EC事業の成長における3つの課題【no.2039】
コロナ禍以降、さらにオンラインのニーズが高まっています。本格的にECに取り組みはじめた、取り組もうと考えている会社さんが多いでしょう。
実店舗へのお客様がいまいち戻らない状況。お客様に実店舗にきてくださいと積極的にいえない状況。建前・世間体としてリアルな接触を促せない事情もあります。お客様の立場からも、事業者の立場からもECのニーズはさらに高まるわけです。
Eコマース成長の法則を考える
現にコロナ禍において、ECMJ顧問先のECも飛躍的に伸びました。前年同月比で150%から300%ほど。商材によってその伸びはすさまじいものがありました。売上は120%から200%ほどで前年同月を上回りました。これはもちろんクライアントのメンバーの皆さんの日々の努力あってのことです。
今回は「Eコマース成長の法則」をテーマにECMJコラムを書いていきます。
まずはじめに、このEコマース成長の法則の内容です。母体事業がありECを新しい販売チャネルとして拡大していきたい事業者を対象にします。なので、EC専業の事業者はメインの対象ではありません。とはいえ、私も「ECベンチャー企業」出身ですので専業はよくわかっているつもりです。
そして売上規模ですが、母体となるビジネスについての上限はありません。ECについては売上0から対象です。母体ビジネスの規模が大きかったとしても、ECは月商0円からスタートです。会社のスタッフの皆さんも知識ゼロからのスタートでしょう。なので、母体ビジネスの売上規模は、このテーマの対象に関係はしません。
ECは「事業の柱」として認識し、育成するもの
ただ、大企業と中小零細企業において売上目標や投資金額については相当幅があります。ここはコラムの中でケースを分けてカバーしていきます。あとは、どのポジションの方にどんな視点で読んでいただきたいか。経営層の方にはEコマースというビジネスの成長過程と課題を。責任者・マネージャー層の方にはEコマースの成長課題の先取りとスタッフの育成を。運営スタッフの皆さんには課題解決の意識とノウハウ共有を。こんなところの視点で読んでもらえれば幸いです。
いままでのECは「売上が上がればうれしい。しかし既存業務優先」という事業です。しかし、「事業の柱」として認識し、育成するものに変わりました。会社のメンバー皆さんのEコマースへの認識も変えていかなければいけません。このコラムがたくさんの事業者のEコマースの指針になれば良いと考えています。
ECの「組織と人材」について
「事業の柱」を目指してEC事業に取り組むとき、事業者が悩まれることがあります。ひとつは組織と人材について。もうひとつが初期コストの判断基準について。そしてネットショップのコンセプトについて。このあたりではないかと思います。ここからこの3つの課題をひとつずつ解説していきます。
ひとつ目はEC事業に本格的に取り組むときの「組織と人材」についてです。Eコマース事業をどの部署に担当してもらうか。部署間を超越したプロジェクトチームを形成する方がいいのか。どんなメンバーにEコマース事業を担当してもらうのがいいのか。このような疑問を抱えている会社さんもいるでしょう。まずどんなメンバーにEコマース事業を担当してもらうのがいいのか。人材の部分から考えていきます。
コラムを読んでいる会社さんでは明確に担当者を決めているところもあると思います。その場合は当然ですが、その担当者さんにお任せするのが良いです。特別な理由がなければ途中で変える必要はありません。ただ、これからECチームをつくるのであれば、少なくとも「自社のサービス、商品、そして業務の知識がある」かつ「デジタル(特にスマートフォン)に抵抗がない」方を選択した方が良いかもしれません。入社3-4年目の若手社員みたいなイメージでしょうか。
「育成」が持続的な成長を実現する
まず前者の「自社のサービス、商品、そして業務の知識がある」についてです。基本的にECは既存商品の販売チャネルのひとつとしてスタートします。「自社のサービス、商品」の知識がなければ魅力をお客様に伝えることができません。またECの仕事には在庫管理や発送業務などバックオフィスの仕事も含まれます。「自社内の業務知識」がなければ会社全体を巻き込んでいくのは難しいでしょう。
Eコマースの担当者を「採用」で補うか「育成」で任せるか、という議論があります。社内メンバーの「育成」をおすすめする理由がこれです。「採用」した人材はサービスのことも商品のことも業務のこともよくわかっていません。企業は独自の文化やローカルルールのかたまりです。知識やスキルを持っていたとしても、組織にを巻き込んでいけるかは別問題です。「育成」の選択肢をとった方が持続的な成長が実現できると思います。
私生活でデジタルを使っている人材を
そして後者の「デジタル(特にスマートフォン)に抵抗がない」についてです。お客様はスマホやパソコンを使ってサイトに訪れ、ショッピングをします。担当者が仕事だけにデジタルを使うのでは、提案の勘所を掴めるわけがありません。私生活でも使いこなしているからこそ「ささる勘所」がわかるはずです。
