企業はインターネットの情報発信を充実させよう【no.2019】
(2022/4のコラムリライトです)
インターネットのマーケティングは面白いものです。WEBサイトをつくることがお客様の認知やサービス利用に直結しません。
もしこれが駅前にある実店舗だったとします。「あー、あんなところに新しいお店できたのね」とその存在を知ってもらうことができます。しかし、今日どこかの誰かが新しいWEBサイトをつくったとしても、誰も知ったことではないのです。(誰でもWEBサイトにはアクセスできるというのに!)
「認知を高める」ためにリソースを使う
WEBサイトで自社の理念やこだわりや違いをアピールする。自社の製品やサービスの有用性を説く。そこをいくら頑張ってもお客様からの認知はそう変わりません。ほとんどの会社のWEBサイトは会社名やサービス名、代表者(社長)の名前での検索でしかアクセスはありません。Googleアナリティクスをみるとそんな事実が簡単にわかってしまいます。WEBサイトを充実させることと存在を知ってもらうことはイコール関係ではないのです。悲しいことに。
ネットを活用して潜在顧客を見込顧客化し新規顧客化する。そのためには「認知を高める」「より伝える」ためにリソースを使った方がいいのです。圧倒的に重要なのはWEBサイトができてからの「運用」です。これはコーポレートサイトもECサイトもサービスサイトもオウンドメディアも一緒です。
うちはネット頑張らなくてもいいと思ってるよ(いま仕事あるし)。そんな経営者の方もいるかもしれません。もし自分の代でいまのビジネスを終わらせるつもりなら、それで良いと思います。ただもし、この先も会社を存続させたいならば。子どもや孫はたまた信用のおける後輩に会社を継いでもらいたいならば。ネットの活用はもう無視するわけにはいきません。
自分だったらどうやって情報を調べるか
たとえば自分たちが新しい製品やサービス、選択するための事前情報を探す場合。どうやって情報収集をしているでしょうか。それはインターネットです。そう。「まずネットで情報を集めて、そこから吟味して」というようにネットを活用したモデルが出来上がっています。自分は普段からそんな行動をしているわけです。なぜ自社の潜在顧客がネットの検索をしていないと言いきれるのか。答えは明らかですよね。
調査会社ガートナーの情報です。お客様の購買行動のうち80%以上はすでにデジタル上(ニアリーイコールでインターネット上でも良い)で完結する時代にきています。それくらい我々はすでにネットに汚染されている(汚されてはいないと思うが)。まあネットがいかに生活から切り離せなくないか、ということです。
BtoCよりBtoBの方が、ネットで「決まる」時代に
当然、この80%という数字はBtoCビジネスに限ったことではありません。BtoBビジネスも同じように購買行動のほとんどがデジタル上で済む(というより、お客様が済ませてしまう)世の中になっています。なぜならBtoCビジネスは多くの場合、実際に製品やサービスを確認したり、体験したりする「リアルの場」があるからです。BtoBビジネスにはこういった「リアルの場」がありません。
BtoCビジネスもBtoBビジネスも、「いかにネットで知ってもらう機会をつくるか」ということがさらに重要な世の中になっていきます。
ネットで新しいお客様にリーチするのは3パターン
新しいお客様にリーチするには大きく分けて3つの方法しかありません。「ネット広告」「ネット検索」「ネットメディア」の3つです。その中でも「ネットメディア」は法人と個人のメディア(つまりSNS)に分けられます。
毎年様々なネット広告がリリースされます。そのたびに広告代理店から提案があると思います。ただ「お金をかけて新しいお客様にリーチする」という点ではどの広告も結局は一緒。そしてSNS。こちらも「次にくるSNSは!?」みたいな議論が繰り返されますが、Twitter、Instagram、Facebookの3つでしばらくおさまりそうです。
中堅・中小企業はネット検索を狙うのが現実的
ネット広告は「お金をかけて新しいお客様にリーチする」という点でひとまとまりです。ネットメディアは「情報を誰かがシェアすることで拡散される」という点でひとまとまり。前者はお金がかかり、後者は取り上げてくれる人が必要になります。資本力のある大手企業や一部の利益率が高い企業は別として、中堅・中小企業がインターネットで戦うためには、ネット検索を狙うのが一番現実的な選択です。
まずはネット検索から自社とサービスを知ってもらうアクセスの土台をつくる。SNSは無料なので、製品やサービスが向く場合は活用します。(残念ながらBtoBのSNS活用は難しいと言わざるを得ない)。ネット検索とネットメディアの活用から得たデータを元に、ある程度の当たりをつけてからネット広告を活用していく。これが中堅・中小企業のマーケティングの流れの基本線になります。
Googleアナリティクスの「参照元/メディア」をみよう
さて自社のネット検索からのアクセスをいかに増やすか。その前にまず確認したいのがGoogleアナリティクスです。Googleアナリティクスで「参照元/メディア」のデータを確認してもらいたい。「参照元/メディア」のデータでは、自社のWEBサイトにアクセスしたユーザー(潜在顧客)がどのサイトを経由してきたかを知ることができます。データを月次に絞って、今月・先月・先々月と遡ってください。
おそらく高確率で「参照元/メディア」の第一位は「Google」になっています。そして第二位が「Yahoo!」になっていると思われます。今月も先月も先々月も第一位が「Google」、第二位が「Yahoo!」。この事実から果たして何を感じるだろうか?
