著者:石田 麻琴

自分たちの「強み」がわからなかったって心配はいらないですよ。【no.0894】

 「強み」という言葉・・なんと難しい言葉でしょうか。

 「うちの強みって●●ですよ!」とはっきり言う方もいます。「うちの強みっていったい何なんだろう?」「うちも何かしら強みをつくらなきゃ!」という方もいます。どちらかというと、後者の「強みがないんですよね~」という方のほうが多い気がします。

 はたして、「強み」とは何なのでしょうか?というのが今回のテーマです。

 最初にバッサリと言ってしまうと、「誰しもに勝っている『強み』」など普通に考えてありえません。日本中にたくさんの事業者がいて、世界中にもたくさんの事業者がいて、その中で飛び抜けた「強み」を持つことなど不可能です。今日も日本のどこか、世界のどこかであなたの「強み」を奪おうとする事業者がいる、ということになります。「誰しもに勝っている」なんてのは諦めましょう。

 「強み」がないとお客様に選ばれないのではないか。事業というのは必ず「強み」がないといけないのではないか。しかし、うちの会社には「強み」がない、どうしよう!そんな「強み」強迫観念は持たなくて大丈夫です。

 ひとつに「強み」とは、自分たちが「こうありたい!」と思うもの。そして「こうあるんだ!」という決意。それだけで問題ありません。

 以前、お話しを聞いたモツ鍋屋さんが、「うちって『強み』ないんですよね」と言っていました。でも、モツ鍋の「強み」って「スープが美味い」とか「モツが美味い」とかしかないんですよね。そのお店さんはモツを全国に卸している食肉加工業者で、とにかく「モツが美味い」ことが特徴。「『強み』がない。『強み』がない」と言っていたので、「『とにかくモツが美味い』でいいんじゃないですかね?」とアドバイスさせてもらいました。

 世の中に「モツが美味い」モツ鍋屋さんはたくさんあるでしょう。「モツにこだわりのある」モツ鍋屋さんもたくさんあると思います。ただ、自分たちがとにかく「モツの美味さ」にこだわりたいなら、「うちの『強み』は、『とにかくモツが美味い』こと」で良いと思います。

 もうひとつに「強み」とは、お客様が教えてくれるもの。一見すると同じように見える同業他社、競合のお店の中から自分たちのことを選んでくれている理由です。

 自分たちが「我々の『強み』はこうだ!」と思い、それを打ち出していたとしても、お客様は他の理由でサービスを選択してくれている場合があります。例えば、単に近かったから。仙台市の地場のWEB制作会社だったから。いいじゃないですか。「仙台市の地場だから」は、単にそれだけの理由と思われるかもしれませんが、お客様の十分な選択理由です。「仙台市の地場である」ことをもっとアピールすることで、競合他社とは異なる「強み」に成長する可能性があります。

 ネットショップに掲載している店長さんの顔が優しそうだったから。いいじゃないですか。もっと店長さんのキャラクターを全面に出していきましょう。創業70年で信用がおけそうだったから。いいじゃないですか。もっと老舗であることをアピールしていきましょう。対応のメールが一番丁寧だったから。いいじゃないですか。もっとお客様に安心して仕事を依頼いただくにはどうすればいいか、掘り下げましょう。

 ちょっとしたことでも、それは大きな「強み」です。思い切って、お客様に「なんでうちのショップを利用してくれたんですか?」と聞いてみましょう。自分たちが思っていなかった回答が返ってくるかもしれませんよ。

 自分たちの決意としての「強み」と、お客様が教えてくれる「強み」。どちらを強化していっても構いません。セオリーからすると「お客様が教えてくれる~」を強化していく方がベターですが、すべては「突破力」です。自分たちの決意が強ければ、「強み」として突破できます。最も嬉しいパターンとしては、「自分たちの決意=お客様の教えてくれる~」になることですね。

 将来的な成長曲線は、次第に一致していく。これもまたセオリーです。

 おわり。