ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「まあ、新しいことを行うときや、新しい発想を持ち込むときは否定が付きものですから、あまり気にしないことだと思いますよ。それで何かアイデアは出たんですか?」
麻間(あさま)さんはそこまで言うと、鬼切社長の話を待つように、ペンを持ち、またメモ帳に目を落しました。
「あんまり話し合いという感じにもならなかったんですけどね。笹かまぼこの素材をより良いものにして、味のクオリティを上げるとか、そういう話が出ました。とにかく会議で出た意見としては、『そんなもの成功するはずがない』と『美味ければ高く売れるかもしれない』という2つでしたね」
「なるほど、なるほど」。麻間さんは、鬼切社長が話した内容をひと通りメモすると顔を上げ、鬼切社長に言いました。
「でも、やるって決めたんですから、やるしかないですよね」
麻間さんのその言葉は、猪井氏(いいし)先生の発する言葉と同じくらい、強くて絶対的なものに感じられました。鬼切社長は、思わず「はい」と返答をしました。
「大丈夫ですよ。まだ『笹さまぼこは5,000円で売れない』と決まったわけじゃないですから。猪井氏も言っていたように、母体となるビジネスが上手くいっているからこそできるチャレンジを有効に使っていきましょうよ。また再来週に猪井氏がこちらに来ますから、引き続き考えてみてくださいね」
麻間さんにそう促されると、鬼切社長は手帳に「引き続き考える」とメモをしました。麻間さんは、鬼切社長がメモを書き終えるのを見計らったように言いました。
「さて、おにぎり水産の新しいネットショップですが、猪井氏に聞いたところでは、ショッピングモールへの出店ではなくて、自社サイトでの出店ということで大丈夫でしたよね?」
鬼切社長は、無言で頷きました。
「おにぎり水産のネットショップの場合、現状、販売する商品は笹かまぼこセットの1商品ですし、今後もそう多くの商品を抱えるということはないでしょうから、笹かまぼこへのこだわりや、笹かまぼこを使った料理の情報などを中心にした、情報メディア型の見せ方をした方が良いかもしれません」
「麻間さん、すいません。あまり他のネットショップを見たことがないんですが、通常、ネットショップってどれくらいの商品を販売しているものなのでしょうか?」
「これはジャンルによって変わるんですが、健康食品や美容系のネットショップだと、本当に1商品からってところが多いですよ。複数の商品を用意していたとしても、同じ商品のセットだったりします。健康食品や美容系は同じ商品を使い続けてもらって、買い続けてもらうことがネットショップとしての価値ですからね。もしかしたら、おにぎり水産の新しいネットショップも、健康食品や美容系のネットショップの提案の仕方が参考になるかもしれません」
「逆に、商品の数が多いところって、どれくらいあるのですか。1,000商品とか10,000商品とかでしょうか」
「いやいや、もっとですよ。ネットショップに力を入れている会社ならば1,000商品や10,000商品はザラにいます。100,000商品を販売しているネットショップも多いですし、私が知っているところだと500,000商品を取り扱っているネットショップだってあります。すごいですよね」
「500,000万点!」。鬼切社長は麻間さんの話をメモしながら言いました。そして、メモが終わると同時に質問をしました。「麻間さん、1点質問していいですか。そういうネットショップさんて、500,000商品の在庫を、全部自社の倉庫で抱えてたりするものなんですか?」
「在庫の持ち方については、いくつかのパターンがあると思います」。麻間さんの解説が始まりました。
つづきはこちら。