ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「判断をつくるには、計算が必要です」
麻間(あさま)さんが言いました。
「例えば、おにぎり水産のネットショップにAという商品があるとします。またBという商品があったとします。この2つの商品に対して、同じインターネット広告を条件でかけたらどうなるか、という実験です。AとB、両方の商品について1,000人のアクセスが増えたとして、両方とも同じように転換率が変化するかといえば、そうではないんですね。どういうことが考えられると思いますか?」
麻間さんが友花里さんの方をみました。友花里さんは言いました。
「もしAとBの商品で、Aの方が新規のお客様にとってキャッチーな商品だったとしたら、Bのコンバージョンが下がっても、Aのコンバージョンはあまり下がらない、なんてことがあるかもしれません」
「いいですね。いま友花里さんがおっしゃったことはあくまで仮説のひとつかもしれませんが、AとBの両方に同じ条件のインターネット広告をかけたことによって感じたことだと思います。Aだけにインターネット広告をかけたり、Bだけ露出を強化したりしたところで、果たして良いのか悪いのか、それはわからないですからね」
七海さんが意見を出しました。
「こういう可能性もないですかね。AとBにかけたインターネット広告が、どちらかというとAを買うお客様に向いていた。だからBに比べてAのコンバージョンは下がらなかった、みたいな。友花里と一緒に実店舗をやっていたとき、お爺ちゃんお婆ちゃんの笹かまぼこ工場見学ツアーと小学生の笹かまぼこ工場社会科見学ではお土産で買っていく商品が全然違うなって、昔から思ってたんですよ」
「七海さんの意見もいいですね。友花里さんがいうとおり、商品としてBよりもAの方が新規のお客様が買いやすいと捉える考え方もあります。そして、七海さんのいうとおり、今回かけたインターネット広告に関しては、Bを好むよりAを好むお客様の方が多かったのではないか、という考え方もあります」
七海さんが少ししょんぼりした顔をしました。
「となると、仮説が無限に出てきてしまいますね。何が何だかわからなくなってしまいそうです・・」
「はい。七海さんのいうとおりです。だからネットショップの運営では小さなチャレンジをたくさんおこなって、仮説の検証をしながら的を絞っていかなければいけないんですね。インターネット広告かけるとしても、いきなり100万円の広告を商品Aだけにかけるのはギャンブルです。まずはAに2万円の広告をかけて、Bに2万円の広告をかけて、Cに2万円の広告をかける。そして、各々の成果をデータで比較します」
「それで、一番結果の良かったAに94万円分のインターネット広告をかける、ってことですよね?」
友花里さんが言いました。
「いや、ちょっと違うんですよ。Aに厚めのインターネット広告をかける前にやることがあります。Aの商品ページを改善して、より成果のデータが上がるかを検証したいんですね。まずAとBとCでどの商品が新規のお客様にうけるかをデータで判断する。Aの商品ページを改善して再び広告をかける。Aの商品ページをさらに改善して再び広告をかける。そんなイメージです」
友花里さんがすぐに質問をしました。
「ということは、広告で一気にレバレッジをかけるのは、一番最後、ということですか?」
「そうですね。それまでのインターネット広告は、すべて『マーケティングのためのインターネット広告』ということになります」
つづきはこちら。