ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
ありとあらゆるページからリンクが張られている商品ページBは、必ずアクセス数が多くなるのか、麻間(あさま)さんの質問にこたえた七海さんでしたが、麻間さんの返答は意外なものでした。
必ずしも商品ページBのアクセス数は「すごく増える」わけではない、というのです。それはネットショップならではの構造だと麻間さんは解説をしました。
ネットショップではリンクが張られている商品ページBに飛ぶ前、お客様は「商品ページBに飛ぶか否か」を検討しています。それは理論的に検討する場合もあるかもしれませんが、ほとんどの場合が直観的なものです。トップページやカテゴリページに並んでいるいくつかの画像から、直観的に「この商品が見たい!」というものを探し、商品ページへのリンクをクリックしているのです。
「なので、ネットショップでは、商品ページBのアクセス数がそのまま『商品Bを見たお客様』になっていない可能性があります。もしかしたら、商品ページBに飛ぶためのリンクの手前で止まっていたかもしれないわけです。となると、問題は商品ページBの改善だけではなく、商品ページBを選択してもらうための改善ということにもなります」
七海さんと友花里さんは、「なるほど」と感心しました。いままで、商品Bを知ってもらうために商品Bのページばかりの改善を考えてきましたが、そもそも商品ページBを見てもらうための改善も業務の中に入れていかなければいけないと思いました。トップページでもなく、商品ページでもない。商品が並んでいる、実店舗でいうところの「商品棚」としての役割として、カテゴリページの重要さに気がつきました。
「七海さん、友花里さん、ここすごく重要なのでよく覚えておいてもらいたいところなのですが、ネットショップってすごく便利だと思うでしょ?家から出なくても、パソコンの前でいろんなショップやいろんな商品を見ることができて」
麻間さんは唐突に不思議なことをいいました。七海さんと友花里さんは、ポカンとしながら「はい。便利だと思います。だから私たちもネットショップに取り組んでいますし」、麻間さんと七海さん、友花里さんお互いの顔をみながらそうこたえました。
「ただ、実をいうとネットショップが便利なのは、ショップの比較が簡単だからなんです。たとえば、実店舗だったら、家から近くの実店舗で商品を見て、隣町の実店舗で商品を見て、場合によっては電車に乗って大きな街に出て商品を見て、というように移動の時間がかかるわけじゃないですか。このストレスが全くないところが、ネットショップの良いところです。でも、その後が不便なんです。わかりますか?」
麻間さんが七海さんと友花里さんを交互に見ました。ふたりとも麻間さんから若干目を逸らすような感じだったので、麻間さんは構わず続けました。
「ネットショップは、『商品の比較』が不便なんです。ショップ同士を比較するのにはすごく便利なのですが、商品同士を比較するのがすごく不便。だって、極端な話ですが、すべての商品を見るためにはすべての商品ページを開かなければいけないわけでしょう。『笹かまオニギリ』だったら100ページ以上です。他のサイトだったら1万ページ以上のところもたくさんあります」
「実店舗だったら、右から左に歩いていくだけで、なんとなく『この商品面白い!』ってものが見つかりますからね。新しい発見って、たしかに実店舗の方が多い気がします」
友花里さんがいいました。
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