ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

売れるネットショップは施策の「前後」が異なる【no.2097】

 売れるネットショップと売れないネットショップでやっていることは変わらない。変わるのは「緻密さ」にある。売れるネットショップは、施策を決める「前後」が異なる。

アドバイスの内容は「普通」

 ネットショップのマーケティングの相談の回答としてたまに驚かれることもある。アドバイスの内容が「普通」だからだ。

 たとえばネットショップの売上が落ちているとする。その原因として、ネットショップのメイン商品の注文が落ちているとする。EC事業をおこなっていると、「売れ筋商品かつ導線商品」の売上が落ちて、ネットショップ全体の売上が落ちていることはよくあることだ。このとき、どんな対策をすればいいだろうか。

 シンプルな回答はメイン商品の注文が増えるようにすればいいとなる。しかし、メイン商品の注文を増やすための施策が「インターネット広告」や「セール」だとしたら、結果的に選択する打ち手として正しかったとしても、どこか「付け焼刃」感が出てしまう。今回のメイン商品の注文減の対策にはなるかもしれないが、根本的な解決にはならない。

施策を決める「前後」を押さえる

 結果的にメイン商品に対する「インターネット広告」や「セール」という施策を取るとしても、施策を決めるための「前後」はしっかり押さえておきたい。

 まずメイン商品の注文が落ちている理由は何なのか。競合が同じスペックの商品を出したからなのか、市場全体が飽和状態になったのか。同系統のアップグレードの商品が発売されていないか。デザインがトレンドから逸れてしまってはいないか。それとも自社のメイン商品に悪いレビューが入ったからか。商品ページや項目選択肢に不備はないか。商品自体の品質管理はしっかりできているか。倉庫の保管状態はメイン商品の劣化を招いていないか。まずは徹底的に「原因」を調べることになる。

 文章に書くと途方もない仕事に思えてくるが、普段から習慣づいていれば時間のかかる仕事ではない。「注文が減る」といった事象に対して、確認しなければいけない部分を認識し、パッパッと半ば機械的なチェックを入れればいいのだ。つまり、「緻密さ」は単なる普段からの慣れということにもなる。

データを確認することで仕事は完了する

 仮に、競合が同じスペックの商品を出し、さらに自社のメイン商品の価格をくぐらせているため注文が減っていたとする。この場合、もちろん「セール」という選択肢を取ることもある。このとき重要なのは、「注文が減っているからセールをする」ではなく、「競合の同スペック商品が価格をくぐらせてきたのでセールをする」なのだ。後者も結果的には「注文が減っているからセールをする」なのだが、深さが異なる。

 「セール」という施策を選択した場合でも、「セールをしたからどうなったのか」を逃してはいけない。インターネット広告も販促企画も「やりっぱなし」が良くないのだ。ECのマーケティングはその成果が必ずデータになってあらわれる。インターネット広告も販促企画も、このデータを確認することで仕事としては完了。「やりっぱなし」では、仕事として未完了であり、ECのマーケティングではない。

「How」とデータの関係を読み解く

 セールをするにも、値引きの%によって結果は異なる。販促企画形式にして、「セールの理由」を変えただけでも結果は異なる。もちろんセールをおこなうタイミングや告知の方法によっても結果は異なるわけだ。しかし「セール」という「What」は一緒。大切なのは「How」とデータの関係を読み解く「緻密さ」になる。

 売れるネットショップと売れないネットショップで仕事の「What」はまったく変わらない。売れているネットショップだけがおこなっている「What」はない。大切なのは「How」をいかに「緻密」に考え、行動に移せるかにある。売れるネットショップは、施策を決める「前後」が異なる。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから