著者:石田 麻琴

セブンアンドアイが300万点をEC販売! 【no.0065】

■セブンアンドアイグループが在庫データを統合!300万点をEC化!

 楽天市場の優勝セール、そして二重価格問題に若干隠れてしまった感があるのだが、11月4日、セブンアンドアイグループがグループ全社で扱う300万点もの商品をインターネット上で買えるようにすることを発表した。セブンアンドアイの傘下の国内小売・ネット販売企業は約20社らしい。イトーヨーカ堂やそごう/西武などなど。まずは年内にネット事業会社を2社統合するのを皮切りとして、新会社がグループ全体のネット戦略を策定していく。そして、1千億円を投じて在庫情報を一元化するシステムを構築するとのこと。(日本経済新聞より)

 Amazonジャパンが取り扱っている商品数は、昨年12月時点で5,000万点。楽天市場も同一商品をカウントすると、だいたい5,000万点らしい。それを考えれば、300万点という数字は驚愕の点数ではないのかもしれないが、ここの価値はセブンアンドアイのような日本の小売業界の最大手企業が、他社に先立って「本気で」オムニチャネルの事業モデルに取り組もうとしているところにあると思う。

 今回のブログでは、既にリアルビジネスを営んでいる企業がEC事業に取り組む際のポイントを書いてみたいと思います。

■商品データと在庫データの作成。運用の仕組みが意外な落とし穴‥!

 まず、この記事と同様、販売チャネルの在庫を統合するシステムをつくることが大きな課題。セブンアンドアイグループでは300万点の商品データレコードを作成することになる。日々、商品が流れていく中で、正確な在庫データを作成しなくてはならない。全社的に生産と流通と販売を止めて棚卸するなんてことはできないでしょうしね。商品データと在庫データを統合、販売チャネルの在庫を連動させる仕組みができた後に必要なのが運用の仕組み。新しい商品が毎日何百・何千と増えていくだろうから、正確に商品データを登録していくルール、入力したデータをチェックする仕組みが必要になる。商品データと在庫データを一気に作ったとしても、運用ルールがマイルール化していって、後から正確なデータが取れなくなる、というのは良くあることだと思う。

 次に、在庫を保管する倉庫の問題。セブンアンドアイグループが、現在どのように在庫を保管しているのかイマイチわからないが、300万点をインターネットに掲載し、ショップ関係なく商品を配送するためには、在庫を同じ倉庫においておく必要が出てくる。ボールペンとノートを同じ買い物カゴで購入した場合は同一の配送にできるだろうが、ソファとボールペンを同じ買い物カゴで購入した場合、同一の配送で送るのか、それとも別の配送にするのか、商品データの作成とともに、倉庫のレイアウトだったり、物流ラインの構築であったり、配送条件のアルゴリズムなどが絡んでくる。おそらく、今までイトーヨーカ堂やセブンイレブンへルート配送していたラインと倉庫のノウハウを使うのだろうが、配送個数が爆発的に増えるのをいかに対応するのだろうか。

■ホームページやネットショップを作成後放置の企業は、ネット戦略の再構築を!

 製造メーカーや卸、紙通販、実店舗をやっている企業がネットでも有利な理由は、やはり在庫データがインターネット上と連動できるから、そして在庫の保管先も新たに用意する必要がないから。紙通販の企業であれば、物流のシステムも整っているので連動することができるし、季節によって繁閑が激しい事業であれば、それに合わせて人員を充てることができる。当然のことながら、インターネットで売る商品はあるわけだし、商品企画の仕組みが整っている企業であれば、インターネット販売用の商品を作ることも可能。そしてなにより、リアルビジネスでのブランド・知名度・信用が既にあるわけだ。

 とにかく、インターネット上において、既にリアルビジネスで実績がある企業は圧倒的に有利なのだ。ホームページを作って、広告をかけて、でも思うように売れなくて、そこでインターネット戦略が止まってしまっている企業がとても多いが、セブンアンドアイの影響で新たにネットショップを活用する層が少なからず増えるだろうし、少しずつでも早めにネット戦略の再構築に着手すべきだ。

そのポイントになるのは運営力。ネットショップは作っただけでは売れない。いかにデータを捉え、日々改善を重ねていくか。運営を「やりきれる」かが成功への鍵になるでしょね。

 セブンアンドアイのような最大手がオムニチャネル化を成功させたら、後発の競合小売は大丈夫なのでしょうか‥?