著者:石田 麻琴

高い利益率によって「広告費<利益」が実現するパターンが多いのはなぜか【no.0987】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

 麻間(あさま)さんからもらった宿題に、七海さんと友花里さんは途方にくれていました。

「友花里。麻間さんのいっていたことの意味ってわかる?」

 七海さんが聞きましたが、友花里さんはだまって首を横に振るだけでした。「こういうときは友花里だけが頼みなんだけどなぁ・・」。七海さんは言いました。

 麻間さんからもらった宿題はこういったものでした。

 広告を出稿して「広告費<利益」になるのはどんな事業者でも望んでいること。ただ「広告費=利益」であったり「広告費>利益」であったりするのが現実。しかし、一部では「広告費<利益」になる事業者もいる。「広告費<利益」になる場合、2つのパターンが考えられる。ひとつは広告費がおさえられたことによって「広告費<利益」が実現するパターン。もうひとつが高い利益率によって「広告費<利益」が実現するパターン。

 「広告費<利益」になるのはこの2つのパターンだが、基本的に後者の「高い利益率によって『広告費<利益』が実現するパターン」が多い。はたしてそれはなぜなのか?

 これまでのような、おにぎり水産ネットショップのWEBサイトの改善を挙げよう、という宿題ではありません。改善をスケジューリングしよう、というような宿題でもありません。はたまた、エクセルを作成して、施策の成果を検証しようという宿題でもありません。自分たちでアイデアを出したり、何かの作業をしたりすれば前に進める宿題ではありません。「マーケティング理論」の宿題です。七海さんと友花里さんは頭を抱えていました。

 1時間ほど、会議室であれこれと話し合った七海さんと友花里さんでしたが、麻間さんに報告できるような答えは出ませんでした。このままだと煮詰まる状況が続いてしまうということで、一度それぞれ持ち帰って、それぞれアイデアを整理して、また打ち合わせをすることにしました。

 3日後それぞれの業務が終わった17時過ぎ、七海さんと友花里さんはおにぎり水産の会議室に集まりました。この3日間のうちに思ったことをお互い話し合いましたが、なかなか理由としてパッとするものが出てきません。七海さんなど、これ以上考えてもわからない、と完全にあきらめモードに入ってしまいました。こうなると友花里さんは困ってしまいます。

 そんなとき、会議室のドアをノックする音が聞こえました。「はい。どうぞ」。友花里さんがそういうと、ドアがゆっくり半分ほど開き、丸顔のオジサンが会議室の中をのぞき込んできました。鬼切社長でした。「おっ。七海さんと友花里さんか。これはネットショップの会議だね。遅くまで頑張ってくれてるね」。鬼切社長はそういうと、ドアを開け、会議室の中に入ってきました。そして、七海さんの隣の席に腰かけました。

「どうかね。ネットショップの方は。少しずつ順調に売上が伸びていっているみたいじゃないか。麻間さんのいうことをよく聞いて、インターネットの小売りをもっともっと勉強していってくださいね。ふたりがおにぎり水産のエースなんですから」

 七海さんと友花里さんの顔を交互に見ながら、鬼切社長はいいました。七海さんは思い切って、鬼切社長に質問をしてみました。

「社長、すいません。ひとつお聞きしたいことがあって。先日、麻間さんからいただいた宿題のことなんですけれども」

 七海さんはこれまでのいきさつを鬼切社長に話しました。ひととおり話を聞いた後、鬼切社長は言いました。

「それを理解するのは、会社にとって非常に重要なことですね」

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