著者:石田 麻琴

データを確認して、「何かがおかしいぞ!?」と思う。【no.1106】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

 翌週、麻間(あさま)さんが定例の打ち合わせのため、おにぎり水産にやってきました。前回、麻間さんと打ち合わせをしてからの2週間で起こったこととして、七海さんと友花里さんは「わさび漬け笹かまぼこ」の躍進を説明しました。

「ついにそういうことが起こったんですね。いつかは起こるだろうと、心の中で期待はしていたのですが」

 七海さんと友花里さんの話を聞いて、麻間さんが言いました。「いつかは起こると思っていたんですか?」。七海さんは少し驚いて、麻間さんに聞き返しました。

「もちろん、『わさび漬け笹かまぼこ』が雑誌で取り上げられることを知っていたわけではありませんよ。ただ、おにぎり水産の事業に関するニュースがいつかどこかで取り上げられるだろうとは思っていました。それが販売している商品なのか、工場見学についてなのか、それともネットショップについてなのか、どれが取り上げられるかは予想できませんでしたが」

 七海さんは麻間さんの意図するところがわかりませんでした。「それって、どういうことなんですか?」。七海さんは麻間さんに重ねて聞きました。

「何がメディアに取り上げられるかは、私も七海さんも友花里さんもわからないんです。もしかしたら、今日、いま、テレビで『わさび漬け笹かまぼこ』がまた紹介されているかもしれません。大切なのは、自分たちが予測していなかったところからやってきたチャンスを『見逃さずに捕まえる』ことなんです。今回、七海さんと友花里さんは『わさび漬け笹かまぼこ』のチャンスを掴むことができました。でももし、メディアに取り上げられたのが『おにぎり水産笹かまぼこ工場見学』だったり、『おにぎり水産ネットショップ』だったりしたとしても、きっと同じようにチャンスを掴めていたと思いますよ」

 七海さんは麻間さんに褒められて少し照れました。顔が火照ったのが自分でもわかり、メモを取る振りをして下を向きました。

「七海さんと友花里さんは、なぜ、今回のチャンスを掴むことができたかと思いますか?そして、なぜ、『わさび漬け笹かまぼこ』ではなく、『おにぎり水産笹かまぼこ工場見学』だったり『おにぎり水産ネットショップ』だったりがメディアに取り上げられたとしても、チャンスが掴めるのだと思いますか?」

 今度は麻間さんがふたりに質問を投げかけました。友花里さんは七海さんの方をちらっと見ました。七海さんは「友花里、答えて」というふうに目配せをしました。

「きっと、毎日、数字を見ていたからだと思います。『わさび漬け笹かまぼこ』の異変に気付いたのは、『わさび漬け笹かまぼこ』が売れ始めた翌日のことでした。翌日、前日のデータを確認して、『何かがおかしいぞ!?』と思った。この『何かがおかしいぞ!?』をデータから感じ取れるかが大切だと思うんです。これを感じ取ることができれば、原因や要因に対してのアンテナが立ちます」

 友花里さんの意見に続けて、七海さんが言いました。

「もし毎日数字を取っていなかったとしたら、もし注文の内容を毎日確認していなかったとしたら、そこまで『わさび漬け笹かまぼこ』の売れ方に注意しなかったと思うんですよね。だから、雑誌に載っていたことを教えてくれたのは実店舗にこられたお客様でしたが、もしデータを見ていなかったら、お客様に教えてもらったことも、あまり重要に捉えなかった気がするんですよね」

 七海さんと友花里さんは、データのもうひとつの重要性に気づき始めていました。

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