ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

新規顧客の獲得は「手法論」ではなく「確率論」【no.2154】

 ECに限らず、どんなビジネスでも頭を悩ませるのが新規顧客の獲得だ。ネットショップ担当者フォーラムさんの読者アンケート調査でも、「新規顧客の獲得」がEC事業者の悩みで毎回第一位だったりする。

*本来の論点は手法論ではなく「確率論」

 まず、新規顧客の獲得の話題になると話にあがるのが、「どうやって新規顧客を獲得すればいいですか?」という質問。この質問で求められる応えは、「Instagramなのですか、それともX(旧Twitter)なのですか」「アフィリエイト広告とリターゲティング広告のどっちがいいですか」という「手法」の話になりがちなのだが、それは新規顧客獲得の本質からは少しズレている。

 ここで大切なのは「解像度」なのだ。新規顧客を獲得するために「誰がどのように認知し、興味をもってくれるのか」このお客様の流れをいかに細かく微修正できるか。お客様への「解像度」を上げて、認知から購買にいたるまでの確立を上げていくわけだ。つまり、新規顧客獲得の論点は手法論ではなく「確率論」なのだ。

 なので、新規顧客獲得について議論を交わしたときに「ネット広告もInstagramもやってるんですよぉ」「マッチングサイトにも掲載してるんですよぉ」という話をいただくのだが、これは「手法論」である。大切なのはInstagramアカウントをつくることではなく、マッチングサイトと契約することでもないのだが、その先にある運用からの「確率論」がポイントであることに気づかないと、現実的に新規顧客の獲得はしばらく難しいかもしれない。

*マーケティング手法はどの会社も一緒

 新規顧客獲得の手法としてマーケティングの世界ではさまざまな表現がなされているが、ECMJでは「3+1」の手法として紹介している。

1つは、ネット広告。リスティング広告やバナー広告など、お金を支払って顧客に情報を伝える方法。次に、検索。Google検索やショッピングモール検索など、お客様の検索にヒットさせて顧客に情報を伝える方法。そして、メディア。SNSやプレスリリースなど、メディアプラットフォームを活用して顧客に情報を伝える方法。ここまでで「3+1」の「3」の部分。「+1」は、実店舗やメーカーのブランド力など、リアルから顧客に情報を伝える方法だ。これは手法として使える会社が限られるのであくまで「+1」

 新規顧客獲得のマーケティング手法はこの「3+1」のどれかに集約される。お金を払うか、検索ヒットを狙うか、メディア拡散されるか、リアルからネットに流すか、このいずれかだ。そしてこの「3+1」は予算規模の大小はあるにせよ、大企業中小零細企業関わらず、すべての会社が実践することができる。大企業だからInstagramが運用できて、零細企業だからInstagramのアカウントはつくれない、ということはないはずだ。デジタルの世界では大企業中小零細企業ましてや個人でさえ、同条件でマーケティングが展開できる。

*「手法」を実践する「前後」が違う

 となるのと、新規顧客の獲得ができている会社、新規顧客の獲得ができていない会社は、実は実践している手法は一緒なのである。では、できている会社とできていない会社は何が違うのか。

 端的にいえば、「手法」を実践する「前後」が違う。つまり、手法を実践する前に検討する「企画・提案」と、手法を実践した後の「成果検証・振り返り」が違う。この「企画・提案」と「成果検証・振り返り」の積み重ねが、いわゆるマーケティングの「解像度」を上げていく。マーケティングチームに「解像度」を上げる習慣をつけていく。これこそ、組織のマーケティング力なわけだ。

 だから、新規顧客の獲得ができている会社、新規顧客の獲得ができていない会社という括りは根本的には存在していない。新規顧客の獲得効率の高い会社、新規顧客の獲得効率の低い会社。存在するのはこのふたつということになる。

 では、「確率」を上げるためにはどうするか。次回に続く。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから