著者:石田 麻琴

実店舗がポイントカードを採用することの価値は「顧客データ」にアリ【no.0908】

 「●●円以上のお買い物でないと、ポイントがつかないんです・・」

 ポイントカードを採用しているショップで、こういうお店があると思います。紙にスタンプを押していく式の旧来のポイントカードではなく、POSレジに通す型のポイントカードを採用している場合、とてももったいないことです。たとえお客様が100円しか利用しなかったとしてもポイントを付与し、ポイントカードを出してもらえるようにした方が良いです。

 ポイントカードというのは、何かといえば「顧客ID」です。この「顧客ID」の中に、お客様の名前や住所、電話番号が必ずしも入力されているわけではないですが、「顧客ID=12345」のお客様がどんな購買行動をしたかという履歴は蓄積されていきます。「顧客ID=石田麻琴」ではないですが、「顧客ID=12345」として固有化されます。

 「顧客ID=12345」が今回の来店で何を買ったのか。前回の来店では何を買ったのか。前々回の来店では何を買ったのか。今回は何時に商品を購入したか。前回は何時だったか。いずれの来店にも共通する購買商品は何なのか。購買のパターンはどこかのタイミングで変化したのか。などをポイントカードのデータから読み取るため、ポイントカードにポイントを付与するのです。いわば、ポイントというのは「データを取得するための撒き餌」みたいなものです。表現が悪くてスイマセン。

 なので、すべての購買行動において漏れなくポイントカードに履歴を残せるような仕組みを整えることが大切です。できることならば、ショップに来店して一切の購買行動をおこさなかったとしても、ポイントカードに「購買行動をおこさなかった」という履歴が残るならなお良いでしょう。

 以前(今もやってるのかな?)ヤマダ電機が「来店ポイント」を付与していました。ヤマダ電機に来店して専用の機会にポイントカードを通すと「来店ポイント」が付与されるという仕組みです。たとえ、この後、お客様にこの日の購買行動がなかったとしても、ヤマダ電機のデータベースには「顧客ID=12345が○月×日▲▲時に来店」という履歴が残るわけです。

 このヤマダ電機の「来店ポイント」の考え方は、「単に来店ポイントをもらいにくるだけのお客様」のデータを大量に増やしてしまう可能性もあります。まあ、それはそれで良いのでしょう。「来店ポイント目当て」だったとしても、店舗との接触頻度は購買行動の可能性を上げることになるでしょうから。そのあたりの検証も含め、「購買行動だけのデータを取得する」のではなく「来店のデータも取得する」仕組みをとっているのだと考えられます。

 ネットショップでは顧客データ、購買行動データの取得を比較的簡単におこなうことができます。しかし、多くのリアルショップ(つまり実店舗)ではPOSレジに残るデータ以外を取ることができません。それを打開するのがポイントカードの役割です。ポイントカードがなければ、購買行動をおこなったお客様を特定することなく、購買履歴だけがPOSデータに積み重なっていくことになります。ネットとは圧倒的にデータ分析の差がついてしまうわけです。

 誰がいつどこでどんな商品を購入したかがわかる。来店したけれど、購買行動なく店舗を離れてしまったお客様がわかる。インターネットと同じく、リアルの世界のデジタル化が始まっています。「顧客ID」をどう持たせるか。「リアルとネット」の顧客IDをいかに連動させるか。デジタル時代のマーケティングの最も大きな課題です。

 おわり。