この事実を笑ってはいけません。SNSの運用を多くの会社が自社でおこなっています。しかし個人アカウントを持ってなく、仕事のために投稿している人がほとんどなのです。これではユーザー側にささる発信ができるわけがありません。
社内にEコマースを経験したスタッフの方がいない。Eコマースは経験したけれども全体最適についての知識はない。スタッフさんの実績としてEコマース事業を成長させたことがない。このようなケースがほとんどです。どの会社さんも同じような状態にあります。
そうなると困るのが、Eコマース事業を進める際の「判断基準」です。自分たちが選択している手段や進め方が正しいのか間違っているのか。結果がともなっていればあまり気にならないかもしれません。しかし、結果が出ない場合は不安になることが多いでしょう。ここではまずECを本格スタートする初期コストの判断基準について考えます。
EC事業をどれくらい成長させたいか
初期コストを判断するための考え方。まずEC事業をどれくらい成長させたいか。この目標が基準をつくります。年商100億円のネットショップに成長させたい場合はそれなりの金額が。年商10億円のネットショップに成長させたい場合はそれなりの金額が。これをもう一歩考えるための必要なのが、母体事業の規模や知名度になります。
たとえば現在ネットショップのない会社さんがECを立ち上げたとします。お客様がアクセスする状態をつくるには強気の初期コストが必要になります。ある程度、デザイン性や機能性に凝ったネットショップを構築しても良いでしょう。ただ「ECを出店した瞬間からアクセスがある」のは一部の会社だけです。中小企業はもちろん、BtoB事業がメインの大企業は、「ECを出店した瞬間にアクセスがある」にはなりません。
リアルでの知名度がどれくらいあるか
つまり初期コストのポイントは「リアルでの知名度がどれくらいあるか」です。その「知名度」はブランド名の知名度でも構いません。実店舗名の知名度でも構いません。商品名の知名度でも構いません。そしてその「リアルでの知名度」をはかるのは「オーガニック検索」です。いわゆる検索エンジンでの「自然検索」。Google検索やYahoo!検索です。ブランド名、実店舗名、商品名で検索されていれば、「リアルでの知名度が高い」という判断ます。
ただし、Eコマースのビジネスは「小さく初めて大きく育てる」が基本です。まずはスモールから始めて、市場の中で「イケる!」と判断ができたときに強気の投資をして事業を成長させていきます。リアルの市場とネットの市場は特性が違います。「大きく初めて」は非常に危険です。「小さく初めて大きく育てる」を実現するため「組織と人材づくり」が重要になります。
Eコマースのセミナー・講演などでしばしば最初にお話しする話があります。EC事業を成長させる上で重要なのは、戦略や戦術、SEO対策やHTMLなどのテクニックやスキルではありません。ず第一に「市場性」であると。素晴らしい画を描いてECを始めたとしても、市場がないか寡占化していれば成長は難しくなります。現在の市場を鑑みると、「寡占化している」市場に飛び込む危険性が高いかもしれません。
「市場性」と「商品力」はほぼイコール
三つ目の課題として「ネットショップのコンセプト」を挙げています。ECの成長性を「商品力×提案力×集客力」の三方向で表したとき、「ネットショップのコンセプト」にあたるのは「商品力×提案力」です。この「商品力(=販売する商品のもつ力)」と「提案力(=商品の魅力をお客様に伝える力)」を比べたときに重要なのは「商品力」の方です。いくら提案が上手でも商品そのものがありふれたものであれば成果は少なくなります。提案が上手ではなくても商品に付加価値があれば「勝手に」商品は売れていきます。
そう考えれば「市場性」とはまず「商品力」だと考えてもらって構いません。現在のEコマースの市場をみれば、「小売り」のECが厳しいのは明らかです。付加価値の高いオリジナル商品を企画することがECの必須です。あくまで商品画像の撮り方やSNSの活用などは「商品力」があってこそです。
「小売り」ECにも勝ち目はある
ただ、「小売り」ECに絶対的に勝ち筋がないかというとそうでもありません。「小売り」の商品の魅力は、「すでに一定の市場規模が存在していること」です。つまり「売れる商品」であることは間違いありません。普通にインターネットで販売するだけでは「厳しい戦い」になります。しかし仮に「他社に比べて仕入れに優位性がある」ならば状況は一変します。ECに参戦する上で、自社が「積み重ねてきたもの」を再確認することが大切です。
「商品力×提案力」の最大化のポイントは「商品の対象者」の概念です。いわゆる「ペルソナ」です。「どのようなお客様のために存在し、どう伝えると魅力を充分に感じてもらえるのか」。これを考えることが大切です。この「商品の対象者」を決めることが「提案力」の内容を決めることにも繋がります。ECに継続的に新商品を投下していく「商品力」にも関わってきます。「商品力」「提案力」「対象者」。ECを進捗させるために、何度も考え続ける永遠のテーマです。
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