著者:石田 麻琴

「違い」は「非効率」から生まれる。「非効率」から「効率」を見出せば「強み」になる【no.0432】

「違い」は「非効率」から生まれる

 この言葉は事業の核心をついているのではないでしょうか。

 「違い」という言葉は、「差別性」という言葉とも置き換えられます。「非効率」という言葉は、「地味」とか「手間」とか「面倒」とか、そんな言葉とも置き換えることができます。「他よりも汗を流せるか」とも同義です。

 「効率」は、必ず標準化していきます。どんな優秀なプログラマーがいたとしても、どんな素晴らしいエンジニアがいたとしても、その人間が「稀代の天才」でない限り、システムが表に出た瞬間、どこかの誰かが真似をします。そして、真似されます。

 「最初にやる」のは、もちろん重要です。しかし、最初にやって頭ひとつ抜け出せられたとしても、次々と一番を目指す者が追いかけてきます。競合が現れることによって市場が黎明期から成長期に入ります。「需要>供給」のフェイズであれば、参入する全員が成長する状態が続きますが、市場は必ず「需要<供給」へと傾いていくのです。

「みんな」やると「差別性」はなくなっていく

 「効率」は、必ず標準化の方向に進んでいきます。自分達が苦労をして構築したシステムも、次の世代には効率的なツールとして提供されます。効率的なことは「みんな」やります。「みんな」やるということは、それがいかに効率的であったとしても、そこに「差別性」がなくなるということです。みんなが電卓を使い、みんなが電子レンジを使うように、です。

 事業の成長期においては、人と時間とお金を上手く回し、売上と利益を最大化するために「効率」を求めるのが当然です。しかし、事業の成熟期と衰退期において、次の成長曲線にポジションを変えるためには、企業として「非効率」な部分をどれくらいもっているかが重要です。もちろん、黎明期と成長期から、「非効率」を持つ「癖」をつけておいた方が良いと思います。

 「非効率」こそ、ビジネスを成長させるための材料になります。競合他社がやりたがらない、「地味で手間で面倒な」ことをやる。お客様により良いサービスを提供したいならば、それが現状のシステムでは効率化できない「非効率」なことでも実践をする。「非効率」を実践し続けていく中で、そこに「効率」の方法を見出すことができれば、それが企業の次の「強み」になっていきます。

「地味で手間で面倒な」アイデアの後回しは衰退の兆候

 「違い」は「非効率」から生まれ、「効率」は「非効率」から生まれていきます。当たり前です。「非効率」を「もっと時間と労力をかけずにできないか?」というところから、「効率」の思考が始まっているわけですから。「非効率」があるからこそ、事業は「差別化」され、成長し続けていきます。逆に言えば、事業のすべてが「効率化」した時点で、衰退が始まっている、ということです。

 もし、社内で商品やサービスの企画・改善のミーティングを行う中で、たくさん出てきたアイデアのうち、効率的にスタートできる施策ばかりを選択・実行し、「地味で手間で面倒な」アイデアをないがしろにしているならば、それは衰退の兆候です。なぜなら、効率的にスタートできる施策は、競合他社にもできる施策ですから、遅かれ早かれ追手が押し寄せることになります。

 地味で、手間で、面倒で、現状の社内のシステムでは解決できないのだけれど、お客様が求めているだろうサービス。これを選択・実行し続けられるなら、まだまだ成長の芽があります。そして「非効率」を続けているうちに、必ず「効率」の策が見えてくるはずです。これは、「非効率」に飛び込まない人間には見えてこない世界です。「非効率」を決して怖がらないことです。

 みなさんの周りにも、「なんでこんなに非効率なことをやっているのだろう?」という会社、ありませんか。実はそんな会社が「本当に成長し続ける」会社なのかもしれませんよ。