ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

年商1億円のECサイトを目指すための手引き。3【no.2122】

 EC事業を自社の「事業の柱」に育てるとき、最初の目標が「年商1億円」ではないでしょうか。実際に、ご相談を受ける大手企業でも、「まずは年商1億円」という言葉が出てきます。月商1億円のEC事業、これが今回のテーマです。(続編として、年商3億円、年商10億円‥なども書いていきます)。前回のコラムを読んでから、こちらをお読みください。

ECサイトの成長と転換率の関係性

 前回のコラムでは、客単価と転換率に相関性はない、とお話ししました。客単価1,000円のネットショップと客単価10,000円のネットショップがあったとしても、転換率は10倍もしくは10分の1にはならないのです。そう考えると「いかに客単価を高く設定するか」がEC事業では重要になります。

 転換率はコンバージョンレート(CVR)とも表現されます。私がEC業界に入った頃は転換率という名称が一般的でしたが、最近はCVRが一般的になっています。計算式としては、「注文数÷アクセス人数(セッション数)」です。ECサイトの流入に対して注文をいただく割合が転換率です。

 では、ここで質問です。自社のECサイトが年商1,000万円から年商1億円に成長したとします。転換率はどのような変化をするでしょうか。これが質問です。年商1,000万円のときの方が転換率が高い、もしくは低いでしょうか。年商1億円になるとどうでしょうか。答えは、年商1億円のECサイトの方が「転換率は低くなる」。これが一般的です。

規模が大きくなると「転換率は低くなる」

 「売上=アクセス人数×転換率×客単価」の売上の公式を考えるとき、売上を10倍にするために、どのデータ項目を上げればいいかを考えたとします。ここで「転換率」のデータ項目を「高くする」ことで売上10倍を実現しようとするのは、一般的には間違った考え方なのです。なぜなら、ECサイトの規模が大きくなると先に書いたとおり「転換率は低くなる」からです。もちろん、商材の変更やブランディングの変化によっての例外はありえます。

 ではなぜ、ECサイトの規模が大きくなると転換率が低くなるか、です。ポイントは「転換率=注文数÷アクセス人数」の「アクセス人数」にあります。ECサイトの規模が大きくなるほど、ネットショップへの流入導線が増え、また導線が太くなります。Google検索での流入や、SNSからの流入、広告からの流入など。自分たちが知らないところで噂になり、ECサイトの流入が増えます。そうすると、たまたまネットショップにいきついたり、興味が薄いけど見てみた「一見さん」の流入が増えるのです。

 ECサイトの規模が小さい状態では、アクセスの軸になっているのは「すでにショップを知っている人」「指名検索をしてくれている人」など、ネットショップに近い人達です。当然、ECサイトの転換率はサイトの規模が小さいときの方が高くなります。転換率は「高いことに越したことはない」ですが、あくまで「割り算」のデータ項目です。転換率が高くでもアクセス人数が少なくては仕方ありません。

ほとんどのECサイトが「10%以内」

 ECサイトの転換率が「正常か」はさまざまな事業者の気になることだと思います。ECMJへのご相談でも「うちの転換率ってどうですか?」はよく聞かれる質問でした。ただ、転換率は商材によって異なります。また商材の価格帯によっても異なります。そう考えると千差万別なのです。

 ただ、言えることとしては、ほとんどのECサイトが「10%以内」に転換率が収まります。転換率15%というECサイトは稀です。また、自社サイトのネットショップはショッピングモールのネットショップよりも転換率が下がる傾向にあります。転換率については、競合他社のデータを気にするよりも、自社のデータをチェックし続ける方が良いでしょう。

 また、実際のEC運営において転換率は「ネットショップ全体」を見るものではありません。次回はこれについて説明をしていきます。

(つづく)

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから