ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
二子(にこ)社長の説明のおかげで、鬼切社長はマーケティングと数字の関係性を少しずつ理解することができてきました。二子社長の解説はわかりやすく、そしてセオリーに根付いた表現をしてくれます。
*戦略があって、その次に手段の選択がある
「鬼切社長、まずはマーケティング戦略ありき、ということですよ。戦略があって、その次に手段の選択があります。年商1億円のネットショップを運営するとして、ショッピングモールに出店してロイヤルティが5%かかると、年間での支払額は500万円です。自社サイトでネットショップを運営すれば、それがゼロです。ネットショップの出店費用は、月額1万円~5万円ほど。月額2万円程度のところが多いですから、年間で30万円の経費としましょうか。そうすると年商1億円に対しては、0.3%ですね」
「あれっ」。鬼切社長はそう思いました。年間の予算における0.3%とは、意外に安いな、と。これまで、商品原価率や物流費において、35%、30%などと話していたものに対して、随分低い数字だなと。年商1億円という軸で考えれば、年額30万円は大きな数字ではありません。
「二子社長、ちょっと思ったんですが、ネットショップの出店費用の年間30万円って、安くないですか。年商1億円に対しての0.3%って。いままで、商品原価や物流費で35%だの30%だのって話をしてきたのに比べると。無料の方が経費がかからなくていいのでは、なんて話をしてきましたが、たった0.3%の違いだったら、有料でもより良い方を選んだ方がいいのかもと思います。そんなことになんで気づかなかったんだろうか・・」
*イニシャルコストではなく必要経費
「うーん、鬼切社長。でも、いま鬼切社長がおっしゃったことと、同じことを考える経営者の方は多いですよ。年商1億円に対する年間30万円というと額としては少ないですが、あくまで目標が年商1億円なのであって、現時点の売上はゼロ万円であるわけです。売上がないと、どうしても目先のイニシャルコストを抑えたいという気持ちが湧きます。その気持ちは非常にわかるんですが、できれば目標に対して最適なマーケティング戦略を立案し、最適なソリューションを選択したいところですよね。出店費用は、イニシャルコストではなく必要経費であるという見方をした方が良いと思います」
「そうなんですよ。私もそこが気になったんですよ。私も、一応水産加工業の会社を経営していますし、少しだけネットショップをかじったことがあるのでわかるんですが、商品原価や物流費という支払いは、会計上、お客様に商品を購入していただかないと発生しない経費なんですよね。売上がゼロだったら、商品原価も物流費もゼロ。厳密に言うと、ある程度の商品在庫を用意しておかなければいけないので、商品を作っていないということはないんですが、会計上はゼロです。ちなみに、いま二子社長から聞いた感じだと、ロイヤルティも売上がなければゼロですよね。これはいいんです。でも、出店費用のように、売上がゼロでもかかる費用については、足が止まってしまうんえすよねぇ」
*「売上が取れる」ことが最初から確定している事業はない
鬼切社長と二子社長は、ふたりとも腕組みをしていました。
「ここは難しい選択です。売上が取れるなら、イニシャルコストを掛けても良いけど、売上が取れるかわからないなら、イニシャルコストは掛けたくない。それが経営者の素直な気持ちでしょう。ただ、そこはトレードオフの関係があって、そもそもイニシャルコストをかけてないから売上が取れていない、とも考えられます。そうすると、イニシャルコストはイニシャルコストではなく、ネットショップで成功するための必要経費だ、という理解が良いでしょうね。そもそも、スタートする時点で『売上が取れる』ことが確定している事業なんてないですから。経営者の判断力が問われるところです」
単にインターネットを活用する、ネットショップを行うではなく、もっと深いところからマーケティングを考えている二子社長に、鬼切社長は感服しました。
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