ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「『最初に出会った方』が事業の成功を大きく左右しそうですよね」
鬼切社長が言ったその言葉は、猪井氏(いいし)先生と麻間(あさま)さんへの感謝の言葉を意味していました。麻間さんはその言葉を聞いて、とても温かい気持ちになりました。それと同時に、麻間さんは頭の中で、初めて猪井氏先生と出会った日のことを思い出していました。
「最初に出会った方」が事業の成功を大きく左右する。麻間さんにとっての「最初に出会った方」は猪井氏先生でした。
麻間さんと猪井氏先生の出会いは、麻間さんがまだ大学に通っていた頃のことでした。友人に誘われた、学内の就職セミナーに出席したところ、ちょうどその日の講師が猪井氏先生だったのです。猪井氏先生の話に衝撃を受けた麻間さんは、セミナー後に猪井氏先生に挨拶をし、猪井氏先生の名刺をもらいました。
それから数年、猪井氏先生に連絡することもなく会うこともなく、そのまま就職し、仕事をしていた麻間さんでしたが、職場との仕事の考え方に対するズレを感じるようになりました。その時、ふと思い浮かんだのが就職セミナーで話していた猪井氏先生でした。
麻間さんは引き出しの奥から猪井氏先生の名刺を探し出し、相談のアポイントのメールを送ることにしました。「猪井氏先生は覚えていらっしゃらないかと思いますが、大学時代にセミナーを聴講させていただいた麻間という者です。一度お会いして、お話を伺いたい」と。
猪井氏先生からの返答はすぐに戻ってきました。しかも、メールでの返信ではなく、メールに書いた携帯電話に電話がかかってきました。「麻間くんに時間があれば、ぜひ一度お茶でもしませんか」。麻間さんは、猪井氏先生の声が大学時代のセミナーで聞いたときよりも、若干優しくなったような気がしました。
猪井氏先生は麻間さんを大きく包み込んでくれました。麻間さんが話したいことを話したいだけ聞いてくれました。何時間も何時間も、話を聞いてくれました。月に1度お茶をするようなことが、何か月が続いて、最終的に麻間さんは猪井氏先生の事務所で働くことになったのです。
あの時、最初に仕事の考え方を伺ったのが猪井氏先生でなかったら、自分は今頃どうなっていただろうか。麻間さんは、そんなことに思いを巡らせていました。そして鬼切社長に言いました。
「鬼切社長、ありがとうございます。そうですね。鬼切社長も、そして私もそうですが、最初に出会った方が猪井氏先生で本当にラッキーだったと思います。おっしゃる通り、『最初に出会った方』が事業の成功を大きく左右すると私も思います。最初は誰しも『判断基準』がないですからね。最初に出会った方の話は、しっかり聞くはずです。その方の理屈や考え方が、セオリーに対してズレていたら非常に問題ですね。特に、ネットショップなどのインターネットビジネスの場合は、原理原則がズレているとまず成功はありえないですから。しかし、『最初にどんな方と出会えるか』、こればっかりは運としか言い様がありません。別の表現をすれば『縁』ですね」
麻間さんの話を聞きながら、鬼切社長も猪井氏先生のことや二子社長のことを考えていました。そして、工場の新しい設備を提案してくれたシステム会社、より味の良い素材を提案してくれた仕入先、社内のキーになる人財を紹介してくれた人材紹介会社のことを思い出していました。どれも知人の紹介や、たまたまの「運」で知り合った方でした。鬼切社長は、本当に出会いとは「縁」だなと思いました。
そう考えれば、ネットショップを出店していたショッピングモールの担当者との出会いは「運」が悪かったな、と思い、鬼切社長は苦笑しました。
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