ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

具体事例:データ・情報から仮説と行動をつくる。後編【no.2158】

(no.2157のつづきです)

 ネットショップのまわりに渦巻くデータと情報の中から、いかに仮説を立て、次の施策につなげていくか。後編です。

*「なんとなく」でも理由がある

 前編では、「なぜお客様はお菓子をまとめ買いをしたのか?」を考えることが大切、で締めました。ECサイトの受注データをみれば、「ただ単に注文がデータとして羅列されているだけ」なのですが、その注文には必ず何かしらの背景があります。つまり、お客様には商品を購入した何かしらの「理由」があるわけです。

 もしかしたら、あまり深く考えずに、検索エンジンから商品を検索し、目についたネットショップをなんとなく選んだだけかもしれません。しかし「深く考えずに」の中にも、「目についた」「なんとなく」という「理由」があるのです。受注データは単にデータの羅列ですが、お客様の買い方から、その背景を想像することが大切です。これが、いわゆる「仮説」ということになります。

*お客様に直接聞けばいい

 「なぜお客様はお菓子をまとめ買いしたのか?」。お菓子のまとめ買いという事実から、どのような仮説が立つでしょうか。会社でお菓子の食べ放題イベントをやるのかもしれません。事務所や病院、美容室などに常備しているフリーお菓子にするのかもしれません。もしかしたら、お菓子を仕入れて実店舗で販売しているのかもしれません。仮説は様々イメージできるのではないでしょうか。

 仮説をより確かなものにするため、有効な手段があります。それは「お客様に連絡する」という手段です。そう、直接「まとめ買いした理由」をお客様に聞いてしまうのです。今回のケースで、「まとめ買いした理由」をもっとも知っているのは誰でしょうか。それはお客様自身なんですね。インターネットのマーケティングで、ここまでやる担当者さんはなかなか少ないのですが、会議室で悩んでいるよりお客様に聞いた方が早いのです。

*過去の受注履歴を調査する

 今回の場合、まとめ買いした理由は「PTA主催の謝恩会」でした。謝恩会で子ども達にお菓子を配るというのです。そこでこのネットショップの過去の受注データを調べてみると、学校や学習塾、スポーツ団体などがお届け先になっている「まとめ買い注文」の履歴がありました。実は、いままでも似たケースの受注があったものの、データと情報を「右から左に」流してしまっていたのです。前編で書いた表現をすれば「気づく力」がなかった、と言えます。

 「PTA主催の謝恩会」という理由がわかった。そして、過去にも「子ども達に配る」を目的にしたと思われる受注履歴があった。この事実から、ECサイトに加えられる改善施策は何でしょうか。そうです。「謝恩会、子ども会に最適なお菓子特集」というような、提案をECサイトで打ち出すのです。特設ページでもカテゴリでも構いません。対象を絞った表現をすればお客様への訴求力が上がります。

*踏み込んでサービス化を考える

 ここでもう一歩踏み込みます。今回の場合、お客様がまとめ買いした商品として「あまおうイチゴ味のぷっちょ」と「明太子味のプリッツ」をあげました。これを「PTA主催の謝恩会」で子ども達に配る、ということは、各々の商品を開封しバラして1人1人用のお菓子としてまとめている可能性があります。また、各々の商品の内容量(6個入り、10個入り)が異なりますから、お客様が計算して購入したとしても、余りだったり足りなかったりするはずです。

 ネットショップとして「お菓子セット」の販売がお客様にサービス提供できそうだ、と考えられます。つまり、あらかじめお菓子セットを何パターンがつくっておき、お客様が「人数分購入する」という販売方式です。当然、手間にともなう単価など検討材料はさまざまありますが、「人数分で購入できる」のはお客様にとって魅力があるはずです。場合によっては、ニーズをプルするためのPPC広告を活用できるかもしれません。

 今回、ある事例をもとに「データ・情報から仮説と行動をつくる」を前後編で解説してきました。データ・情報は日常に転がっています。大切なのは、自分たちが「なぜ?」を感じ、向き合うことなのです。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから