(前回のブログを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)
データを活用して廃棄率75%減を実現した、スシローのデータマーケティングを解明しよう、という話の第十一回です。
前回は、回転寿司の需要予測をするために、お客様の「食事の時間と皿を手にしたタイミング」から、食事完了(お腹いっぱい)の着地を読んでいくという話をしました。お客様が回転レーンから取った皿を青い点、注文パネルから個別注文した皿を赤い点としてプロットし、青い点の流れを需要予測として回転レーンに流す寿司の量にするという内容でした。「廃棄率75%減」を実現するためには次のフェイズとして、「どの寿司ネタを回転レーンに流すか」が必要です。
ここまでの十回の整理も兼ねて、お客様の来店とデータマーケティングシステムの稼働についてストーリーをイメージしてみましょう。
11時、回転寿司「おにぎり寿司」の開店時間です。開店と同時に1人のお客様(石田さん)が入ってきました。スタッフが石田さんをカウンター席に案内します。スタッフが手元の端末で、カウンター1番に30代の男性1名が座ったことをデータ入力します。石田さんは上着を脱いで、お茶を入れ始めました。ジュルリ(舌なめずりの音)。石田さんはお茶をすすりながら、「さて、何から食べようかな」と考えています。当然、この時点で、回転寿司は廃棄率100%を覚悟して回転レーンに皿を回しておかなければいけません。もし仮に、石田さんが注文パネルでの個別注文しかおこなわない人で、かつ万が一、本日のお客様が石田さんだけだったら、回転レーンを回っている寿司は、すべて廃棄処分ということになります。(それ以上に本日の売上がヤバイでしょうが・・)
ここで最初に回転レーンに流す皿は何を選べばいいのか、です。もし仮に、回転寿司の顧客IDがあれば、石田さんが過去に何を食べたのか(そして注文パネルを使用したか)を知ることができるので、寿司ネタの選択に困りません。しかし今回、会員カードは無しの条件です。ここは非常にシンプルなのですが、過去のデータベースからお客様が最初に手にとった寿司ネタの比率を出し、回転レーンを埋める皿の数にかける。もしくは、「1皿目・2皿目は、お客様の属性を知るためのマーケティングだ!」と割り切って、回転寿司で扱っている全寿司ネタを均等に流す、という選択肢もあります。石田さんが最初にとる、1皿目、2皿目、3皿目あたりを寿司ネタの需要予測を図るためのマーケティングに活用する感じですね。ちなみに、本物の石田さんは、まぐろ(赤身)・ほたて・かつお(季節アリ)、を入店直後に食べます。
そして、5皿目くらいまでを食べた終えたあたりから、本格的なデータマーケティングがスタートします。ひとつは、石田さんが食べる量。ペースを落とさず食べているか、ペースが落ちてきているのか。もうひとつは、食べるネタ。同じネタ、もしくは同じようなネタ(まぐろの赤身・中トロ・漬けのような)を食べているのか。食べるネタも、過去のビッグデータから似たような顧客のデータを引き出すことによって、ある程度カバーすることができます。「1皿目にまぐろを食べた人のうち、もう一度まぐろを食べる人は●%。時間は×分後」とか。多くのレコードがあるシステムではもっとセグメントした条件をつけることができるでしょう。これを何百通り、何千通りも設定していきます。設定自体を仕組化したものが「アルゴリズム」です。
これで、1人のお客様に対して、「需要の予測」と「食べるかもしれない寿司予測」を立てる仕組みができました。
―――ここまでデータマーケティングの「構築」と「初期運用」の話をしてきましたが、これができたとしても必ずしも「廃棄率75%減」を実現できるわけではありません。「廃棄率75%減」のための本当のポイントである、「運用のチューニング」がここから始まります。
つづきはこちら。