ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。
(前回はこちら)
「来店したけど買わなかったお客様の数が、わかる・・?」
鬼切社長は、猪井氏(いいし)先生が言った言葉を、そっくりそのまま、厳密に言うと「お客さん」を「お客様」に変えて返答をしました。
「そうじゃ、ネットショップに来店したけれど、何にも買わないで帰っていったお客さんの数がわかるってことじゃ。ワシが言ってる意味、わからんか?」
「わかりますけど・・」。鬼切社長は、考え込んでしまいました。なぜ、「来店したけど買わなかったお客様の数」がわかる必要があるのか、その意味が掴めきれていなかったのでした。
「猪井氏先生。おにぎり水産も実店舗やっていますけど、お客様が購入してくれないと、お店の売上にはならないわけじゃないですか。うちの実店舗の場合は、工場見学のお土産で買っていかれる方がほとんどなので、『来店したけど買わないお客様』というのがほとんどいないんですよね。そもそも、お客様って、『商品を買いたい』から来店しているんじゃないんですか?」
「鬼切はん。そうとも言えんじゃろうに。例えば、鬼切はんの家の近くにコンビニあるじゃろう。もしかしたら鬼切はんは、腹が減ったとか、喉が渇いたとか、何かを買う必要のあるときにしかコンビニに行かないのかもしれんけども、ただマンガを立ち読みするだけとか、なんか新しいお菓子ないかな、みたいな感じでコンビニに来る人もおるじゃろう」
「まあ、確かに、私は必要がないとコンビニには行かない人間ですが、中には特に用事がなかったり、目的が曖昧だったりするけどコンビニに行く人はいるでしょうね。でも、そういう方がもし何も買わずにコンビニから出ていってしまっても、コンビニには特に影響はないんじゃないですか?元々、買う気があったわけではないお客様なのですから」
「はぁ・・浅いのぅ」。猪井氏先生は、鬼切社長に見せつけるように、わざと大きなアクションでため息をつきました。そして、「浅いのぅ」ともう一度余計なひと言を繰り返しました。
「鬼切はん。お店に来店して、買ってくれた人はそりゃいいんじゃ。それはおにぎり水産の実店舗でも、これから始めるネットショップでも同じじゃろうに。買ってくれたお客さんの数と、買ってくれた金額は、POSを使えばデータで出てくる。でも、実店舗じゃあ、『来店したけど買わなかったお客さん』の数は簡単には計算できない。ネットショップでは計算ができる、と。じゃあ、その情報が何で必要かってそこの話なんじゃけども、鬼切はん、もし鬼切はんがコンビニに行って、何にも買わずに出ていったとすれば、どんな理由があると思う?」
「うーん。そうですねぇ。お腹が減って、弁当か何かを買いにいったときに、もし弁当の棚が空っぽだったとしたら、コンビニから買わずに出ていくでしょうね。飲み物は棚が空っぽということはまずないでしょうから、食べ物がなかったときですかねぇ。まあ、カップラーメンとかで済ませちゃったりするんですけどね。はっはっは」
鬼切社長は笑いましたが、猪井氏先生は笑いませんでした。「真面目な話をしているときに何を笑ろうとるんじゃ」という雰囲気で、鬼切社長の方をギロリと見ました。
「まあ、鬼切はんみたいに、メシにこだわりない人もいるんじゃろうけどな、みんながみんなそうじゃないじゃろう。カップラーメンをあまり食べない人もいるじゃろうし、棚に弁当が残っていても好みのものじゃなければ他のコンビニに行ってしまう人もおるじゃろう。『来店したけど買わなかったお客さん』には、それはそれで『理由』があるってこっちゃ。でもな、鬼切はん、もしも、好みの弁当が残っていないから他のコンビニに行ってしまったお客さんに、好みの弁当を補充しておいてあげたら、どうなると思う?」
「いや、そりゃ買うでしょう」。鬼切社長は、「このジジイ、何でこんな当たり前のこと聞いちゃってんの?」という目で、猪井氏先生に反撃をしました。
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