第三位以下には「facebook」の経由だったり「Twitter」の経由があったり、他社のWEBサイトからの経由があったりします。しかしネット検索からのアクセス流入と比較すると、ごくごく少数ではないでしょうか。たとえば、Google+Yahoo!が10,000だとしたら、SNSの合計は100くらいに。
実にネット検索からのアクセスはSNSの100倍。逆にいえば、SNSの100倍のアクセスがあるのはネット検索ということになる。これがずーっと続いている。何を感じるだろうか?
*SNSの時代だとは言うけれども・・
これは多くのWEBサイトでおこっている現状です。ネット検索とSNSの両方を頑張っている会社のWEBサイトでも、「ネット検索>SNS」の現象が起こります。とくに向いている商材(というか客層)についてはSNSからの流入がネット検索を超えているだろうがごく一部。SNSの時代なのは間違いないですが、アクセス流入においてはまだまだ「インターネット検索>SNS」なのです。
SNS上で集客や認知拡大とともにサービス紹介や問い合わせ対応も済んでいて「自社にアクセスする必要性がない」場合もないこともない。ただこれはレアケース。BtoCの「リアルビジネス(実店舗)」ならまだしも、BtoBではまずあり得ない。SNSだけで完結BtoBのサービスはいまのところ見かけない。やはり自社のWEBサイトにアクセスしてもらうことが必要になるのだ。
*SNSとWEBサイトの間には大きな谷がある
ネット検索で自社のWEBサイトにアクセスしてもらう流れ。SNSで自社のWEBサイトにアクセスしてもらう流れ。ニュアンスとしては「どっかを挟んで自社のサイトに来てもらう」という点で一緒です。ただ、その間にある谷の大きさはまったく別物です。なので、SNSを頑張ったら必ずアクセスが増えますよ、とはけっして言えない。SNS上の認知は高まるかもしれないけどね。
情報発信として、コラムと各種SNSを運用している会社さんがいると思います。直接的な導線を考えれば基本はコラムに力を入れるのが一番良いわけなのです。
*WEBサイトの情報を充実させる意味
インターネットの仕事にはふたつの仕事がある。よくECMJコラムで書いている話です。ひとつは「お客様に知ってもらうための仕事」。そしてもうひとつは「お客様に興味を持ってもらうための仕事」。前者がいわゆる「集客」にあたり、後者が「WEBサイトの改善」の話です。
Eコマースも同じで「お客様に知ってもらうための仕事」と「お客様に興味を持ってもらうための仕事」の両方を回していかないと注文をもらうことができません。ただ、このふたつの要求を同時に叶える仕事があります。「商品数を増やす」という仕事です。商品数を増やすと検索にヒットしやすくなり、アクセスしたお客様に品揃えを提案できます。
ECにおける「商品数を増やす」と同じ効果が期待できるのが、WEBサイトの情報を充実させることです。これも情報が増えることでネット検索のヒットが期待できます。そして情報が充実するので、サービスに興味を持ってもらえる可能性が高くなります。まさに一石二鳥の施策です。
SEO対策(検索対策)にはWEBサイトの構造の見直しだったり、内部リンクの組み方だったり、表示スピードの改善だったり、様々な手立てがあります。ただ「お客様に興味を持ってもらうための仕事」を兼ねるのは「情報発信」だけです。だからこそ「情報発信」は避けることができません。
*コラム(ブログ)を書けというけれども・・
オウンドメディアやコンテンツマーケティングという言葉はご存じだと思います。その基本になるのはWEBサイトの情報量を増やすこと。「月●本のコラムを書きますよ」という営業電話がかかってくる会社さんも多いと思います。
ただ、見失いたくないのは「本質」です。コラムを増やす。記事を書く。コンテンツを増やす。それはあくまで手段。何のために「情報発信」をするのか。それは「自社のサービスのことは知らないけれど、自社のサービスで解決できる課題をネット上で探している方(会社さん)」に向けて、自社の存在を知ってもらうため。この「自社のサービス」に具体的な会社名やサービス名を入れてみてください。
自社のWEBサイトと別にオウンドメディアをつくった方がいいのかも一緒です。どこか「オウンドメディアは別サイトの方が良い」という風潮があります。ただそれは手段の話に過ぎません。中小規模の会社であれば自社のWEBサイトに情報発信の「場」をつくれば十分です。
*情報発信をすることで得られること
「新しいお客様へのリーチ」以外にも、情報発信で得られる価値はたくさんあります。
ひとつは情報発信のためには「自社」を良く知らなければいけないことです。自社のサービスや組織だけではありません。市場で立ち位置や差別性を知らないと、「出す情報」「出さない情報」の区別がつきません。また、サービスや組織の土台を知らなくては厚みのある情報発信ができません。
