ネットショップバックオフィス業務の改善とシステム活用について【no.2021】
Eコマースのバックオフィス業務の改善とシステム活用について書いていきます。
*EC運営者でないとバックオフィス業務はわからない!?
Eコマースのバックオフィス業務はあまり表側に上がってきません。最近では物流システムの会社さんやメール管理システムの会社さんがバックオフィス業務についてセミナーを開いています。しかし、フロントヤード業務の情報の方が巷にあふれています。
ECの「売上アップ」として思い浮かぶのはオンラインショップのコンセプトやデザイン。また商品ページのつくり方。そしてSEO対策やアフィリエイトなどの集客対策だったりします。なぜバックオフィス業務の話が少ないのか。それはショッピングモールも自社サイトカートの会社もWEB制作会社もネットの広告代理店も「ネットショップを運営したことがないから」です。
これらの会社さんははフロントヤードのノウハウと事例が専門なんですね。
*オンラインショップ運営の半分を占めるのはバックオフィス業務
とはいえ、ネットショップの運営の半分を占めるのはバックオフィス業務です。また実際にEC運営の時間の比率を考えると、バックオフィス業務をいかにおこなうかでフロントヤード業務に使える時間が変わってきます。
ECのフロントヤード業務。オンラインショップで販売する商品をつくったり仕入れたりする「商品企画/商材開拓」。ネットショップのサイトをデザインする「WEB制作」。オンラインストアのお客様の認知を拡大する「集客」。ECサイトの販売スケジュール計画を立て遂行する「運営」の4つの仕事です。
対してバックオフィス業務は主に3つに分けられます。注文データを管理する「受注処理/データベース管理」。商品を発送する「物流」。返品交換の問い合わせや質問・相談にお応えする「カスタマーサポート」。
*入金管理、情報セキュリティ管理、採用・人材育成などもある
「受注処理/データベース管理」「物流」「カスタマーサポート」以外にもECに関わる仕事があります。
ひとつは「入金管理」の仕事です。先に紹介した「受注処理/データベース管理」に加えるのもありかもしれません。ネットショップの注文はクレジットカードが中心です。しかし銀行振込・代金引換といった従来の決済方法。そしてコンビニ決済やキャリア決済、ペイパル決済など選択肢が増えています。今後、仮想通貨の決済も一般化するかもしれません。
もうひとつは「情報セキュリティ管理」です。こちらも「受注処理/データベース管理」の中に加えても良いかもしれません。お客様の個人データ(顧客データ)やECシステムを不正アクセスから守る仕事です。サイトの規模が大きければ大きいほどセキュリティ管理が必要になります。
最後に「採用・人材育成」です。ネットショップの組織・人員を加味してどんなメンバーを補完するのが良いのか。どんなノウハウや知識を習得してもらいより成長してもらうのか。こちらもバックオフィス業務のひとつですし、会社全体の課題でもあります。
*バックオフィス業務の改善は「売上アップ」に繋がる
先に書いたように、オンラインショップのバックオフィス業務は外部からは見えません。ECサイトやメルマガ、広告などのフロントヤードは外側からみることができます。しかし、バックオフィスは社内にあるものであるためみることができません。ショッピングモールやWEB制作会社、広告代理店にノウハウがないのはそのためです。
またバックオフィスのシステム化、仕組み化をいかにフロンドヤードに繋げるか。この課題は、実際にオンラインショップを運営した人間でないと説明が不可能です。このコラムで伝えたいのはバックオフィスの改善ではなくフロントヤードへの繋げ方。つまりバックオフィスの改善を「売上に繋げる方法」です。
*「受注処理/データベース(DB)管理」はデータの要になる
バックオフィスの中でも「受注処理/DB管理」の仕事はデータ分析の要です。どんなデータベースを構築しデータを蓄積していくか。それによって顧客の購買状況や購買行動の変化を読み取る力が変わります。まず「受注処理/DB管理」のシステム化について考えていきます。
開店時から1日数百件の注文がくるオンラインショップは別ですが、スタート当初はECカートシステムの受注管理を使って注文データを処理していきます。これが1日の注文が30件ほどになると受注管理での対応が難しくなります。仮に受注処理が1件10分だとすれば30件で5時間です。その分、フロントヤードに時間をかけた方がオンラインショップの売上に繋がります。
受注処理の仕組み化・効率化の実現はシステムの導入がシンプルです。この方法はふたつあります。自社のカートシステムに連動する受注管理システムを導入する。もしくは自社で受注管理システムを作ってしまう。前者は月額1万円以下で導入が可能です。特別な販売形式でなければどんなショップにも対応します。後者の場合は自社内にシステム構築のスキルを持った人間が必要になります。しかし販売や販促によってシステムとデータベースを組み直せる利点があります。
