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データを活用して廃棄率75%減を実現した、スシローのデータマーケティングを解明しよう、という話の第十三回です。これが最終話となります。長い間お疲れ様でした。
前回は、システム運用におけるチューニングについて書きました。システムを構築し、アルゴリズムを組んで運用をスタートさせたとしても、1日1,000皿の回転寿司の廃棄数が、その日からいきなり250皿に減ることはありません。様々なデータ条件を調整して、データ項目の重要度・優先度をいじりながら、その回転寿司店舗にとっての最適な需要予測を探っていかなければなりません。
データの取得や、ビッグデータの解析、アルゴリズムの構築は、テクノロジーの力を大きく借りているとはいえ、目標に到達するための「カイゼン」をするのは、人財です。「カイゼン」はシステムが行うものではありません。昨日と今日の仕事において、何を変えるかを考えるのは人、その成果を判断するのも人です。システムに頼るのも、頼ることを選択するのは人です。
回転寿司の廃棄率を下げるためには、寿司ネタを流す順番を微妙に変えたり、お客様に座ってもらう位置をグループによって調節したり、回転レーンを流れる皿の大きさを変えたりと、システムに関わらない小さな「カイゼン」がたくさん影響していきます。1,000皿の廃棄数から、システムである程度廃棄数が削減できたとしても、それ以上の成果は1皿1皿どうやって廃棄数を減らしていくかの戦いです。
システムはお金を出せば導入することができます。私のような、見習いコンサルタントがこんなコラムを書いている以上、データマーケティングの仕組みを組むのも難しいことではありません。誰でも、仕組みを構築することができます。勝負を分けるのは、その後です。運用です。では、その勝負を分ける運用に違いを生み出すのは「人」しかありません。
データマーケティングを進めるとき、日々「カイゼン」のアイデアを考え実践する現場のスタッフに「データを読む力」があることが、重要な条件です。何を「カイゼン」するか、どうして「カイゼン」するか、どうやって「カイゼン」するかを考え、実践した人間でないと、その成果のデータを正しく評価することはできません。ここはデータサイエンティストに頼るのではなく、自分自身で「データを読む」ところです。他人(ここではデータサイエンティスト)は、現場のスタッフが「どんな仕事をしたか」はわかっても、「どんな気持ちで、どれほどの気合で仕事をしたか」はわかりません。
「データを読む力」ともうひとつ、重要なのが「やりきる力」です>。データマーケティングは、様々なアプローチを試してこそその成果のデータが動いていきます。つまり、何もせずして、データが改善されることはありえません。良かれと思って行った「カイゼン」が悪い結果を招くこともあるでしょう。なかなか成果がデータに表れないもどかしい状態が続くこともあるでしょう。しかし、最適化をはかるためには改善を続けなくてはいけません。「やりきる力」です。この「やりきる力」の大切さは、データが取れなかった過去の時代でも、データが取れるようになった現在でも、変わらない必要不可欠な力です。
データマーケティングができることになったことによって、より「カイゼン」がやりやすくなっていることは確かです。データの取れない頃は、物事を「定性的」にしか判断することができませんでした。しかし、データがあることで誰でも簡単に「定量的」な評価ができるようになったわけです。回転寿司の現場のスタッフも、データを活用することで廃棄率75%が実現できます。データを取れるようになれば、人が育つのです。人を育てるためには、データを取れば良いのです。
やっぱり最後は人ではないかと思います。