ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「口コミ、人からの噂、これらをまとめて『ブランド』といいます」
鬼切社長は七海さんと友花里さんの顔を交互に見ながらいいました。友花里さんが質問をしました。
「『ブランド』という言葉を聞くと、ファッションブランドを思い浮かべてしまいます。ルイヴィトンとかシャネルとか。鬼切社長がおっしゃった『ブランド』というのは、いわゆるファッションブランドとか家電のブランドとか、そういうものとは違うんですよね?」
「友花里さん、そこがわかりづらいところだと思います。いわゆるファッションブランドや家電ブランドと違うということはありません。もう少し『ブランド』という言葉を広くもってみてください。ファッションブランドや家電ブランドは、この『ブランド』という言葉の丸の中に含まれると思ってもらえるといいかもしれません」
鬼切社長の話を聞いて、七海さんは首をかしげました。それを見て、鬼切社長は話を続けました。
「『ブランド』というものは、『自分たちから出す』ものではなく『お客様の中』にあるものです。例えば、『ブランドを立ち上げる』という言葉があります。これはファッションブランドなり家電ブランドなりのコンセプト、ネーミング、ロゴ等をつくり事業化するという意味になりますが、『新しいブランドを立ち上げたので、買ってください』といわれて、商品を買いますか?七海さん」
「いえ、買わないと思います」
「それはなぜですか?」
鬼切社長は七海さんに質問をしました。鬼切社長は何かの答えを待っているかのような目で、七海さんの方をみていました。
「うーん。だって、新しくできたブランドといってもよくわからないですからね。やっぱりヴィトンとかコーチとか、昔から知っているブランドを選択してしまうと思います」
「七海さんの言うとおりだと思います。私も、新しく立ち上げたばかりのブランドと昔から知っているブランドが並んでいたとしたら、新しいブランドに興味を持ったとしても、最終的には昔から知っているブランドで商品を購入すると思います。じゃあ、この裏にある選択の『理由』って何だと思いますか?」
七海さんは考えました。少し目線を上げて、おにぎり水産の会議室の天井をみながら、「昔から知っているブランドを選択する理由」を考えていました。
「うーん、何ですかね。例えば、ファッションブランドで考えたとしたら、デザインとかですかねぇ。いや、新しく立ち上げられたブランドでもデザインがいいってこともありえるわけか。でも、たとえデザインが良くても、新しいブランドってなんか触手が伸びない気がするんですよね。それよりも、どこか昔から知っているブランドの方が、デザインも良く見えてしまうというか。だから、やっぱり昔から知っているブランドの方を選択しちゃうんですよね。なんかまとまりがない回答ですいません。友花里、どう思う?」
友花里さんは七海さんからの突然の振りに戸惑いながらも、自分の意見をしっかりと答えました。
「いま七海が話したことと全く同じことを考えてしまいました。ブランドって『商品を良いと思わせる』魔術があるというかなんというか。ただ、できたばかりの知らないブランドって、いまいちその魔術がかかっていないように感じるんですよね。『ブランドを選択する理由』って何なんでしょうか・・」
友花里さんのこたえに鬼切社長は頷いて、ひとつ間を置いてからひとつの答えを話し出しました。
「ブランドとは、『信用』ではないでしょうか」
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