ちなみに私はオンラインショップ担当者時代、Accessでシステムを構築していました。年商10億円規模のオンラインショップです。
*個別対応は受注処理システムでカバーができる
受注処理をするときに時間がかかるのが個別対応です。1件1件の注文画面を開いて配送地域や決済方法、購入商品を確認します。通常の宅配便で配送が可能なのか、同じ日に同梱できる商品を買っていないか。別届けの配送だったり、のしを付ける必要があったり。宅配ボックスに入れる要望や、配送日や配送時間帯の希望があります。
基本的に受注管理システムではこれらの処理を一括でおこなうことができます。販売方法の設定により個別対応が必要なもの必要でないものに注文を分けます。最低限の対応で注文処理をおこなうことができます。もちろん在庫や物流にデータを反映させるためデータ形式を変換することも可能です。
*受注処理のデータはフロントヤード業務にどう活かすことができるか
バックオフィス業務を整理することによってフロントヤード業務にも良い影響が出ます。単にフロントヤード業務に使える時間が増えるだけではありません。バックオフィス業務のデータベースを使って「攻め」のデータをつくることもできます。
データ分析の中心になるのが、「顧客軸」のマーケティング分析です。ECのカートシステムでは商品ページのアクセスや商品の販売データを分析することができますが。しかし、各々を組み合わせた「顧客軸」のマーケティング分析をおこなうことができません。自社のデータベースに情報を残すことで様々な角度のデータを分析することができます。
*お客様の初回購入からの購買行動を追っていく
たとえば、美容系や健康食品系のネットショップで大切になるのがいわゆるCRMです。顧客情報を管理することで、お客様の状況を把握し適切な提案をすることができます。CRMは顧客データと受注データ、さらに顧客の行動履歴データから成り立ちます。バックオフィス業務がそのまま「顧客軸」のマーケティングに結びついているのです。
データベースが整理されていれば、お客様の購買行動を追うことも可能です。たとえば商品Aを購入したお客様がふたたび何かしらの商品を購入してくれる%はいくつなのか。リピートをしてもらう際、どんな商品を購入するのか商品Aなのか商品Bなのか。リピートするまでの平均の期間はどれくらいなのか。
オンラインショップ側からメルマガやDMなどのアクションを起こすことはできます。しかし、ただ闇雲にたくさん提案をすればいいというわけではありません。それではお客様からの信用を失ってしまいます。提案の確度を上げるためにも「顧客軸」のマーケティング分析が必要になります。
*過去の顧客データから似た購買行動の顧客を探す
たくさんの顧客データと受注データがデータベースに蓄積される。そうすると新しいお客様が商品を購入した際に、過去の顧客データから似た購買行動の顧客を探すことができます。これが「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のリコメンドの源泉です。
大規模なWEBサイトは、WEBサイト上の行動履歴データも取得しています。どの商品ページを何分みたか。どの商品ページとどの商品ページを見比べたか。比較をどのくらいの頻度でおこなったか。こういったデータが蓄積されています。たとえばAmazonからのメールマガジン。これは行動履歴データをもとにつくられていると思って間違いありません。
このように考えても、ネットのマーケティングはデータマーケティングです。そしてその根幹はデータベース管理だということになります。「受注処理/データベース管理」のバックオフィス業務をきちんと整理する。これは後々活用できる大きな資産を得ていることと一緒です。「売上アップ」のためにもバックオフィス業務に取り組みましょう。
*「物流」は唯一お客様と対面する機会になる
バックオフィス業務の「物流」はECの仕事で唯一お客様と対面する機会です。もちろん実際に担当者がお客様のところに配達し、商品を直接渡すということはありません。しかし、配送会社さんを通じて商品はお客様と対面します。
フロントヤードの仕事ではお客様と実際に対面する機会はありません。「集客」においてリアルの販促イベント、催事などに出店することでお客様と直接接することは可能です。しかし「インターネット」の範疇であれば接触機会はありません。
またバックオフィス業務である「受注処理/データベース管理」もお客様と接触することはありません。「カスタマーサポート」は対面する機会というわけではありません。「物流」の仕事は「お客様に出会う」仕事だと思って取り組むべきです。
*「お客様に出会う」仕事と思えば取り組み方が変わる
ショップで購入した商品をお客様がどれくらい楽しみにしているかはわかりません。何か月もお金を貯めて買った商品かもしれません。何度も他の商品と比較検討を重ねて買った商品かもしれません。逆に、いつものルーチンの中で同じ商品をなんとなく選択していたり、比較検討したけれど決め手がなく仕方なく選んだ商品かもしれません。
