ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
「まあ、その『何でリピートしてもらえないか』って話なんじゃけども‥」
「はい」
鬼切社長は猪井氏(いいし)先生からどんな答えが出てくるのか、期待をし過ぎて身をのり出しました。
「まずは、鬼切はんの意見を聞こか!」
「ええ~っ!」
鬼切社長はバンザイをして、思わずイスごとずっこけるところでした。
「猪井氏先生、そこは猪井氏先生が教えてくれるところなんじゃないですかー!?」
「鬼切はん、何を言ってるんじゃ。まずは自分で考えることが大切なんじゃないか。ホレ、意見を出してぃ。外れてたってかまわん。というか、正解なんぞない」
「わかりました。ショッピングモールに3回インターネット広告をかけて獲得した2,300人と、笹かまぼこのランキングを経由して購入してくれた700人の合わせて3,000人にメールマガジンを送ったけれども、ほとんどのお客様がリピートをしてくれていない理由ですよねー」
「そうじゃそうじゃ。うまく整理できとるよ」
「ひとつ考えられるのは、おにぎり水産ネットショップが笹かまぼこしか扱ってないので、お客様が飽きた、という可能性ですよねー。3回の広告もそうですし、流したメールマガジンの2回とも、同じ笹かまぼこを紹介しています。飽きたって可能性はありますよね。あとは、笹かまぼこ自体がお客様のお口に合わなかったという可能性もあるんですが、その原因は考えづらいと思います。だって、今までおにぎり水産は笹かまぼこの製造メーカーをずっとやってきましたからね。卸先のスーパーや小売店でそれなりに売れているのは知っています。だから、美味しくなかったというのはないと思うんですよね」
「そうじゃそうじゃ。もう少し考えてみ」
猪井氏先生は、鬼切社長の考えに時折相づちを打ってこたえます。
「あとは、商品ではなく、ネットショップでの販売方法の問題ですかねー。うちのネットショップ担当の静子さんはウェブサイトを触るスキルが無いので、ショッピングモールのテンプレートに写真と説明文をはめ込んだだけの不格好なページになってしまっています。にこにこ水産さんのネットショップと比べると、かなり簡素なページになってしまっているんです。でも、これは『リピートしてもらえない』理由ではない気がしますねー。だってこのページで一度買ってもらっているわけですから。むしろ、いまのネットショップのページに載っている笹かまぼこの写真よりも、手元に届いた笹かまぼこの方が、きれいですし満足感はあるはずだと思います。だったら、ちゃんとした写真を撮れって感じですが‥」
鬼切社長は、自分で自分に突っ込み、苦笑しました。それに合わせて、猪井氏先生も笑顔を浮かべ、鬼切社長に調子を合わせます。
「ええよええよ。これから少しずつちゃんとやっていけばいいんじゃ。恥ずかしがることもないし、自分を責める必要なんかもない。それで?それで?」
「そうですねー。あとはメールマガジンの内容が悪かったという可能性がありますかねー。あまりお客様に読んでもらえない時間帯にメールを送ってしまったとか、メールの件名があまり目立たなかったとか、そういう可能性もないことはない気がします。メールマガジンの内容については、1回目に送った時はショッピングモールの研修の雛形通りに送ったので、味気のないものだったんですが、2回目は社内のスタッフを集めてミーティングをやったんですよ。メールマガジンの内容を決めることだけのミーティングを組んで。ショッピングモールで売れている他のネットショップのメールマガジンを参考にしたりして頑張ったんですけどね。ダメでしたわ。こう考えると、理由はいろいろありそうですが、どれがどうっていうのは、はっきりとはわからないですね‥」
そういうと、鬼切社長はまた下を向いてしまいました。でも、猪井氏先生はニッコリと笑い、鬼切社長に言いました。
「ええやんええやん。そんなこと気にすることない。そもそも、『わからない』ことを『わかる』ように近づけていくのが仕事というもんじゃないか。『わからない』ことがわかっているだけで今は十分じゃ。『わからない』ことが『わからない』より、よっぽどええ」
猪井氏先生は相変わらず笑顔でした。猪井氏先生の顔を見ていると、鬼切社長は、なんだか頑張れそうな気がしてきました。
つづきはこちら。