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一年後、今の実績をこえられているかで評価する。「前年同月」の大切さ。【no.1006】

 先日、相田みつを美術館館長の相田一人さん(相田みつをさんの息子さん)の講演を聞きにいきました。そこで知って驚いたことなんですが、相田みつをさんがいわゆる「世に出た」のは60歳のときだったんですね。

 今日、相田みつをさんを知らない方はあまりいないとは思うのですが、相田みつをさんの代表的な詩集「にんげんだもの」が発売されたとき、相田みつをさんは還暦だったというのです。相田みつをさんが亡くなったのは67歳だったということなので、生前、世の中から相田みつをさんが注目を浴びていたのは7年間だったんですね。

 60歳まで、ひたすら続けていたということに、素直に驚きました。自分だったら、60歳まで続けていられるかなと。

 相田みつをさんが亡くなった後、相田みつを美術館をつくった相田一人さん。相田みつを美術館をつくるまでに三越デパートで何度か相田みつを展を開催したらしいのです。東京、名古屋、大阪・・どこへ行っても満員のお客様。それが「相田みつを美術館を立ち上げても、何とかなるんじゃないか?」という『勘違い(相田一人さん表現)』に繋がっていったということでした。

 相田みつを美術館の開館初日。美術館に訪れたのは301人。これがそれから1年間破られない、美術館の1日の訪問者の記録になりました。相田みつを展にたくさんのお客様が訪れていたのは、三越デパートのブランドと集客力があったからこそだ、とここで気づいたわけなんですね。

 このお話を聞いて、他の話を思い出しました。ECMJの取締役で、元ダイヤモンド社社長の岩佐さんから伺った話です。「新刊雑誌の成功か失敗かは、1年後の数字が決める」という話でした。

 通常、新しい雑誌を企画するには2年間ほど時間がかかります。2年前に準備室をもうけて、新しい雑誌の対象顧客、コンセプト、内容と着実に積み重ねがされていきます。2年後、新しい雑誌が発行されます。創刊号は一種のお祭りみたいなもの(岩佐さん表現)ですから、予想していた以上に部数が伸びることも多くあります。

 しかし、困ったことに、創刊号をてっぺんとして、部数は下がっていきます。お祭りが終わって、現実がやってきます。ただ、雑誌の発行は続いていきます。ここからが勝負でしょ、という話です。

 ジワジワと減っていく部数をみながら、面白い企画、面白い特集を考える。どうやって雑誌を改善したら読者にもっと楽しんでもらえるかを考える。創刊号から1年間、試行錯誤を繰り返した結果、1年後に創刊号の部数を超えていればその雑誌は「成功」ということになります。創刊号はお祭り部数なわけですから、それを超えるのは簡単ではありません。でも、評価は一年後どうなっているか、「前年同月」が決める、と。

 この考え方からいうと、実は雑誌の創刊を準備していた2年間よりも、雑誌を創刊してからの1年間の方がより重要ということになります。一年後に創刊号を超えられるかは、創刊号からの一年間の努力に関わってくるわけです。もちろん、創刊までの準備で「トレンドの予測」をしていることも重要なポイントのひとつにはなると思いますが。

 創刊号から一年後、創刊号の部数をこえることができた雑誌は続いていく雑誌になります。そもそのはず、編集長以下のメンバーが「続けるための努力」をしてきたわけですから。創刊号の部数をこえられなかった雑誌は・・どうなるか聞いていません。今度どんな判断があるのかを聞いてみます。

 やっぱり大切なのは「前年同月」をこえ続けることなのかもしれませんね。

 おわり。

 

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