バックオフィス業務は合格点がある仕事です。商品の梱包、梱包材、納品書のサイズ・レイアウト・デザイン、そして封入物。自社の競合や大手で実際に購入して、どのように商品と対面するかを確認しましょう。その内容はけっして自社で真似のできないものではないはずです。それができれば「お客様との出会い」では合格点を取ることができます。
どこまで「物流」にオリジナリティを出すかはネットショップ次第です。自社オリジナルの段ボールや袋は配送時のインパクトも強く、ブランド力を強めるイメージがあります。EC初期の段階での対応は難しいですが、月間の発送数が300~500件になれば検討しても良いのではないでしょうか。
*「物流」のデータをサービスに繋げる
「物流」をサービスに繋げる考え方です。最初に思いつくのが「即日配送」です。注文を受けてからの配送が早いほどお客様への満足につながります。が、昨今の過剰なサービスにより「とにかく早い」は見直されつつあります。即日発送をデフォルトにしないショップもあり今後比較対象にならない流れもあります。
となると「物流」改善のテーマは商品のピッキングのスピードや梱包のスピード、商品入荷時の検品のスピードなどになります。まずは各業務に対して目標数値をもつこと。その目標数値に達するための「個人の改善」と「環境の改善」を繰り返すこと。これにより効率化が図られます。もちろん梱包ミス・発送ミスの数字も「ゼロ」を目指して目標立ててください。
EC事業者の皆さんには、ぜひ定例の「物流改善会議」を開催してもらえればと思います。
*「カスタマーサポート」はバックオフィス業務ではない?
お客様対応、コールセンターなどとも呼ばれる「カスタマーサポート」はそもそもバックオフィス業務なのか。ここから話を進めていきます。
「カスタマーサポート」の仕事の主なもの。お客様からの商品の返品返金・交換の対応。お届け先の変更、個別の依頼事項の対応。またクレーム対応。こういったものがあります。商品購入前のお客様の質問・相談のメールや電話もあります。商品購入前のアドバイスという仕事はフロントヤード業務と一緒です。
バックオフィス業務と思われがちな「カスタマーサポート」の仕事です。実はフロントヤード業務にも直結しているのです。「売上」をつくる仕事のひとつです。
*「カスタマーサポート」に振ってくる購入前・購入後の声とは
フロントヤードの仕事は、売上を伸ばすために様々な改善活動をおこないます。取り扱っている商品の画像の枚数を増やす。使用している画像(装着画像、調理画像など)を載せる。商品の説明文もよりわかりやすく改善を施す。商品ページの改善だけではなくネットショップ全体の改善もしかりです。配送や決済の表記・注意書きも、お客様のスムーズな購入に繋がるよう改善しましょう。
ただ「自分たちが良いと思って改善したこと」が実際にお客様に伝わっているか、お客様の理解をサポートしているかというとそうではない場合もあります。自分たちの改善の成果をはかるひとつの指標がデータです。データは定量的なものです。「1結果に効いたのか」「10結果に効いたのか」をわかりやすく表現してくれます。
そしてもうひとつは「お客様からの声」です。データには上がってこない「定性的」な成果が上がってきます。そして「お客様からの声」を受け止めるのが「カスタマーサポート」の仕事です。フロントヤードの改善に対する「定性的な評価」をフィードバックするのが大切です。
*「お客様からの声」は随時フロントヤードに投げる
「お客様に指摘されたこと」がオンラインショップの改善点になる可能性があります。また「質問を受けたこと」はネットショップを見てお客様がわからなかったことです。「相談を受けたこと」はどうすればサイト上でお客様に伝えられるか考えましょう。
わざわざメールを送ってくれたり、電話をかけてくれるお客様はごく一部です。「わからないからとりあえず今は買わなくていいかな」。「わからないから他のネットショップを探そう」。などと、自社のネットショップを去っていってしまうお客様がほとんどです。他のお客様もそう考えているかもしれない、と考えるべきです。
フロントヤード業務の会議にはカスタマーサポートのメンバー(特に責任者)が出席することが大切です。新発売の商品の見せ方や販促企画の内容や条件、メールマガジンのコンテンツ。これらを事前に知っておくことでお客様からの反応にすぐ対応することができます。最悪なのは「そんな企画やってたんだ・・」と情報共有されていないパターンです。
*バックオフィス業務の改善とデータ活用
―――以上、Eコマース事業のバックオフィス業務の改善とデータ活用について書いてきました。これは「EC運営をしている人」からしかキャッチできない情報です。ぜひ参考にされてください。
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