですけれども、猪井氏先生はいま『売上』『アクセス人数』『受注件数』『転換率』『客単価』の5つの項目をあげてくれたと思うんですけども、この5項目である理由は何かあるんですか?例えば、3つの項目とか、もっと多くて10コの項目とか、たくさんの数字を見るとかもあると思うんですけども。ちなみに、って感じなんですが」
猪井氏先生は七海さんの質問に、「フムフムフム」といった感じで頷いて言いました。
「七海はんの質問、2つに分けて回答するわ。まずは項目の数なんじゃけども、基本は『1つの数字項目を徹底的にみる』ことから始めるのが大切じゃ。1つの数字項目を徹底的にみれるようになってから、2つの数字項目を徹底的にみる。2つの数字項目を徹底的にみれるようになってから、3つの数字項目を徹底的にみる。そんな感じでマーケティングに慣れていかねばいかん」
七海さんはじっと猪井氏先生の目を見て話を聞いていました。
「ただ、スタートする数字項目については、数字をみる人間のマーケティング能力による。ワシは、七海さんはマーケティングへの抵抗感があまりないと読んだ。だから、5項目の数字をみるところから提案をしたわけじゃな。場合によっては、3つの項目からスタートすることもあるし、状況によっては1つの項目からスタートすることもある。どのレベルからスタートすれば、着実に慣れていくことができるのか。そこがワシの仕事じゃからな」
七海さんは5つの数字項目を提案された理由を理解しました。もうひとつ、気になっていたのが、「売上」「アクセス人数」「受注件数」「転換率」「客単価」という5項目を猪井氏先生が挙げた理由でした。
「最初に七海さんに挙げた5項目の理由は、『ネットショップを運営するにあたって、もっとも大切な5項目』だからに他ならないわ。『売上』が大事なのは言うまでもないじゃろう。『アクセス人数』は、インターネットだからこそ取得できる大切な数字。『受注件数』『客単価』は実店舗でも『売上』の次に大事な数字じゃ。そして『転換率』。これもインターネットならではの数字項目じゃが、『アクセス人数』と並ぶくらい重要な数字じゃ。『売上』を頂点としたツリーを書くと、こんな感じになるんじゃ」
そう言って、猪井氏先生は会議室のホワイトボードに「売上」を頂点にしたツリーを書きました。「売上」から4本の線が伸び、その先に「アクセス人数」「受注件数」「転換率」「客単価」という文字を書きました。
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