ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
猪井氏(いいし)先生に宿題を突き返された鬼切社長は、途方にくれていました。「まだ、宿題の提出日まで10日間ほどある。これ5つをそのまま寝かせて、10日後の金曜日に猪井氏先生に提出すればいいのだろうか・・」。鬼切社長は、そんなことを考えながら、おにぎり水産の敷地内を散歩していました。
その日は水曜日でした。おにぎり水産は、週末に工場見学に来られるお客様がいるので、水曜日が休日になっています。とはいえ、落ち着いて仕事をしたいスタッフや、仕事が溜まってしまったスタッフが休日出勤をすることもありました。また、おにぎり水産の敷地は広く、事務所・工場・実店舗だけではなく、スタッフ用の駐車場や、ちょっとした芝生のスペースも設けられていました。そのため、休日に家族で散歩に訪れるスタッフもいたのです。ちょうど、今日も、工場のスタッフが何組かお弁当を持参して家族を連れてきていました。
「社長、お疲れ様です!」
工場のスタッフである宮島さんが、鬼切社長に声をかけてきました。宮島さんは、40代前半のスタッフで、おにぎり水産でもバリバリ働いている世代のひとりです。奥さんと高校生になったばかりの息子のヒロトくんと3人でおにぎり水産に訪れていました。
「おー、宮島くん。今日は奥さんとヒロトくんも一緒だね。息子さんは大きくなったねぇ。もう高校生ですか。そうですか。早いねぇ。この前、宮島くんが『子どもができた!』って言ってきた気がするよ」
「ははは。そうですね。早いですね~。もうヒロトも高校生ですからね~。コイツ、高校卒業したら、おにぎり水産で働きたいって言っているんですよ。昔から遊びにきていますからね。まぁー、でも、工場の仕事は合わないだろうなぁー」
それを聞いているヒロトくんは、スマートフォンを使って、インターネットをしているようです。
「コイツらの世代って、もうこれが普通なんですよねー。スマートフォンとかタブレットとか、すぐ使えるようになっちゃうんですよ。私はサッパリですがね。こういうのを見ていると、工場の仕事は無理だろうなーって思いますよ。地元で一緒に仕事できたらいいんですけどねぇ」
宮島さんの話を聞いていた鬼切社長は「なるほど」と思いました。「宮島くん、ヒロトくんと一緒に仕事ができるといいね。きっといいと思う。私もそうできるように頑張るよ!」。そう宮島さんの家族に向かって言い、すぐに社長室に戻ってきました。
そうか、そうか。中学生や高校生など、今の若い子はインターネットに強いのか。もし、おにぎり水産のネットショップを新しい売上の柱として事業化できれば、宮島くんとヒロトくんに一緒に働いてもらえることができるかもしれない。インターネット事業を魅力として、若い子の採用も増えるかもしれない。そうすれば、笹かまぼこという商材や、工場の仕事、実店舗の仕事に興味を持ってもらうきっかけにもなる。ネットショップに、「売上を得る」ということ以外にも、目的や効果を見出すことができるかもしれない。
鬼切社長は、そう考えました。そしてまず、6つ目の項目をホワイトボードに書き出しました。
・Eコマース事業を通じて、若い人材を登用し、新しい雇用を生み出す。
この一文を書くと、鬼切社長は、すぐに「人材」という文字の上に二重線を入れました。そして、その下に「人財」と書き直しました。それは、前回の打ち合わせで、猪井氏先生が、「これからは、人を『材』として使うのではなく、人が『財』になる時代が来る」というように言っていたからでした。その意図は、正直まだ、鬼切社長はわからなかったのですが、まずは「人財」という表現を使うところから徹底して始めていこうと考えたのでした。
・Eコマース事業を通じて、若い人財を登用し、新しい雇用を生み出す。
鬼切社長の頭の中には、若い「人財」として、ネットショップを運営しているヒロトくんの姿が浮かんでいました。
つづきはこちら。