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チョウチンアンコウ。11【no.1137】

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 岩本さんと片岡さんとの思い出はたくさんあるが、ひとつだけを挙げるとすれば、岩本さんの「長時間セミナー」だろう。

 2012年の12月、うちの会社でささやかな忘年会を開いた。メンバーは、岩本さん、片岡さん、僕、そして顧問税理士の堀田さんの4人だ。新丸ビルの中華料理屋さんだった。忘年会の時期だったので、予約なしで入れたのがそのお店しかなかったのだ。

 話題は岩本さんの講演についてだった。岩本さんは当時、年間50~60回ほど、講演活動で全国を飛び回っていた。この忘年会の前週にも講演会があったのだが、どうも消化不良だったようなのだ。「本当は話したいことが山ほどあるのだけれども、講演の時間は1時間から2時間だから、いつも話の前段の部分で終わってしまう」。岩本さんがいった。

 そこにピンときたのが片岡さんで、「じゃあ、岩本さんの話を全部聞く会をやりましょうよ」という提案をした。堀田さんと僕も、「いいですね!」とのった。僕自身、それまで岩本さんの講演を聞いたことがなかったのだ。

 最初は片岡さん、堀田さん、僕の3人が岩本さんの話を聞く会だったのだが、どうせだったらお世話になっている周りの方もお呼びして、我々3人を主催者として講演会を開くのはどうかという話になった。これがそれから4年間毎年続いた「長時間セミナー」の始まりだ。

 初めての長時間セミナーは九段下の生命保険会社の会議室を使っておこなった。岩本さんの講演時間を2時間半、質疑応答の時間を30分として、合計3時間という時間をとった。お世話になっている方をお呼びして、30名ほどの方が集まってくれたと思う。

 僕自身、初めて岩本さんの講演を聞いて驚いたのが、非常にマクロな視点から講演が進んでいったことだった。もともと経済紙の編集長をやられていた方なので、よく考えれば当たり前といえば当たり前なのだが、いつも僕のミクロな相談に乗ってもらっていたので、そのギャップに驚きがあったのだ。前半はマクロな経済の話、後半はミクロな原則の話へと進んでいった。

 岩本さんが話した時間は3時間。つまり、用意していた質疑応答の時間は無くなってしまった。そもそも会場をお借りしていたのが3時間だったので、それに合わせて岩本さんが話を終わらせる形になってしまったのだ。これでは、岩本さんがすべてを話す「長時間セミナー」をうたっている意味がない。

 翌年の長時間セミナーは4時間の拡大版となった。赤坂見附にあるベンチャー企業の会議室をお借りした。岩本さんの話は4時間でも収まりきらず、4時間半。続けて参加者の懇親会もおこなったので、6時間半のイベントになった。それでも、岩本さんには時間が足りなかったわけだ。

 さらに翌年、2015年の「長時間セミナー」は、5時間を用意した。場所は市ヶ谷。これでも時間は収まりきらず、30分延長して5時間半。懇親会も含めて、7時間のイベントになった。

 そして2016年の「長時間セミナー」は極め付けとなった。5時間と懇親会、合計7時間を用意したが、講演時間が収まらず、なんと初めての別日設定となった。翌々週に「延長戦」が開催された。この延長戦も3時間。岩本さんは、合計8時間以上を語りつくしたわけだ。これで、「岩本さんが話したいことを全部話す」は実現されたのかもしれない。

 3時間、5時間も講演で話を聞くと、講演者の岩本さんだけではなく、参加者も知恵熱でヘトヘトになる。毎回、講演会が終了するたびに、参加者のヘトヘト具合を見ながら、片岡さんが嬉しそうな顔をしているのが印象的だった。

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