著者:石田 麻琴

お客様の信頼・期待を100%にするために、「徹底する」or「捨てる」【no.0611】

 先週の日曜日、近くのお寿司屋さんにいきました。

 いたって普通のお寿司屋さんです。というか、回転寿司です。チェーン店です。ただ、もう20回以上は行っていると思いますが、フランチャイズ的な感じなのかな。店のスタッフで、営業のルールを決めている。そんな感じのお寿司屋さんです。

 以前はカウンターで食べていましたが、子どもが小さいので持ち帰りです。もう、3-4回くらい、持ち帰りを利用しています。いつものように、お店に入ると「まいどっ!」という感じで、座席に促されるのですが、「あ、すいません。持ち帰りです」という流れになります。

 好きなネタを好きなだけ食べたい派ですので、基本は「お好み」で一貫一貫の注文をするのですが、「すいません。今日は、決まった桶でお願いします」と、桶のメニュー表を渡されました。いつもは注文ができるのに、なんで今日だけ?と思い、聞くと、「今日は日曜で忙しいから」とのことでした。

 このお寿司屋さん、まだできて間もないお店です。以前は、お昼で1-2組、夜でも4-5組しかお客さんがおらず、「もしかしたら、なくなってしまうのでは・・?」と、勝手ながら心配をしていました。味は美味しいので、なくなって欲しくないな、と。それが、最近、お客さんに知られてきたのか、平日の夜でも満員で入れないときさえあります。繁昌しつつあるお寿司屋さんです。

 しかしながら、「今日は日曜で忙しいので、決まった桶でお願いします」と言われたとき、「あ、このお寿司屋さん、これ以上は繁昌しないかもな」と思ってしまいました。なぜなら、お客さんへの「サービスルールを徹底できていない」からです。小さなことですが、「ほころび」の兆候です。

 お寿司屋さんにとっては、ちょっとしたことなのかもしれません。「他の日は、お好みでも受けてるよ」とか「電話で確認してもらった方がいいよ」くらいに思っているかもしれません。しかし残念ながら、その「ちょっとしたこと」でお客さんは離れていきます。

 お寿司を食べたいと思っても、「もしかしたら、今日はお好みで作ってもらえない日かもしれない」と頭をよぎれば、次の一歩がスムーズに動かなくなってしまうのです。一度でも、店員さんとの意思疎通がうまくいかなかったお店から、「気持ち」足が遠のいてしまうことと一緒です。「ちょっとしたこと」でも、お客さんはしっかり覚えているものです。

 ここでの選択肢はふたつあります。

 ひとつは、「日曜日はお好みでは持ち帰りできません」とルールを明文化することです。日曜のお好みを期待していたお客さんは離れていくことになりますが、「美容院の火曜休み」のように、浸透すればお客さん側も「そういうもんか」と気にならなくなります。

 もうひとつは、「一度決めたらやめない」ことです。サービスはお客さんの潜在意識にすりこまれていきます。「ここに行けば、当然こうだろう」「これを注文すれば、こうだろう」というように、100%の信頼をもってサービスに期待するようになります。たとえ真っ当な理由があろうとも、「ルールを変える」というのは、どこかの信頼を失うことになってしまいます。

 どの業界でもそうだと思いますが、仕事が少ないときに提供していたサービスが、仕事が忙しくなると提供できないようになってきます。これは仕方がないことです。ただ、お客さんの信頼は100%でなければいけません。成長のフェイズに合わせて「どのお客さんを対象にするか」を見直し、捨てる部分を「きっちり捨てる」ことが大切だと思います。

 「できるとき」「気が向いたとき」「余裕があるとき」にやる、ではいけません。それは、自分の事情です。自分の事情でビジネスを進めてはいけません。

 おわり。