ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「そうなんです!『ネットショップのデータ』が『客観的=定量的』なものなのです!」
麻間(あさま)さんがいつもよりも少し大きなボリュームでいいました。パッと目を見開き、明るい表情になったように感じられました。
「ネットショップの運営で取得できるデータは、『客観的』かつ『定量的』なものです。七海さんと友花里さんが実店舗にポスターを掲示し、レジでチラシを配った。ただ、実際にそれによってネットショップにお客様がアクセスしてくれるか否かは、お客様次第ですよね。ですから、チラシやポスターによる効果がネットショップのアクセス数に表れるということなんです。もう少し堅い表現をすれば、お客様からの『評価』ですね。チラシとポスターに『惹き』があり、お客様が『評価』してくれたからこそ、ネットショップのアクセス数が上がってきているわけです。ここが『客観的』の意図する部分ですね」
七海さんと友花里さんは「なるほど」という顔をしました。友花里さんがいいました。
「たしかに、今までだったら実店舗で何かしら販促のチラシを配ったとしても、『よくわかんないけど良かったんじゃないかなぁ』みたいな、『主観的な評価』で仕事を終わらせていた気がします。なんかこう、明確に実店舗での販促効果を測れるものってなかったよね?」
友花里さんが七海さんの方を向いていいました。七海さんは、「たしかにそうだね」と頷きました。
「そうなんですよ、友花里さん。実店舗で考えると、施策の効果の検証というのはなかなか難しいものなんですよね。売上や注文数という『評価』はあるのですが、1日に1回レジを締めた後に計算されるのが普通です。ネットショップの場合だと、このあたりの『評価』をリアルタイムで知ることができます。あとは、アクセス人数ですね。七海さん、ネットショップでいうアクセス人数、実店舗だと何に当たると思いますか?」
「それは、実店舗の『笹かまオニギリ』の『来店客数』ってことですよね」。七海さんは麻間さんの質問に間髪おかずにこたえました。どうやら、麻間さんとの波長が少しずつ合ってきた様子です。
「そうです。ネットショップの『アクセス人数』は、実店舗における『来店客数』です。つまり、実店舗の中に入ってきたお客様が何人いたか、ということですね。じゃあ友花里さん、実店舗の『笹かまオニギリ』では、1日の『来店客数』がどれくらいかわかりますか?昨日の『来店客数』が何人だったか、知っていたら教えてもらいたいのですが・・」
「うーん・・すいません。ちょっとわからないです。平日はほとんどが工場見学でいらっしゃるお客様なので、『バスの台数×1台あたりの人数』ってのはわかるんですが。昨日は何台だったか、何人乗りのバスだったか。それに、工場見学以外でいらっしゃったお客様がどれくらいいたか。そんな話ですもんね」
はっきりとした数字をこたえられず、友花里さんは申し訳なさそうな表情でいいました。
「いやいや、そんなに落ち込むことはないですよ。実店舗で『来店客数』の数字をとるのは簡単ではありません。システムを入れるのは大掛かりですし、カチカチとカウンターを使って人数をカウントするわけにもいかないですしね。そうなんです。実店舗は『来店客数』が取りずらいんですね。ネットショップの『アクセス人数』は簡単に取れるのに。ここはひとつの大きなポイントです。つまり・・」
「つまり・・」。七海さんと友花里さんが麻間さんの言葉を繰り返しました。
「ネットショップは『アクセスしたけど購入しなかったお客様』の分析が簡単にできるということです」
つづきはこちら。