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「越境EC=海外展開」のヒントはいつも手元にある。後編【no.0786】

 「越境EC」の考え方・取り組み方について、後編では中小ネットショップ(企業)の具体的な事例について紹介していきます。(前回はこちら

 キッチン用品を開発、製造しているメーカーの例です。この会社はこれまで卸が中心でした。しかし、時代の流れとしてネットの活用、直販化にも乗り出そうということで自社でもEコマースサイトも運営されています。

 海外からの注文について、インターネットを通じての個人からの注文が主と考えていましたが、現実は違いました。中国でおこなっているメーカーとしての催事から商品を知り、ネットショップで注文する「法人」の顧客から注文がきているのです。

 これからの海外展開としては、さらにリアルの催事の回数を増やして商品の認知を高めてもらい、ネットショップで商品を購入してもらうという流れを加速したいと考えられています。

 文具の実店舗をやられている小売りの例です。Yahoo!ショッピングにネットショップを出店しており、そこに定期的に中国のお客様から注文がくるようになりました。1度に40万円、50万円といった高額の購入です。毎回、同じような商品を購入されます。

 思い切って翻訳ソフトを使ってメールを書き、お客様に伺うと中国のスーパーで文具を販売しているとのこと。スーパーの利用者からのウケも良く、リピートが続いているとのことです。

 今後は中国人のインターンを雇用して中国語のネットショップを立ち上げたり、現地に営業代行を依頼することを検討されています。「中国の方が好む文具」のニーズがわかっているわけですから、後はお客様を2件3件と地道に増やしていくだけです。

 最後に、国内のとある広告代理店です。この会社の経営者は中国の仕入先とのパイプを持ち、国内の商品のブローカーのような仕事をしています。一回の仕入れは2,000万円から3,000万円ほど。中小企業としてはかなりの金額です。

 この会社の役割としては、中国の仕入先が希望する商品を希望するだけ集めてくること。また、日本のトレンドを中国側に伝え、新しい商品を提案することです。

 現在はリアルのアポイントや電話で注文・決済がおこなわれていますが、今後はEコマースを活用してインターネットで注文・決済ができる仕組みを整えていく方向を考えられています。

 さて、この3つの事例を読んで何を感じるでしょうか。一般的な「インターネットで新規の個人にアクセスしてもらい、商品を購入してもらう」という「越境EC」のイメージとは随分と異なります。ただ、ここで押さえておきたいポイントは「いま商品を買ってくれるお客様がいる」というところです。

 この「いま商品を買ってくれるお客様がいる」ことが最も大切です。見た目の良い、他言語対応の「越境EC」サイトを構築しなくても、海外からのお客様と注文を得ている事業者がいるわけです。ですから本質的にいえば、「越境EC」に取り組むから海外展開に成功するわけではない、ということです。あくまで日々のカイゼン活動が「越境EC」に取り組ませていきます。

 またこの3つの事例からも、海外からの注文で多いのは中国、海外からの注文の軸になるのは「個人」ではなく「法人」であるようです。現状、「インターネットで新規の個人にアクセスしてもらい、商品を購入してもらう」という日本のネットショップのようなことを海外の人々に求めるのは難しいです。逆に自分の立場から考えてみれば明白なことでしょう。

 「越境EC=海外展開」を考えるとき、「新しいことをやろう」という方向にいくのではなく、まずは「自分たちの手元」をみるとヒントが隠されているのではないでしょうか。

 おわり。

 

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