ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

ECマーケティングの内製化とは『判断の内製化』3【no.2179】

(前回【no.2177】のつづき)

 前回のコラムでは、ECマーケティングの「内製化」とは「業務の内製化」ではなく、あくまで「判断の内製化」であること、その理由はデジタルのマーケティングは「自社のマーケティングにデジタルテクノロジーを組み合わせる」ものであること、「判断の内製化」が多くの企業で上手く進まない要因として事業者の経営者サイドの「世代」が影響を与えるケースが多いこと、などを紹介しました。

 では、ECマーケティングの「判断の内製化」を実現するため、どういった取り組みをすることがポイントになるのでしょうか。

*デジタルに取り組む組織がないのが普通

 前々回前回のコラムでも書いたとおり、多くの会社でECマーケティングの「判断の内製化」ができない原因は、自社内に判断をする機能・知識・ノウハウがないからに他なりません。

 ECのマーケティングに取り組む多くの会社は、もともと母体となる既存のビジネスを展開し、その上でECのマーケティングに「新しい事業の柱」「新しい販売チャネル」を求めています。これがEC事業者の90%以上です。これらの会社は、既存のビジネスを回すための組織・人材が充実している一方、デジタルのマーケティングに取り組む組織・人材がないのが通常です。

 デジタルやインターネット、ECという概念自体がこの四半世紀の概念。またその対応が一般的になってから15年程度ですから、対応する組織・人材が社内にないのは仕方ありません。当然、組織は「ひとりの人材」からスタートするわけですから、極端にいえば「判断の内製化」をおこなう「ひとりの人材」がいれば、判断の内製化をおこなうことができるようになります。問題は、その「ひとり」をどうするかです。

*採用はかなりハードルが高い

 ひとつの方法は「採用」です。判断の内製化をおこなうために、デジタルの経験と知識のある人材に入社してもらうという手があります。ただ、これは多くの会社にとってハードルが高いのが現実です。

 その理由をいくつかご紹介します。

 まず、デジタルのマーケティングを「ソリューション側の立ち位置」ではなく、「事業者の立ち位置」として経験している人が非常に少ないことです。システム開発や広告代理店、ホームページ制作会社の経験者は採用の市場にも多くなってきたものの、事業者としてECマーケティングを展開していた、つまり「判断」を経験していた側の人は少ないのです。

 また、事業者側として「判断の内製化」を経験していたとしても、転職先として必ずしも「事業者側」を選択するかは別の問題です。これまでの私の経験上だと、新卒や第二新卒の段階で事業者側のEC担当を経験した人間は、大手のソリューション会社(コンサル含む)に転職するケースが多いと感じています。それは「EC担当」という仕事がまだまだ世の中から高い評価をされていない現実が背景あると考えられます。(この話は重要なのでまたいつか書きます)

 そして最後に、もしECマーケティング担当として「判断」を経験した人間が求職をしていたとしても、「はたしてあなたの会社を選ぶのか」この問題があります。特に年齢が20代、30代の人間であれば、自身のキャリアアップを考えたときに「いち事業会社」の「EC担当」を選ぶのか、です。担当者の「採用」を希望するときの本質的な課題はここになります。

*圧倒的に現実的なのは「育成」

 そう考えると、ECマーケティングの「判断の内製化」を実現するためには、いま会社で働いてくれているスタッフ・メンバーを「判断の内製化」ができる人材に育てることが圧倒的に現実的な取り組みになります。つまり、「育成」です。

 自社の歴史や経営理念、自社の商品やサービスのこだわりや想いを十分に知っている人材を「判断の内製化」ができる人材に育てていくのです。これが自社の「判断の内製化」を実現していくための第一歩です。

 つづく。

カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 4.Eコマースの人財育成, 6.Eコマースの悩み

ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから