ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「そうですね。それまでのインターネット広告は、すべて『マーケティングのためのインターネット広告』ということになります」
麻間(あさま)さんは言いました。友花里さんは続けて麻間さんに質問をしました。
「まずAとBとCを比較して、そしてAを改善して改善して改善して、投資対効果の高い商品に仕上げていくってことだと思うんですけど、その厚くインターネット広告をかけることに踏み切る判断をするための数字ってあるんですか?」
「あります」
麻間さんは自信を持って言いました。「これは完全に数字の計算の話になりますが・・」そう前置きをして麻間さんは続けます。
「簡単にいえば、広告費を増やしていって、利益で相殺できるようになればレバレッジをかけ続けて良いという考え方です。2万円の広告費をかけて、商品Aの売上が4万円だったとします。商品Aの利益率が50%だったとしたら、2万円の広告費を2万円の利益で相殺できたことになりますよね。商品原価の他に、システム利用料や物流費、人件費などあると思いますが、最終的な利益が広告費と釣りあえば、釣り合うだけインターネット広告額を増やしていって良い、ということです」
「広告費と利益が相殺になってしまうなら、会社に利益が残らないから意味ないんじゃないですかね?」
七海さんが疑問に思ったことを言いました。
「そうですね。この場合、利益は広告費に食われるわけですから、この状態で広告費を増やして続けていったとしても、『広告からの利益』は残らないことになります。ここで重要なのは広告をかけたことで利益以外にふたつ得るものがある、ということなのですが、七海さんちょっと考えてみてください」
う~ん。七海さんが腕を組んで考え始めました。同じように友花里さんも腕を組んで考え込んでいます。
・・このままの状態で5分が経過しました。麻間さんは「時間切れです」と言いました。七海さんはその言葉を聞いて、内心ホッとしました。
「まずひとつは広告をかけることで『不特定多数のお客様に存在を知ってもらうことができる』ということですね。自分が知らないものって探さないじゃないですか。インターネットの検索というものは最たるもので、自分が知らない言葉は検索バーに打ち込まないですよね。広告をかけたときに商品を購入してもらえなかったとしても、頭の奥底に覚えていてもらえれば、後々ご利用してもらえるチャンスがあります。もうひとつ、どちらかというとこちらが重要なのですが、何かわかりますかね?」
七海さんと友花里さんは揃って麻間さんから目を逸らしました。麻間さんは「はぁ~」とちょっと大きめの溜息をついてから言いました。
「七海さん、友花里さん、少しは考えましょうよ。鬼切社長に告げ口をしますよ。正解は『顧客リスト』です。『広告費=利益』の状態だったとしても、商品を購入されたお客様の『顧客リスト』は会社に残ります。この『自社の商品に興味を持ってくれた方の情報』というのが非常に重要なわけですね。特に、おにぎり水産のような食品系のネットショップは、同じお店でリピートをするお客様も多いですから、『顧客リスト』を蓄積しておくことが大切です・・と、ここまでが判断の考え方のひとつです。次にふたつ目の考え方を説明します・・」
「え~!まだあるんですか~!」
七海さんと友花里さんは驚いて、揃ってイスからずっこけました。
つづきはこちら。