情報発信を続けると「情報発信のネタを探す」ようになります。パッと思い浮かぶアイデアで続けられるのは1ヵ月ほど。それ以降は「情報発信の新しいネタを探す」思考に変化します。情報に対するアンテナが張られ、情報に敏感になります。結果、情報発信をする人間自身の成長に「繋がってしまう」のも大きな価値です。
*執筆を外部に依頼するという選択肢もあるが・・
情報発信のコンテンツ(コラムや記事)を外部の会社に依頼する選択肢もあります。安価で多くのコンテンツをWEBサイトに載せることができる。そして社内の人材の手間を減らすことができる。外注の活用は有意義なサービスです。ただ「問い合わせに繋げる」「セミナーに参加してもらう」「個別に相談してもらう」こと。何より「お客様に『役に立った』と感じてもら」えるかというと疑問です。
コンテンツの外注が向くのは「BtoC」のサービスです。BtoCはサービスを提供している側より、利用しているお客様の方が「サービスの楽しみ方」を知っている場合があります。実際にファンの方にコンテンツ作成をお願いするのはひとつの手です。難しいのが「BtoB」のサービスです。BtoBの場合、企業側よりお客様の側の方が「サービスに詳しい」のは稀です。BtoBのサービスの場合は「サービスに詳しい人が詳しいことを書く」方が成功に近いでしょう。
*既存のお客様により深く知ってもらう
情報発信は新しいお客様に自社と自社のサービスを知ってもらう、だけではありません。「既存のお客様に自社のことをより深く知ってもらう」ことにも繋がります。
すでに会社を知っているお客様は、必ずしもサービスを利用したりファンである方だとは限りません。名前だけは知っているけれどサービスの利用には至っていないお客様もいます。サービスの利用は1度だけ(もしくは試用期間だけ)というお客様もいます。
情報発信によりサービスの優位性や特徴、利活用の方法を知ってもらうのです。「どんなスタンスで仕事をしているか」をもっと知ってもらえるはずです。既存のお客様に「もっと深く知ってもらう」ためにも情報発信は欠かせません。
*知識をまとめる、文章にするという力
「人材育成」という点でも自社で情報発信を続けることは大きな価値を持ちます。
普段の仕事の内容、仕事をおこなう過程での発見。そして仕事をスムーズに進めるためのポイント。マクロな視点での市場環境のレビュー。日々仕事をおこなう中で得ることができる知識や知恵がたくさんあります。それを頭の中でまとめ、繋げ、文章というカタチに落とすことで情報が整理されます。
書くことにおいて文章の「読み手」を意識することが欠かせません。書けるということは人に話すことができるということです。書けるということは人に説明ができるということでもあります。人に「伝える」ことでより深く自分の中で情報を理解することができます。情報発信を進める過程が、自然に自社の「人財育成」に繋がって「しまう」のです。
*採用活動において、社員の「背中」を見せる
最近では採用活動において採用専用のWEBサイトを用意する会社が増えています。特に新卒採用や第二新卒採用をおこなう場合、対象者が学生や若手社会人になります。対象にあった情報を発信するため、専用のWEBサイトを開設しているのです。
コーポレートサイトの採用情報を否定する気はさらさらありませんが、一部「美辞麗句」を述べているものも見受けられます。学生側もある程度の「着色と演出」は理解した上で会社に応募しているのでしょうが、本来は「会社の生の姿を見せる」ことが求められます。「背中を見せる」という点においても情報発信は力を発揮します。
社員が顔と所属と名前を出し、自分の言葉で情報発信をする。お客様への情報発信を志望者がみることで「就職後のロールモデル」が知れます。「情報発信をみて志望した」という学生も必ず出てくるはずです。
*情報発信からマーケティングデータを取得する
最後にネット上での情報発信からマーケティングデータを取得することができます。情報発信を継続していくと、「どんな検索キーワードにヒットしているか」「アクセスしたユーザーはどのページを見たか」「SNSからWEBサイトにきたユーザーはどれくらいいるか」などのデータを見ることができます。
デジタルマーケティングの面白さは、「プロセス」データの可視化です。「お客様がどこでやめてしまったのか」「そもそもお客様がきているのか」を判断し、改善を加えていくことができます。BtoBのサービスでは、特にこの「プロセス」が見えづらかったのが問題でした。お客様の潜在的なニーズや市場環境の変化を掴むためにも、やはり企業の「情報発信」は欠かせません。
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