ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「と、いうように、決済方法の選択肢は多ければ、お客様の満足に繋がる可能性は高いんですね。あとは、ネットショップ側のオペレーションコストとの兼ね合いです」
鬼切社長はウンウンと頷いて、手帳にメモを取りました。鬼切社長がメモを取り終わるのを待って、二子(にこ)社長が続けて話します。
「ここまでが、システム利用料ですね。一旦ここまでをまとめましょうか。鬼切社長がメモしたもので、ネットショップの運営にかかる費用を一緒に確認していきましょう」
鬼切社長はメモ帳を遡って、「売上年商1億円。利益2,000万円」と大きく書いたページを探しました。もう10ページ以上も前のページでした。鬼切社長と二子社長の勉強会も、かなり中身の濃いものになったようです。
「『売上年商1億円、利益2,000万円』を目指すにあたって、売上の年商1億円を100%としたときに、残したい利益が20%。まあ、ここは、実際に20%残るのか残らないのかはわからないですが、あくまで目標の数字として、そのように設定しておく、と」
そこまで説明したところで、鬼切社長はテーブルに置かれたペットボトルの麦茶をひと口含み、経費の内訳に進んでいきました。
「ネットショップの運営でかかる経費として、まずは商品原価。これが35%。次に物流費。これが配送料、パートさんの人件費、資材費、保管料などのモロモロをまとめて39%の想定。そして、システム利用料。出店料が年間30万円とすると0.3%ほど。ロイヤルティがかかるとして、売上に対する5%ほど。あとは、決済手数料ですね。これが3.5%~4.0%ほど。という感じでしょうか。合計すると・・」
「鬼切社長、出店料と決済手数料を合わせて4.0%ということで計算しましょうか。その方が、数字が細かくなり過ぎないですから」
「そうですね。出店料と決済手数料を合わせて4%とすると、システム利用料は合計して9%になりますね。ということは、35%(商品原価)、39%(物流費)、9%(システム利用料)を合わせて、83%ですね。二子社長・・すでに利益が20%残らなくなってしまいました・・」
あくまでイメージをしているだけなのに、鬼切社長の額から大量の汗が流れてきました。どうやら、適当な数字を目標にしたことで猪井氏(いいし)先生に怒られると思ったようです。
「鬼切社長、落ち着いてください。あくまでこれは想定の数字ですから。これからおにぎり水産の直販事業、ネットショップを育てていく中でいかに利益を残していくかは、猪井氏先生とこれから考えていってください。ここまでで良くわかったことは、これまでのネットショップの運営方法では、到底利益は残らない、ということだけです」
二子社長がそう言うと、鬼切社長は落ち着きを取り戻したようでした。いつの間にか、額からの汗も、脇からの汗も止まったようでした。ワイシャツはビショビショに濡れていましたが。
「鬼切社長、先に進みますよ。次は固定費です。ここで言う固定費として計算したいのは、主に人件費です。ネットショップの運営を行う人の費用ということですね。その他にも、オフィスの賃料とか、インターネットの通信料とか、水道代とか光熱費とか、インフラ系の費用も本当は含めなければいけないのですが、おにぎり水産の場合は保管料と同様に、現在の自社内で償却している、という計算で良いですよね?」
「まあ、同じ事務所で働いていますし、別にネットショップの仕事をやるときにパソコンを変えるわけでもないですしね。そこは償却している扱いで大丈夫ですよ」
「そうしたら、まずは、鬼切社長、以前、ショッピングモールに出店していたときに担当をしていた事務の方、どれくらいの時間をネットショップの仕事にかけられていましたかね?」
「事務の静子さんですね。どのくらいですかね~。それまでやっていた事務の仕事も引き続きお願いしていたので、1日に1時間や2時間くらいだと思いますが。ちょっと本人に聞いてみないとわからないところもあるんですが、昼食を終えた後に前日の注文を確認して15時までに発送の準備を終わせていたようなので、やっぱり多くても2時間くらいだと思うんですよね」
「となると、月の4分の1から5分の1の時間をネットショップの仕事に使っていた、ということですね」
つづきはこちら。
[…] 第五十三話 これまでのネットショップ運営では、到底利益は残らない【no.0386】 http://www.ecmj.co.jp/?p=4580 […]