ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「ばかもん!!!大ばかもん!!!」
猪井氏(いいし)先生の怒鳴り声が、おにぎり水産の会議室にこだましました。隣にある事務スペースにも猪井氏先生の声が響いたようで、隣の部屋の話し声も心なしか止まったようでした。しばらくの静寂の後、猪井氏先生は自分が余計に声を荒げたことに気づいて言いました。
「つっても、そんな『ばかもん』でもないんじゃけどな。まあ、教えたるわ」
鬼切社長に対するフォローなのか良くわからない前置きをして言いました。
「たしかに、おにぎり水産としては良い商品を作ることに専念できるという点では、『運営代行』はええサービスやと思う。でもな、大切なのは直販のナレッジを自社に蓄積していくことじゃろう。違うか?」
猪井氏先生の言葉に、鬼切社長は頷きました。
「主軸が違うんじゃ。主軸が。『運営代行』の主軸は代行側にある。ワシが提案している『全面バックアップ』は主軸がおにぎり水産側にあるんじゃ。だから、契約案にも書いてあるじゃろう『ただし3年間で卒業すること!』って。ポイントはここじゃ」
「この3年間で卒業って、そういう意味だったんですか・・」
ようやく猪井氏先生のいう「全面バックアップ」の意味が掴めてきた鬼切社長は言いました。
「そうじゃ。3年んでワシと麻間から卒業しなくちゃいけないことが最初からわかっとったら、インターネットビジネスの原理原則や、スキル・ノウハウを嫌でも学ぶことになるじゃろう。だって、3年が経ったらワシらはいなくなるわけじゃからな」
「大変そうですね・・」
鬼切社長は思わず呟きました。まだ本格的にネットショップに取り組んでいるわけでもなく、猪井氏先生や麻間さんがどれくらいの量を学ばなくてはいけないのかもわからないわけですから当然です。その雰囲気を察して、猪井氏先生は言いました。
「まあ、鬼切はん、そこは心配しなさんなって。必ずおにぎり水産のネットショップチームが自立、自走できるように育てていったるわ。それだけのノウハウをワシらは持っとる。どうじゃ、『運営代行』よりも『全面バックアップ』の方がええじゃろう」
「運営代行」をお願いした方がおにぎり水産としては「楽」だし、売上が伸びるまでの手間が省ける気がしましたが、やはり最終的に目指す道は「直販化の自立」だと鬼切社長は考えていました。そのためにも、自社にきちんとしたEコマース事業のチームを作らなくてはいけない。それまでにはたくさんの苦労もあるでしょうが、Eコマース事業を「自走」し続けるためには必ず通らなくてはいけない道だということも、鬼切社長は理解をしていました。
「猪井氏先生、わかりました。ご提案いただいた『全面バックアップ』の方式で、ご協力をお願いします。ただし、3年で卒業できるかどうかは・・正直自信はないです・・」
ハッハッハ!猪井氏先生は大きく笑って言いました。
「まあ、まだ何も始まってへんしな。不安が多いじゃろうけども、不安になる過ぎることもない。世の中『大変だけれども、思ったより大変じゃない』ことばかりじゃ。人間って生きモンは面白いもんで、『感情』が先にくる動物なんじゃな。イヌやネコのことは良くわからんけども、何かを始めるときに『ダメだ。自分じゃ無理だ』って気持ちがなぜか先に出てしまう。現実よりも過剰に恐怖心を持って、始める前にやめてしまうもんなんじゃ。『行けばわかるさ』の気持ちが大切じゃな」
過去を振り返るとそんなことばかりだ。そう鬼切社長は思いました。
「やっぱり、どんな挑戦もまずは自分のメンタルとの戦いなんですね」
「そうじゃ。自分との戦いなんじゃ」
猪井氏先生はニッコリと笑って言いました。
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[…] 第八十四話 どんな挑戦もまずは自分のメンタルとの戦い。行けばわかるさ!ばかやろう【no.0525】 http://www.ecmj.co.jp/?p=5832 […]