攻めのECの時代から「守り」のECの時代へ。1【no.2130】
できればもうECはやりたくない。
こんな企業が今後増えてくる。厳密にいえば、「社内にノウハウも知識もないまま、広告費を支払い、サイト更新に費用をかけ、システムを導入する。そして、いきなり大量の注文がきて社内が混乱する」そんなEC事業にはもう辟易した、疲れたという状態。だから、「できればもうECはやりたくない」。こういった企業が増えてくるように思える。
しかし、デジタルの波に逆らうことはできない。なぜならば、事業者が「できればECはやりたくない」と思っていても、顧客はECを求めているからだ。ビジネスマンという立場ではなく、もう一方の消費者という立場では誰しもECを求めている。だからECを「やめる」という選択肢は、企業としての未来を失うことと同義になる。
そこでECへの新しい取り組み方が生まれる。これを「守りのEC」と呼びたい。
「攻めのEC」が事業成長を阻んでいる
これまでのECは企業にとって「攻めのEC」だった。ECサイトを立ち上げ、システムを導入し、広告宣伝をおこなって事業の拡大を狙う。当然、企業としては「新しい事業の柱」としてECに期待をしているわけだが、現実的にEC市場の攻略は簡単ではない。ECにチャレンジした企業の多くが経験することだが、「期待していたよりも圧倒的に売れない」のである。赤字を垂れ流す状態になるわけだ。
そこで広告宣伝をより強化したり、ECサイトをリニューアルしたりして「より攻める」わけであるが、それでも売れない。ECサイトの更新・運営を含め多くのコストを支払ってしまったことに気づき、どこかのタイミングで「EC自体をやめて」しまうのだ。この「EC自体をやめる」は、ECサイトを残したまま更新作業をおこなわないことも含まれる。ECサイトは動いているが、実質的に「やめている」状態である。
基本的にこれまでのECソリューションは「攻めのEC」に対応したものが多い。EC事業拡大に向けて「UI/UXを改善しましょう」「広告をかけてセッションを増やしましょう」「システムを導入して業務の効率化を進めましょう」、いずれも「攻めのEC」を前提としたものになる。しかしその結果は先に書いたとおりだ。事業拡大を前提とした「攻めのEC」が結果として、企業におけるEC事業の定着化を阻んでいるとも言えなくない。
EC事業のキーは「商品企画とタイミング」
では、EC事業の成長のキーファクターになるのは果たしてなにか。それは商品企画とタイミングのふたつなのだ。お客様のニーズをつかんだ新商品をつくること、そして最も売れるタイミングで商品を売ること。このふたつがEC事業を成長させる。
逆にいえば、ECサイトの見栄えやUI/UXを良くすることも、広告をかけてセッションを増やすことも、システムを導入し業務の効率化を進めることも、「商品企画とタイミング」を押さえていることが大前提であるわけなのだ。このふたつのポイントを押さえることなく、「攻めのEC」をおこなっていることが、EC事業の定着化を阻んでいるのである。そもそものポイントがズレているわけだ。
そこで「守りのEC」への転換期がくる。
「守りのEC」とはカウンター攻撃
EC事業自体をメイン事業(専業)としておこなっている企業は、1年中365日、「攻めのEC」としてECにアクセルを踏み続けなければいけない。しかし、しっかりとした既存の事業があり、ECに「新しい販売チャネルの獲得」や「D2C(直販)の可能性」を求める企業は、実は常に「攻めのEC」をやる必要はない。むしろ常に「攻めのEC」をやっているとどこかでリソースが息切れをしてしまう。本来は、自社が「攻めるべきタイミング」で攻めればいいだけなのだ。
一方、「守りのEC」とは、けっして「EC事業成長」を狙わないものではない。「守りのEC」とは、お客様の不自由がない程度のECサイト更新・情報発信をするだけではないのだ。「守り」を意識しつつ「攻め」のチャンスを常に探していく、ECのマーケティング活動なのだ。いわば、サッカーでいうところの「カウンター攻撃」である。「攻めるべきタイミング」で攻め、EC事業の成長を狙っていくことになる。
冒頭に書いたとおり「できればもうECはやりたくない」と思っても、デジタルの波には逆らえない。「守りのEC」からいかにカウンター攻撃を仕掛けるか、ここがEC事業戦略のポイントになる。
では、どうやっておこなうか?(次回につづく)
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