攻めのECの時代から「守り」のECの時代へ。2【no.2131】
(前回のつづき)
既存ビジネスのある企業にとって、今後のEC戦略は「守りのEC」になると前回書いた。「守りのEC」とは、EC市場の動向から「商品企画とタイミング」を伺い、最適な商品を最適なタイミングで市場に提供する「カウンター攻撃」である。「守りのEC」はけっして、企業の「EC事業成長」の可能性を失わせるものではない。むしろデジタル時代の「新しい事業の柱」として、持続的なEC事業を実現するためのものなのだ。
今回は「守りのEC」の回し方について、具体的に考えていく。
「業界標準」でアイドリングする
まず「守りのEC」では、ECサイトを常にアイドリングさせておくことが重要になる。アイドリングとはご存じのとおり、車がエンジンをかけたまま停止していること。つまり、ECサイトの活動は常に動いてなければいけない。ECサイトは最低限の更新や情報発信、また顧客からの受注や問い合わせの対応が遅れてしまうと、お客様から「実質的に止まっている状態」に思われてしまう。
新商品を漏れずにアップする、販促情報は必ずSNSに流す、受注・問い合わせは即対応など、運営レベルを定義することが大切だ。ここは「市場レベル(業界標準)」に合わせれば良い。もし自社リソースで業界標準に合わせられないならば、外部を活用したい。とにかく業界標準の状態でアイドリングしておくことが大切なのだ。
必要のないときに無理な事業拡大の手は打たない、しかしECサイトはアイドリングさせ既存顧客へのサービスレベルは保つ。「守りのEC」のベースとして、こういった体制をつくっておく。その上で「カウンター攻撃」を狙う。
「商品企画とタイミング」を伺う体制づくり
前回・今回も書いたとおり、EC事業成長のポイントは「商品企画とタイミング」である。UI/UXの改善や広告集客・SNS活用、大規模なシステム導入は「商品企画とタイミング」が大前提にあってこそ、その効果があらわれる。「守りのEC」を展開している裏で、「商品企画とタイミング」を伺う体制をつくればよい。
まず「商品企画」。商品については自社の伝統やこだわりがあることが多いのでコンサルタントとして根本的な変更を意見しないが、まず理解したいのが「リアルとネットで売れる商品は異なる」という点である。ここを経営者が理解しないかぎり、ECの事業成長はありえない。「これ、いい商品だから売れないのはおかしい」「商品のせいではなくUI/UXのせいなんじゃないか」。経営者がこれを言い出したらかなり厳しい。「リアルとネットで売れる商品は異なる」のだ。
まずは「比較」から選ばれる商品づくり
ここについてはECMJコラムで何度も書いていることなので細かくは割愛するが、ECは「商圏のない」戦いなのである。特定の地域で売れているものが、商圏がなくなった瞬間に「他と比較」されるようになり、売れなくなることは大いにあることなのだ。ECの世界ではお客様にとって「2番目以降」の優先順位が著しく落ちるわけである。そう考えれば、商圏がなくなった瞬間に他と比較され売れなくなったが、実は単に「優先順位2番目」になっただけであり、優先順位1番目との差をカバーできれば「逆にお客様を総取り」できる、こういった可能性もあり得るわけだ。
EC事業成長のための「商品企画」のポイントになるのは、まず「新しいニーズにこたえる商品」をつくるのではなく、「他と比較して選ばれる商品」をつくることなのだ。本質的には「新しいニーズにこたえる商品」をつくることが理想なのだが、ここは少しハードルが高い。まずは「他と比較して選ばれる商品」をつくること。仮に「新しいニーズにこたえる商品」をつくったとしても、ECの市場では必ず「後発の競合」が出てくるので、その対策としても勉強になる。
では「他と比較して選ばれる商品」をどうつくるか?そして、「タイミング」をどう読むか。
(次回につづく)
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